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身勝手な夜と月

このところ、連日危険なくらいの猛暑が続いている。日本列島が映し出されたテレビ画面は、いつも真っ赤だ。

体温越えなんて当たり前、熱発時くらいの人肌の気温が玄関を開けると待っているなんて、おえーっだ。

「もうすぐ春と秋はなくなるよ」
と、どこかで聞いた。
春はいいけど、秋はイヤだ。

春は誰かがいなくなる気がして、寂しくなるから、好きじゃない。秋は自分の生まれた季節だから無条件で愛おしい。それに、どこか現状維持を許してくれる温かさが秋にはある。そんな気がするだけだけど・・・。

ゴミの分別さえ気分しだいでさぼるくせに、誰かが一緒にいると、温暖化のニュースを見ながら、テレビのコメンテーターと張り合うみたいに眉間にしわをよせ、うん、うんとうなづいてみせる自分に呆れる。

そのうち、地球サイズの冷えピタを、どこぞの偉い学者さんが開発してくれるに違いない、なんてまた他力本願で、自分は涼しい部屋でかき氷を食べてる。
銀のスプーンから酸味を帯びた嫌な感覚が舌先をかすめ、ゾッとする。

人間って本当に自分勝手だ。

こんなんだから、独り言が増えちゃうのかな?
だって、手を繋ぐ恋人同士や、仲良しの家族連れは猛暑でも大寒波でも幸せそうだ。
夜中に、ツンと鼻先が痛くなる。
あの人達は、きっと春を嫌ったりしないんだ。

エコって名前の暇つぶしで、ペットボトルのフィルムを剥がしながら、夜空を見上げると、うっすら黄色く浮かびあがった月が、寂しそうに笑った。

#創作大賞2024

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