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ウイルスの前では僕たちは無力

本来であれば昨日から劇場に小屋入りして、テクニカルの確認や、最終調整などを行っている時間帯である。
今月の23日~25日の三日間で全5公演を予定していた舞台「いつからか、それは」が全公演の中止となった。
中止を発表したのは、一昨日の2月20日。小屋入りの前日である。
関係者に複数名体調不良者が出たことが公演中止の理由である。
「悔しい」の一言しかなかった。
チケットを購入してくれていた人には申し訳ないという気持ちしかない。
僕達が約三カ月、稽古に準備を進めてきたこれまでの時間が文字通り、水の泡となった。儚く消えゆく姿を僕は最後まで見届けた。泡の一つ一つがどのように弾けて、形を失くしていくのか。
これまで舞台のために使った時間一秒一秒が、溶けてなくなるその瞬間を。

ここに文章として残す事が正しい事なのか、僕には分からない。
それでも、今書いていて思うことは、僕にはこの文章というものがあって
本当に良かったという事だ。
上手くいくときも、そうじゃない時も、文章というものは
そのどちらにも平等に舞台を提供してくれる。
上手くいって浮かれている自分の文章。
上手くいかず嘆いている時の自分の文章。
そのどちらが素晴らしい文章になるかは分からない。
それでも、こうして僕は文章を書いているし、結局書くことでしか
自分を表現できないのだと思う。
そういえば、前にある人に僕が書いた作品を読んでもらったことがあった。
その人は読み終えた後で、僕に訊いた。
「君はこういう事を常日頃考えているんだね」
僕は、答えた。多分そうなんだと思う、と。
人は、本心と言うものを隠して生きている。
僕はそれを文章に落とし込む。せこい人間かも知れないが、僕にはそれしか出来ないのだ。話す事が決してうまくない。むしろ下手な方だ。
お笑いの才能もなければ、芸を持ってるわけでもない。
言葉巧みに人を誘導することも出来ない。
斬新なアイデアもない。そう、何もない。。
でも、大丈夫。僕には文章がある。
そう、自分に言い聞かせて。。

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