6月から10月の5か月間、5回しか外に出なかった今年の夏が終わった日

家から出なくなったきっかけの日をはっきりと覚えている。
6月のある日、異常に暑い日があった。
その日、友人のパーティーがあるので美容室を予約していたのだが、あまりの暑さに外に出るのはいやだなしんどいなと思い、キャンセルした。

それから、私の引きこもりの暑すぎる長い夏が始まった。

夫を亡くし、精神的に弱っていた私にはいい口実だった。

一人暮らしで5か月間、家の周囲を5回しか外出しなくて人は生きて行けるのかというと、答えはイエスだ。

必要なものは、何でも届けてもらえるし、映画館に行かなくてもネットフリックスがあるし、ウーバーイーツもあれば、Amazonもある。
何なら、たまに友人を招き、お鍋パーティーさえする充実ぶりだ。

因みに、今年の夏は、ネットフリックスのお相撲さんのドラマが一押しだった。

そんな私の夏は突然終わった。

10月のある日の昼下がり、何か届け物が届いたと思ったら、インターフォンのカメラに関西に住んでいるはず母が映っていた。

えっ!!!母!!?何で!!!居ないふりしようか、でも、彼女は私の部屋の鍵を持っている!!!

とりあえず飲んでいたウィスキーの瓶をしまい、観念した私は玄関のドアを開けた。

私の姿を観た母の第一声は、太ったわねだった。

それはそうである。暑すぎる夏の間中、エアコンを切ることは一度もなく家の中で5か月間暮らし、お酒を飲み続け、ほとんど動かずだ。
その間に、5㎏太っていた。
5か月で、外出5回で、5㎏太る。
分かりやすく5並びだ。

どうしたの、急に連絡も無しに来るなんてと動揺を隠しお茶を淹れて差し出して間もなくお説教が始まった。
あなたの生活、お母さんは知っているのよ、あなたツイッターしているでしょ!お友達があなたの生活を心配して連絡くれたのよッ!

誰だ、母にチクったのは…

そして、しんみりと言う。夫を亡くしてどうしようもなく悲しいのは分かる。悲しいけれど、それでもあなたの人生はこれからも続く。でもね、無理に元気なふりをすることは無いけれど、この夏ほとんど家から出ないのはあなたの健康を損ねるし…さあ、今からお母さんと一緒に浅草見物と銀座で買い物に行きましょう!

どういう展開や!

いや、今日疲れているでしょう、また明日にしようね、お母さんのお布団干すから待っててねと言うと、あなたの負担になることは一切嫌だから、ちゃんとホテルにチェックインしているわよと言う。
その時、初めて、母がバッグ一つであることに気が付いた。

とにかく、結構なお年頃なのに、行動力がある。

そして、結構、実の娘に失礼なことを言う。

洋服を選んでいたら、もう1サイズ小さいものを買いなさい、あなた今、太っているんだから、普通の生活に戻ったらその洋服は直ぐにお直しに出すことになるわよと。店員さんも苦笑していた。

食事に行ってからも、あなた酒の肴みたいなものばっかり頼むから塩分で顔がむくんじゃうのよ!もう、顔、パツンパツンよ!

失礼なことを連発しながらその日はホテルに帰り、翌日は朝早くから朝食を作りに来てくれた。

結局、一週間東京で私の世話をし、外に連れ出し、お説教しながら帰って行った。

実は、友人の医師から、君は入院した方がいい、僕がすべての手続きを済ませてあげるからと私は言われていた。それほどまでの自覚は無かったのだが、第三者の医師の目から見たら、私はそれほどまでに病んでいたらしい。

母が帰り、さて、ぼちぼち入院の準備でもするかと思い、その友人の医師の病院で再検査してもらったら、随分と良くなっているよ、今すぐ入院するほどの数値ではなくなっているよと伝えられた。

今朝も、秋の風に吹かれて墨田川のほとりを散歩した。

少しづつ、ほんの少しづつだけど、私は回復しつつある。

なぜなら、亡くなった主人との悲しい別れの思い出よりも、笑って過ごした思い出を思うことの方が増えたから。

因みに、こんなに危ない世の中で、自分を発信するツイッターは止めなさい、お母さん、監視しているからねとの申しつけを守りすっぱりと止めた。

そんな母も、noteの存在には気が付いていない。

うひひ…












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