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【Tree of Savior M】攻撃速度について

3/7追記:データに見落としがあり、一部計算と計算式の修正を行いました。しかし全体的な結論に変化はありません。むしろ、より「それらしい」結果になったように思います。それらの経緯については2-3節の末尾に短い文章を追加しました。

 オンラインRPG「Tree of Savior M」の攻略記事です。そのステータスパラメータのひとつに「攻撃速度」というものがあるのですが、その仕様について興味深いデータが得られましたのでご紹介したいと思います。

 いきなり結論を言ってしまうと、次のようになります。

「攻撃速度」は、通常攻撃でなくスキル攻撃にも適用されているらしい。ステータス画面上の「攻撃速度」の数字の逆数が、ほぼ、通常攻撃および大体のスキル攻撃の動作時間もしくは行動占有時間になっているようである。多分、それ以外のスキルも速くなっている。

 そして、

攻撃速度が上がると、単純に通常攻撃の回数が増えることはもちろん、スキルの動作時間が短縮されて通常攻撃に使える時間が増えるので、そのことによってもさらに通常攻撃の回数が増える。結構増える。
その結果、
(1) 通常攻撃がダメージソースとして意外にあなどれなくなる。
(2) 毎秒のSP回復量が結構変わり、間接的な火力向上につながりうる。

といった感じになります。

 実はこれは、攻撃速度に焦点をあてた調査から推測されたことではなく、別の調査をしていたときに副産物的に得られた推測です。

 私は現在、このゲームにおける「クラス系列」(一般的なRPGでいう「職業」)のひとつである「クレリック」のスキル構成について、記事にまとめるべく色々と調べたり計算したりしています(「クレリックのスキル選びについて―②」として公開させていただく予定です)。その過程で思いがけず得られたのが、攻撃速度についての上記の暫定的結論です。

 正直に告白しますと、私は「攻撃速度なんか調べても面白くないだろうな」と思っていました。しかし偶然のなりゆきで、それに関する少し詳細な計算および調査へと引き込まれることになったのでした。やってみると、なかなか興味深いものになりました。

 それは他職の方にも共通する内容であると思われたので、これはこれで別の記事にまとめよう、と思い、この記事を執筆した次第です。「攻撃速度って何だろう?」という謎を究明する一助となれば幸いです。

 

 本記事の構成は次のようになります。

 まず「1. ゲーム内での説明」で「攻撃速度」についてのゲーム内での説明を振り返ります。

 次に「2. 推測を得た経緯とデータ」で、私が上述の暫定的結論に至った経緯と、それを支持するデータについて紹介します。
 ただ、それは間接的なデータであり、本当に直接各スキルの間隔をストップウォッチ等で測定したデータではありません。それは結構難しいからです。一応やってみて、おおむね上述の暫定的結論が支持されそうだという感触を得ましたが、「ちょっと難しいなこれは笑」と思いました。でも動体視力・反射神経の優れた方や、精密な動画解析の出来る方、あるいは「写真的記憶」の持ち主の方とかなら結構やれるかも?我こそはという方はやってみてください。
 なお、そういった推論過程の話に関心のない方はここはスキップしていただいてもよいかと思います。本記事の計算結果に重大な疑問がわいたときなどにここの部分も読んでみる、というのでもよいかと思います。

 その次に「3. 攻撃速度がもたらす効用の計算」で、実際に攻撃速度が上がることによって火力やSP収支にどのような影響が表れるのか、その計算例を紹介します。3つのスキル構成例で紹介します。
 「とりあえずの結果でもいいからそれだけ知れればいい」という方は、ここだけ参照するというのでもよいかと思います。

 そして「4. その他の効用」で、その他の効用について触れます。と言っても、あまり内容はありません。

 最後に「5. 計算式」で、使用した計算式について説明します。ここも、興味ない方はスキップしていただいてもよいかと思います。

 お忙しい方は、太字のところだけ目で追っていく、というのでもある程度の内容は分かるようにしてみたつもりです。そうしていって、気になるところがあったらその前後の文章もちょっと読んでみる、というのでもよいかと思います。

 ご参考になれば幸いです。



1.ゲーム内での説明

 冒頭でも述べたように、このゲームには「攻撃速度」というものがキャラクターのステータス画面に表示されています。そしてそこの「?」マークを押すと、一応説明文が出てきます。それが以下のものです。

ゲーム内における「攻撃速度」の説明文
(本記事冒頭の画像の再掲)

うん、いつものように、何だか分かるような分からないような説明ですね(笑)。

 現在の私のキャラクターでは、その「攻撃速度」のところに「1.48」という数字が表示されています。どうやら通常攻撃が1秒に1.48回のペースで出る、ということのようです。それはすなわち1/1.48=0.68秒に1回のペースで出るということです。厳密な測定は難しいのですが自分のキャラクターにオートモードでひたすら通常攻撃だけさせて観察してみると、確かに何となーくそんな感じになっているような感じがしないこともないような感じです。

 ところで仮にそうだとして、これは通常攻撃だけの話なのか?

 「通常攻撃を基準にした1秒当たりの攻撃数」という文面からは、何となく通常攻撃以外の攻撃にも何らかの形で適用されそうな気配がします。でもよく分からないですね。結局そのまま、いつしかこのステータスのことは忘れてしまっていました。

 まとめると、

例えば「攻撃速度」が「1.48」と書かれていたら、それは戦闘中1秒に1.48回のペース、すなわち1/1.48=0.68秒に1回のペースで通常攻撃が出るということのようである。しかしそれがスキル攻撃にも適用されるのかはよく分からない。

というのが、ゲーム内説明文からの推察ということになります。


2.推測を得た経緯とデータ

 ここでは、本記事冒頭で述べた攻撃速度についての推測を得た経緯と、それを裏付ける観測データとを紹介します。興味のない方はスキップしていただいてもよいです。あるいは太文字のところだけ追っていくというのでもよいかもしれません。

2-1.あるスキル構成における消費SPの謎

 以下は、クレリックの「マスタークラス」におけるスキル構成例として、悪魔型/変異型モンスターに対して有効と思われるものの一例を示したものです。(「マスタークラス」についてよく分からないという方は私が以前書いた記事「クレリックのスキル選びについて―①」等を参照してください。)

スキル構成の一例について各種計算結果を示した表

字が小さくてすみません💧
画像をクリックもしくはタップしていただけると拡大表示されるはずです。

 今回の記事にとって関係ないところは字を灰色にしてあります。

 表の左端に書いてある「枠」というのはマスタークラスにおいてスキルを自由に選んでセットできるスロットのことで、「1」番には3つ、「2」番には2つ、「3」番以降には1つずつセットできます。そこに、上の表のようにスキルを選んでセットしてみると、そこでの各スキルの振る舞いと全体的性能はこんな感じになりますよ、という表です。

 しかし、この表を準備したとき、ひとつの疑問が沸き起こったのでした。一言で言えば、「あれ、こんなに消費SP多いっけ!?」ということです

 表の一番右下に「95.46」と言う数字がありますが、これのことです。これは、このスキル構成において1秒ごとに消費するSPは95.46ポイントである、ということを示しています。

 一方、上の方に書いてある「SP自然回復/秒」というのは、1秒あたりのSP自然回復量です。実際には5秒ごとに一定値が回復する仕様になっているのですが、その値をここでは5で割って「1秒当たりの回復量」としています。そこに「53.9」という数値が入っていますが、これは私がよく使う装備構成における値です。

 このゲームではそれ以外のもうひとつの主要なSP回復手段として、「通常攻撃をするとSPが回復する」というものもあります。しかし、そちらは表の中では「通常攻撃によるマイナスのSP消費量」として扱いました。「通常攻撃」の行の右端の「-2.74」というのがそれです。これは、ある計算に基づき、このスキル構成においては通常攻撃によるSP回復量は毎秒2.74ポイントである、ということを示しています。

 「SP消費/秒」の合計95.46というのは、この「-2.74」も含めた合計です。つまり、上の表の「95.46」というのは、通常攻撃によるSP回復も計算に入れた上での値です。

 他の回復手段は一般的にはありません。SPを毎秒少量回復してくれるポーションというものがありますが、それはちょっとした希少品であり、常時水のように飲んでいるという人は稀だと思います。

 いずれにせよ、そういう特別な手段を用いない場合、上の表の「SP消費/秒」は「SP自然回復/秒」だけでまかなわなければなりません。しかし、見てすぐ明らかなように、上述の「毎秒53.9回復」という自然回復量では、このスキル構成例が要求する「毎秒95.46消費」をまかなうことはできません

 しかし実はこのスキル構成例、私自身がときどき使っているものでした。そして上の「毎秒53.9回復」というのも、そういうときの私の典型的な数値です。ところが、実際プレイしてみると、「全然SP足りない(泣)」などということにはならず、結構安定して維持できているのです。このスキル構成が毎秒95.46ポイントものSPを消費するという計算結果はおかしい、それが疑問の発端でした。


2-2.実際のSP収支の観測

 そこで、ゲーム内で実際に観測してみました。興味深いデータを与えてくれたのは、「上の構成のとき、ゲーム内での実際のサンクチュアリ連打数はいくつになるのか」の観測です。

 「サンクチュアリ」というのは、いわゆる「チャネリングスキル」の一種です。手動の場合、対応するボタンを押下(タップ)し続けている間、0.5秒ごとに60のSPを消費し、周辺の敵に通常攻撃ダメージの213%のダメージを与えます。最大で10回までダメージを発生させることができますが、その場合の累計のSP消費量は実に600にものぼります。上の表でサンクチュアリのところに入っている600という数値はそれです。最大打撃数まで使い切った場合の消費SPです。

 このサンクチュアリ、オートモードの場合は攻撃範囲内に敵がいる限り最大の10連打まで延々と続けてくれます(たまにいなくても延々と続けてくれます(-_-;))。ただしその途中でSPが切れたり、相手の特殊攻撃でキャラクターが吹き飛ばされたりすると中断されます。

 なので、上記のスキル構成で実戦に臨んだ場合も、実際にはサンクチュアリを毎回10連打まで使っているわけではなく、平均的にはもっと低い連打数になっていると思われます。実際、それは普段感じていることでした。
 そこで、その変動する連打数を観測し、このスキル構成では実際のところ平均何打までサンクチュアリを使っているのか、を調べてみました。

 相手はとりあえず「討伐戦」というコンテンツのボスモンスター「マルノックス」としました。そしてオートモードで使用されたサンクチュアリの、毎回の連打数を観測してみました。

 結果、まず、SP自然回復量が毎秒53.9であるときの連打数は、

10回、6回、10回、6回、10回、1回、8回

でした。結構やっていますね。このうち最後から2番目の「1回」は、マルノックスの吹き飛ばし攻撃による中断です。他の数字の中で10未満のものは、SP切れによる中断です。
 平均値は、最初の「10」を除外して計算すると、6.8333…となります。最初の10を除外するのは、これは戦闘開始時にまだSPがほぼ満タンだったときの数字なので、SP消費量と回復量との間の収支バランスを見るには不適当と思われるからです。(下のデータも見ていただけると納得していただけるのではないかと思います)

 次に、SP自然回復量が毎秒31.4であるときの連打数も観測してみました。結果は、

10回、5回、4回、5回、2回、2回、2回、2回

となりました。やはり最初の「10」を除外して平均値を計算してみると、3.142857…となります。
(円周率っぽい数字になったのは、マルノックスさんが何やら円環状のものを背負ってらっしゃるからでしょうか…。いや偶然でしょうね笑)

 いずれにせよ、SP自然回復量が毎秒53.9のときのサンクチュアリの平均連打数は6.83回、SP自然回復量が毎秒31.4のときのそれは3.14回でした。
 
それはSP切れだったり敵に吹き飛ばされたりの様々な要因によるものですが、いずれにせよ、それらの連打数のもとで要求されるSP消費量を、そのSP自然回復量で何とかまかなっていた、ということになります。

(ちょうど31.4の小数点を一個ずらしたものが3.14ですが、何でしょう、何かの暗示でしょうか💧
いや、偶然、偶然。。。だって31.4ていうのは157/5=31.4のことだし、3.14ていうのは(5+4+5+2+2+2+2)/7=3.14のことだし。。。あれ、何やら私の背中に円環状のものが・・・)

 前節の表で示されていた「95.46」というのは、「サンクチュアリの連打数が毎回10連打である場合」の秒間SP消費量です。でも実際のゲーム内では平均6.83連打だったり3.14連打だったりしていたのでした。

 では、それらの連打数だったら、ちゃんと計算の帳尻は合うのでしょうか。
計算してみました。

サンクチュアリ連打数が6.83のときの計算結果。
本記事と無関係なところは灰色にしてあります。
サンクチュアリ連打数が3.14のときの計算結果。
本記事と無関係なところは灰色にしてあります。

合いません💧


2-3.計算式の修正と検証

 ゲーム内で何か見落としがあったのだろうかと思いましたが、特に何も見つかりませんでした。そこで、計算式の不備を考えてみました。考えられる可能性は次の2つでした。

  1. 通常攻撃の秒間回数を計算するとき、近似として「各スキルの動作時間(ないし行動占有時間)は大体1秒である」というものを用いたが、それによる誤差が思ったよりも大きいのではないか。実際にはその仮定のもとでの計算結果よりも多くの通常攻撃をしていて、そのためもっと多くのSPが供給されているのではないか。

  2. スキル同士のCD明けが鉢合わせになって各スキルの実質的CDが伸びる、ということが、思ったよりも多く起こっているのではないか。そのため各スキルの使用頻度が計算上よりも少なく、したがって総消費SP量がもっと少ないのではないか。

 結論から言えば、「1.」の予想が正しかった、ということになります。

 どちらもありうることですが、2番目の可能性については、私の観察ではスキル同士の鉢合わせはあまり無いように見えました。
 実際、それが原因なのだとしたら、各スキルの実質の使用頻度は例えば表に書いてあるものの53.9/79.29=0.6798倍でなければなりません。それは、各スキルの「実質的なCD」が1/0.6798=1.471倍であることを意味します。例えば「コンビクション」だったら、その仕様上のCDは8秒なのですが、このスキル構成だと実質的には8×1.471=11.77秒になっている、ということになります。つまり、「コンビクション」そのものは8秒でCDが明け、使用可能状態になるのですが、そのとき高頻度で他のスキルのCD明けとバッティングし、平均的に言えば「毎回3.77秒の待ちぼうけをくわされている」ということです。大渋滞ですね💧それはちょっと考えにくいように思われました。

 そこで、ふと思いついて、1番目の可能性について、「各スキルの行動占有時間は通常攻撃と同じ0.56秒である」と仮定して計算し直してみました

 デモリッションとかは私の目にはとても0.56秒で終わっているようには見えないのですが、その一方でコンビクションとかは確かに動きが速いように見えます。もしかしたら両者の時間を足して2で割ると大体通常攻撃と同じ、なんてことになっていたりするのかもしれません。そんな感じで、スキル全体の平均値で見れば大体通常攻撃と同じ、あるいは、やっぱりちょっと長くなるけど致命的な誤差になるほどではない、ということなのかもしれません

 いずれにせよ、とにかく計算してみた結果が以下です。(計算式は本記事の最後で説明します)。

サンクチュアリ連打数が6.83のときの、再計算結果。青枠が主要な修正箇所。
サンクチュアリ連打数が3.14のときの、再計算結果。青枠が主要な修正箇所。

なかなか見事な結果になりました
(超厳密な計算というわけではないので、あまり当てはまりが良すぎるというのも逆にちょっと恐いのですが・・・つまりちょっとした改変であっという間に実測とかけ離れる可能性があるので・・・まあひとまずよしとしましょう!)

 修正箇所は青枠のところ、つまり通常攻撃の秒間回数です。これによって通常攻撃によるSP回復の頻度が上がり、それが総消費SP量の減少をもたらしたのです。

 そして、それは各サンクチュアリ連打数を記録したときの私のキャラクターのSP自然回復量と、非常に近い値になったのでした。

 詳しい計算過程は後述しますが、大要を言葉だけで言うと次のようになります。各スキルの動作時間が、最初に仮定した1秒でなく、0.56秒であったならば、つまりさっさと終わってくれるならば(笑)、それだけ通常攻撃に使える時間が増えます。そのため通常攻撃の回数が増え、SP回復量が増えたのです。

 しかし、これらは、この事例に対してたまたまうまく合っただけ、という可能性もあります。

 そこで、他のスキル構成例の場合でも確かめてみました。それらを2つ示します。

 まずは、クレリックにおける「汎用スキルセット一例」です。

クレリックにおける「汎用セット一例」における計算結果

ここでは「SP自然回復/秒」として2通りの値が参照されています。それらは、同伴するクポル(一緒に戦ってくれる妖精のようなもの)としてSP自然回復を助けてくれるクポルを連れていったか、いかなかったかの違いです
。連れていった場合が53.9、行かなかった場合が31.4です。そしてこのスキル構成の場合、1秒ごとの総SP消費量は約31.58となっています。

 すると、「SPクポル」を連れていった場合にはSP回復がSP消費を上回ってSPに困ることはなく、一方連れていかなかった場合は消費のほうがやや上回ってSPがカツカツになる、と予想されます。

 実際は、まさにその通りでした。SPクポルを連れていった場合は回復が消費を上回り、ありあまるSPが最大値の1000に至ってしまうということが結構な頻度で起こりました。
 一方でSPクポルを連れていかなかった場合は、戦闘時間の経過とともに徐々にSPが「ジリ貧」に追い込まれていき、最後はカツカツでした。スキルのCDが明けたのにSPがゼロのため使えない、という場面がしばしば起こりました。

 次に、また別のスキル構成例における予測計算と結果です。まず予測計算が以下です。

クレリックの「対ボス(悪魔変異以外)セット一例」における計算結果

サンクチュアリとは別のチャネリングスキル「ブレストリッパー - 不吉な道具」を組み込んだものです。通常攻撃の「CD」がこれまでの「0.56」ではなく「0.68」になっていますが、それは「攻撃速度を20%アップする」というバフをもたらしていた攻撃スキル「デモリッション」を外したためです。そのため攻撃間隔が0.56秒から0.68秒へと長くなったのです。

 さて、ここでも、計算結果からの予測は実際のゲーム内で起こったことと符合しました。SP自然回復/秒は53.9、SP消費/秒は54.07ですので、わずかに消費が上回る予想となっていますが、実際はまさにその通り、ときどきSPが底をつくことがありながらも、おおむね順調にチョキチョキしていました(ブレストリッパーは巨大なハサミを召喚して相手を攻撃するスキルです)。


ーーー(3/7追記)ーーー
・・・と、いうのが3/4頃に書いた内容だったのですが、その後、「ウピニスブレスレットの存在を忘れていたかも( ̄▽ ̄;)」ということに気づきました。これは「スキル使用時、10%の確率で消費SPを半分にする」というものです。それを計算に入れると、各表における「消費SP/秒」の総計は1~2割ほど低くなります。
 しかし、それらが最終的に結論に与える影響は、むしろ嬉しいものでした。一部の、「このスキル、動作時間長いよなあ」というスキルについては、やっぱり実際に長めの時間がかかっている、として計算すると実測状況に合うということが分かりました
 上の事例で言えば、「デモリッション」と「破魔矢」を、ゲーム内での私の拙いストップウォッチ測定を参考に、それぞれ普通のスキルの「1.5倍」および「2倍」と設定して計算すると、ウピニスブレスレットの効果を計算に入れた場合のSP収支とよく合います。
 なので、本記事最後の「5. 計算式」の式を修正しました。結果的には、以前より「もっともらしい」式になったように思います🌷
 そしてそれに基づき、以下の第3節の計算結果も修正しました。ありがたいことに(?)、そこで述べた主要な暫定的結論に変化はありませんでした。
ーーーーーーーーーーーー


3.「攻撃速度」がもたらす効用の計算

 この計算で私自身が気づかされたのは、

  1. 通常攻撃って一撃一撃の威力は低いけど実はSP回復によって各スキルたちが存分に力を振るえるようにするのに大事。

  2. 実はダメージソースとしても意外にあなどれない

  3. 攻撃速度の上昇によってスキルの動作時間が短くなっても、CDが短くならなければ総合火力は上がらないのであまり嬉しくない・・・と思いきや、スキルの動作時間短縮によって通常攻撃の回数がさらに増えるので、上記2つの効用がさらに増す

ということでした。

 以下、攻撃速度の上昇によってどのように火力が変化し、どのようにSPの燃費が変化するのか、を示した計算例を3つご紹介します。

 計算時のパラメータは、「命中発生確率0.5、貫通発生確率0.5、実クリティカル発生確率0.3、命中発生時の与ダメージ増加倍率1.25、貫通発生時の与ダメージ増加倍率1.157、クリティカル発生時のダメージ増加倍率1.2」です。
 一言で言えば、「2024年3月初頭現在の平均的なプレイヤーのステータスに近いと思われるもの」です。
 各パラメータの詳細について知りたい方は、以前私が書いた記事「命中・貫通・クリティカルの計算」等を参照してください。
 また、与ダメージは「通常攻撃の基本ダメージを100とした場合のもの」としています。


例1.クレリックの汎用スキルセット一例

 まず、クレリックにおける汎用的なスキルセットの一例におけるDPS関連の計算結果です。「DPS」とは、Damage per Secondの略で、継続的に戦闘が行われた場合の毎秒ごとのダメージのことです。

クレリックの汎用的なスキルセットの一例における、通常攻撃のDPSおよび全体DPS
クレリックの汎用的なスキルセットの一例における、攻撃速度と全体DPSの関係

 攻撃速度の起点の「1.23」というのは、何も装備していない状態の数字です。ソードマンを除くほとんどのクラスがその数字です。ソードマン系列は「1.39」が基本です。スカウト系列はなぜか他と一緒の「1.23」です。イメージ的にはスカウトが一番速そうなんですけどね。ソードマンのように滅多やたらに切りつけるのではなく、じっと狙いすました一撃を放つ、という設定なんでしょうか。

 「攻速倍増」というのは、装備品の「攻撃速度〇%アップ」等によって攻撃速度が何%アップした状態にあるか、の数字です。現状では、装備品の特殊効果オプションを「攻撃速度」に厳選していくと最高で60%くらいまでいくと思います。でも、それはとても大変だと思います。大抵の人は0%から30%くらいの数値になっているのではないかと思います。

 なお、この表では一番下のケースの「攻速倍増」が「67%」という中途半端な数値になっていますが、これはこのスキル構成における上限です。ゲーム内のステータス画面の説明(本記事冒頭参照)を見ると、攻撃速度アップの上限は「100%」のようだからです。このスキル構成では「攻撃速度20%アップ」というバフがほぼ常時自分にかかっているので、「攻速倍増」が「67%」の状態だとその上限に達してしまうのです(1.67倍×1.2倍≒2倍すなわち100%アップということです)。それ以上に素の「攻速倍増」を上げても、結果は「67%」のときと変わりません。

 さて、主要な結果を見ていきましょう。まず「通常攻撃DPS」というのは、このスキル構成における秒間ダメージ総量(「総DPS」)のうち、通常攻撃が貢献しているぶんです。
 見ると、攻撃速度が10%上がるごとに「通常攻撃DPS」は約26%上がっていくことが分かります。

 次に「総DPS」は、文字通り、スキルによるダメージも全部含めた合計値です。見ると、攻撃速度が10%上がるごとに大体1.6%ずつ上がっていくようです。攻撃速度が20%上がると「総DPS」は大体3.2%アップになります

 「たった3.2%かよ」と侮るなかれ(いや、ごもっともですが( ̄▽ ̄;))。
これ、このスキル構成例において「スマイトとコンビクションのダメージ40%アップ」、「デモリッションのダメージ40%アップ」、「ブレーキングホイール使用後、5秒間、攻撃力7%アップ」といった、れっきとした「エンブレム効果」をつけたときとほぼ同じなのです(ここで「エンブレム効果」と呼んだのは、「エンブレム」という装備品についている特殊効果で、特定のスキルの性能を向上させてくれるものです)。

 それらよりちょっと高い効果に導く「御幣」や「破魔矢」の「ダメージ40%アップ」をつけても、総DPSの上昇は約4%です。最高値は、このスキル構成においては「ペストスチームのダメージ40%アップ」をつけたときで、それでも総DPSの上昇は約8%です。
 それらと比較すると、「3.2%アップ」というのは必ずしも侮れません。

 まとめると、「攻撃速度20%アップ」は、大抵のスキルに対する「ダメージ40%アップ」のエンブレム効果と同等の効果を持ちうる、ということです。

・・・まあ、結局どっちも微妙、て言われるとそうかもしれませんが💧

 でも、ここで「エンブレム効果」と呼んだものって、現状では最高で4つつけられます(「君主のエンブレム」に3つ、「インフェルノジャウラ〇〇」という装備に1つ)。それら1つ1つによって総DPSが平均4%ずつ上がるとすると、4つで16%です(正確には$${(1.04)^4-1=0.1699}$$すなわち約17%)。そこに、いわば「第5のエンブレム効果」として、「攻撃速度20%アップ」を考えることができるのです。それが加わると最終的に約20%になります。ちりも積もれば何とやら、です✨

 ところで、装備品のオプション(特殊効果)の中には「スキルダメージ〇%アップ」というものがあります。それがついた状態だったら、スキルたちの与ダメージが上がる一方で通常攻撃の与ダメージは据え置きなのだから、話はだいぶ違ってくるんじゃないか?と思われるかもしれません。

 私もそう思いました。でも実際に計算してみたら、意外なことに、影響度の低下はそれほどでもありませんでした。例えば「スキルダメージ20%アップ」がついている場合、そこで攻撃速度が20%アップすることによる総DPSの増加倍率は「1.028倍」という計算結果になりました。上の表では「1.032倍」でした。確かに影響度は下がっていますが、わずか0.5%の低下です。なので、例えば「スキルダメージ20%アップ」がついている場合でも、上に述べた内容はあまり変わりません
 それは、ごく簡単な計算でも確かめることができます。興味ある方は以下に添付するtxtファイル(「通常攻撃の影響一例.txt」)を見てみてください。

 

次は、このスキル構成例における毎秒の消費SPの動向についてです。

クレリックの汎用的なスキル構成の一例における、攻撃速度とSP収支/秒との関係

表の中の「回復SP」とは、通常攻撃によるSP回復量を毎秒ごとの値にしたものです。そして「総消費SP」は、それを計算に入れつつ求めた、このスキル構成における毎秒のSP消費量です。
 もし仮に通常攻撃によるSP回復がなかったとしたら、総消費SPはその数値に「回復SP」の数値のぶんを足したものになります。例えば一番上では回復SPが25.47、総消費SPが49.92となっていますが、その場合は25.47+49.92=75.39というのが、それになります。しかし実際には通常攻撃が毎秒あたり25.47を回復してくれるので、実際の総消費量はそこから25.47を引いた49.92になっている、というわけです。

 さて、その総消費SPの動きを見てみると、攻撃速度が上がるごとに結構
がっつり下がっていくというのが見て取れます。攻撃速度30%だと0.527倍つまり約半減です。つまり、このスキル構成例のように、「攻撃速度30%アップ」が「全てのスキルの消費SP半減」と同等の効果を持ったりすることもある、ということです。
 なかなか侮れないですね!


例2.クレリックの対ボス戦スキルセット一例

 クレリックばかりですみません💧 実は私は他職もサブキャラで育てているのですが、このゲーム、なかなかサブキャラに時間と資源をまわす余裕がないんですよね(泣)。なので他職のスキルについて詳しいことはよく分からないのです。でも、色んなキャラクターをやるのは好きなので、いずれ余裕が出来たらそのキャラ達も育てたいですね。

 さて、次はまた別のスキルセット例における計算結果です。

 こちらは例1のときとは少しだけ違う傾向が出ています。まずDPS関連の計算結果です。

クレリックの対ボス戦スキルセット一例における、DPS関連の計算結果
クレリックの対ボス戦スキルセット一例における、攻撃速度とDPS倍率との関係

 表の見方は例1のときと同じです。

 まず通常攻撃DPSを見ると、攻撃速度が10%上がるごとに大体33%ずつ上がっています。例1では大体26%ずつでした。
 そして総DPSについては、攻撃速度が10%上がるごとに大体2.3%ずつ上がっています。例1では大体1.6%ずつでした。
 つまり、例1のときよりも、攻撃速度がDPSに与える効果が大きい、ということです。攻撃速度の効用はスキル構成によって変わってくる、ということです。まあ、当たり前のことかもしれませんが、その当たり前のことが確認できたわけですね。

(ちなみに、こちらの例では「通常攻撃DPS」が増えた分以上に「総DPS」が増えています。その理由は、こちらの例では「コンビクション」というスキルに「通常攻撃1撃ごとにクールタイムが0.5秒減る」という特性がついているからです。)

 なお、こちらでは表の一番下のケースにおける「攻速倍増」が「100%」になっています。例1では「67%」でした。理由は、こちらのスキルセットでは攻撃速度をアップさせるバフが発生しないからです。なので普通に素の「攻速倍増」を「100%」としても、仕様上の上限(「100%」)を超えてしまうということはなく、意味のある比較データを算出できます。

 次にSP収支関連の計算結果です。

クレリックの対ボス戦スキルセット一例における、攻撃速度とSP収支量との関係

こちらでは、例1のときよりも総消費SP量への恩恵は少ない、という結果になっています。例えば攻撃速度が30%アップする場合、例1のスキルセットでは消費SPが0.527倍、つまり約半分になったのでした。でもこちらでは0.806倍、つまり約2割引きにとどまっています。

 ここでもやはり、「攻撃速度の恩恵はスキル構成によって変わってくる」ということが言えます。


例3.クレリックの対悪魔スキルセット一例

 さて、次は対悪魔スキルセットの一例における計算結果です。クレリックには悪魔型/変異型モンスターに対してだけ鬼のように強くなる、というスキルが結構あります。それらを組み合わせたスキル構成の一例です。

 ただ、本記事にとって重要なのは、その種族特効の部分ではありません。そのスキル構成が、「サンクチュアリ」という、いわゆる「チャネリングスキル」を組み込んでいるという点です。

 その要点は次の2点です。

  1. それをやっている間、通常攻撃もできない。

  2. その時間は最大約6秒におよび、0.5秒ごとにSPを60消費してダメージを与える。SPが足りなくなったら途中でやめなければならない。

(より詳しくは、「2-2. 実際のサンクチュアリ連打数の観測」等を参照してください。)

 計算結果は次のようになります。

クレリックの対悪魔スキルセット一例における、DPS関連の数値の動き
クレリックの対悪魔スキルセット一例における、攻撃速度と総DPSとの関係

 表の見方は例1や例2のときと同じです。ただ、こちらには新しい要素として「サンク打数」というものを一緒に表示しました。これは「サンクチュアリ」を平均何打まで打てるか、を示したものです。その決定因となるのは、「そのときの毎秒の消費SPが、毎秒のSP自然回復量を超えないこと」です。例えば攻撃速度が「1.23」のところを見ると、「サンク打数」は3.1となっています。これは、この状態でサンクチュアリを実行すると、大体3.1打までが限界、ということを意味します。それ以上続けていると消費SPが自然回復量を超えてしまい、やがてSPが尽きて「スキル回し」が止まってしまうのです。なお、自然回復量はSP支援型クポルを同行した場合の「毎秒53.9」としてみました。

 結果は非常に納得のいくものになっていると思います。攻撃速度が上がると通常攻撃の回数が増え、それによって毎秒のSP回復量が上がります。したがってより大きい回数までサンクチュアリを続行することができます。SPさえ潤沢ならサンクチュアリは結構強いスキルなので、それによって総DPSもどんどん上がっています。「攻撃速度20%アップ」がついたときの総DPSは、それがついていないときの1.082倍、つまり「8.2%アップ」となっています。これは例1のときの「3.2%アップ」や例2のときの「4.5%アップ」よりも高い数値になっています。つまり、例1や例2のときよりも攻撃速度の恩恵が高いということです。

 特定のスキルの性能を向上させる「エンブレム効果」の中で、このスキル構成に対し最も高い効果を発揮するのは、「インシネレーションのダメージ40%アップ」というものです(攻撃速度が1.23の場合)。それをつけたときの総DPS増加倍率は1.077倍です。上の「1.082倍」はこれとほぼ同じです。つまり、このスキル構成の場合、それに対する最高のエンブレム効果(「インシネレーションのダメージ40%アップ」)と、同等の効果を「攻撃速度20%アップ」は持ちます

 なお、グラフを見ると、例1や例2のときほどきれいな直線ではなく、少しぶれたグラフになっています。これは、例1や例2のときと違って、通常攻撃回数とサンクチュアリ連打数の間に複雑な関係があるためです。
 通常攻撃が増えるとサンクチュアリの連打数が増えますが、そうすると通常攻撃に使える時間が減ります。しかしそれで通常攻撃が減ると、サンクチュアリの連打数も下がり、通常攻撃に使える時間が増えます。しかしそれで通常攻撃が増えると・・・という、天秤のようなバランスの上に両者の最終的な数値が決まっているからです。

 次に、SP収支関連の計算結果です。

クレリックの対悪魔スキルセット一例における、攻撃速度とSP収支量との関係

 あらためて特筆するようなことはないですかね。攻撃速度が上がるほど、通常攻撃の回数が増えるのでそれによる毎秒ごとのSP回復量である「回復SP」が順当に増えています。
 ただ、例1や例2のときほどモリモリとは増えていません。その理由は、各ケースごとにギリギリまでサンクチュアリの継続時間を長くしているので、そのぶん通常攻撃に使える時間が短くなっているからです。それでも、それによって増大した要求SP量をぎりぎりまかなえるだけの「回復SP」を、この表の値は満たしているというわけです。
 「総消費SP」がすべて同じような値になっているのは、やはり各ケースごとに、毎秒のSP自然回復量として設定した「53.9」という数値を超えないぎりぎりまでサンクチュアリ連打数を上げているからです。

 以上のような計算から、本記事冒頭で示した暫定的結論に至ります🌸


4.その他の効用

 前節で見た恩恵以外の恩恵としては、以下のようなものも挙げられます。

 第一に、スキル選択の幅が広がりうる、ということが言えると思います。攻撃速度が上がってSP供給量が増えると、SPに余裕ができるので、「SP消費が重い」という理由でそれまで敬遠していたスキルや特性が採用できるようになる可能性が出てくるということです。

 第二に、装備やクポル(一緒に戦ってくれる妖精のようなもの)の選択の幅が広がりうる、ということも言えると思います。
 例えば、私は同行できる3体のクポルのうち1体を「オティ」にしていることが多いのですが、最近、それを別のクポルに変えるという選択肢が浮上してきました。今まで「オティ」を同行していた理由は、可愛いから SP収支の補強のためです。このクポルはSP回復量を増加させてくれるスキルを持っているからです。しかし先日、攻撃速度のあがる装備を入手したところ、戦闘中のSP収支に結構余裕が出てきました。なので、このクポルを別のクポル、例えば何か強い攻撃スキルを持っているようなクポルに変更するという選択肢が浮上してきたのでした。
・・・まあ結局は可愛さや愛着で選んでしまうかもしれませんが🌟


5.計算式

 ここでは、本記事で用いた主要な計算式について説明します。 

 ただ、書き始めてみたら結構長くなってしまいました。なので詳しい説明や導出過程は別紙PDFにまとめ、ここには必要最低限と思われる説明だけを載せることにしました。

より詳しい説明、および各式の導出過程は以下のPDFファイル(ASPD.pdf)に書きました。内容は高校数学の知識があれば理解できると思います。数学に抵抗のない方は読んでみてください。


5-1.通常攻撃の秒間回数

 数式は以下になります。

$$
\begin{align}
&N_0=S-\sum_{i=1}^8m_iN_i,\nonumber\\
&N_i=\frac{1}{C_i}.\nonumber
\end{align}
$$

ここで$${N_0}$$は通常攻撃の秒間回数、$${S}$$は攻撃速度です。$${m_i}$$は、使用するスキルに適当に1番、2番、と番号を振っていったときの、$${i}$$番目のスキルの「動作時間係数」です。$${m_i}$$は標準的な動作時間のスキルでは 1 とします。そして、それらより1.5倍くらい動作時間が長いスキルでは1.5、2倍くらい動作時間が長いスキルでは2、等とします。他方、$${N_i}$$はそのスキルの秒間使用回数です。$${N_i}$$は 1 を$${C_i}$$で割ることで求められます。$${C_i}$$は$${i}$$番目のスキルのクールタイム(表で「CD」と表したもの)です。例えばスキル「ブレーキングホイール」ならCDが12秒なので、12秒に1回使用できるわけですが、これは統計的には、1秒に1/12回使用する、ということと同じです。それが$${N_i}$$です。最後に、和の上限が「8」となっているのは、マスタークラスでは最大8個までのアクティブスキルをセットできるからです。あえて8個セットしないで6個とかにした設定なら、ここは「8」ではなく「6」とかになります。
(なお、計算の結果$${N_0}$$がマイナスになる場合は、$${N_0=0}$$とします。でもこのゲームの場合はそれはなさそうです。上述の式はこのゲーム以外のゲームに対しても、少し修正すれば使える式なのですが、ゲームによってはクールタイム3秒とかのスキルが2,3個あって、そうなると$${N_0=0}$$になったりします。それは、通常攻撃をはさむ余地は無い、ということを意味します。)

 重要な点として、ここでは単純化のため、スキル同士のCD明けのバッティング(鉢合わせ)は無視しています。バッティングと書いたのは、複数のスキルが同時にクールタイム明けを迎えて、そのため一方のスキルを先に使うともう一方のスキルはその間待たされなければならない、という状況です。このゲームの場合、一般には、そんなに高頻度で起こるものではないと思います
 高頻度で起こるという場合は、各スキルのクールタイムにいわば「バッティング係数」として何らかの係数をかけ、それを「実質的なクールタイム」と見なすことになると思います。でも余程の状況でない限りはせいぜい1.1未満の係数になると思います。

 単純化を気持ち悪いと感じる人もいるかもしれませんが、単純化(あるいは「モデル化」)は物理学や医学や経済学では常套手段です。複雑な現象の数理的な理解というのは、まず現象を出来るだけ単純化する、ただし重要で致命的な本質を見落とさないように単純化する、というところから出発するものです。
飛行機とかもそれで飛んでます🌷

3/6追記:CDが短めのチャネリングスキルがある場合、他のスキル同士のバッティングがそれなりに無視できないかも?、ということが分かりました(幸いサンクチュアリではそれほど誤差は大きくないようでした)。飛行機の喩えで言えば、「気流による揚力の変化は無視できるとしてたけど、乱気流に入ってみたらやっぱ無視できなかったわ~ハハハ」という感じかもしれませんね💧 科学者って意外にそんなもんだったりします🌷 いずれ、そういう特殊な場合にも使えるうまい計算方法が見つかったらご紹介します。

 では、具体例で計算してみましょう。

あるスキル構成例における色々な数値

 今回の計算と関連性の低いところは灰色にしてあります。「攻撃名」のところにある、「通常攻撃」以外の8個のものがスキルです(一部は略称にしてあります)。

 ここで通常攻撃の「CD」と書いたのは攻撃速度の逆数です。上の表では1/1.48=0.68秒です。つまりこの例では攻撃速度が1.48です(先述したとおり、公式説明によるとこれは通常攻撃が1.48回/秒であるという意味です。そしてそれは1/1.48=0.68秒に1回であるというのと同じです)。

 上述の計算式に用いる変数の中で、この表に書かれていないのは各スキルの「動作時間係数」$${m_i}$$です。それは現状、実際に各スキルを使ってみて判断するしかありません。でも、精密である必要性はそれほどない、と個人的には思います。「あれ、このスキル長いな」と思ったらちょっとストップウォッチで測ってみて、あるいは目測で判断して、「他の一般的なスキルのだいたい〇倍かな?」と判断する程度でよいと思います。やってみると、上の表の中のスキルでは「破魔矢」が、他のスキル達の2倍くらいの時間を使っているように見えました。なのでそこだけ$${m_i=2}$$とし、他はすべて$${m_i=1}$$としてみました。

 すると通常攻撃の秒間回数$${N_0}$$は次のようになります。

$$
N_0=1.48-\left(\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{12}+2\frac{1}{10}+\frac{1}{15}+\frac{1}{15}+\frac{1}{20}\right)=0.6383\ldots
$$

です。


5-2.チャネリングスキルがあるときの通常攻撃の秒間回数

 次に、「チャネリングスキル」を含んだスキル構成を使用しているときの通常攻撃の秒間回数について説明します。

 チャネリングスキルについてよく分からないという方は、本文中における「サンクチュアリ」の説明を参照してください(第2-2節や、第3節の例3のところです)。とはいえ、ここの計算にとって重要な内容は次の一文に尽きます。

「一定の時間にわたって持続的に使用され、その間他の行動をとることができない」

です。

 通常攻撃もできません。なので、そのぶん通常攻撃の秒間回数は減ります。

 ここでは簡単のため、スキル構成に含まれているチャネリングスキルの数が1個である場合の計算式を紹介します。複数ある場合については上に添付した別紙PDF(ASPD.pdf)を参照してください。でも、大抵はチャネリングスキルを含めるとしてもせいぜい1個だろうと思います。

 さて、その場合の計算式は以下です。

$$
\begin{align}
N_0&=S(1-D_8N_8)-\sum_{i=1}^7 m_iN_i,\nonumber\\
N_i&=\frac{1}{C_i},\nonumber
\end{align}
$$

ここでは番号$${i=8}$$番のスキルをチャネリングスキルとし、その平均継続時間を$${D_8}$$としています。その他の変数は前節と同じです。ただし、最後の総和部分はチャネリングスキルのぶんを除外した総和です。

 ここでも具体例を示します。

チャネリングスキル「サンクチュアリ」を組み込んだスキル構成の一例における、各種パラメータ

コンビクションの「CD」が前節と違って「8.34」へと伸びていますが、これはサンクチュアリの影響です。他のスキルについても同様です。そちらの計算については次節で示します。今はとにかく、それらのスキルのクールタイムはそういう値なんだ、と思っていただければよいです。

 通常攻撃の「CD」と書いたのは前節と同じく攻撃速度の逆数です。0.56=1/1.776です。つまりこの例での攻撃速度は1.776です。

 各スキルの動作時間は、前節と同様「破魔矢」が他のスキル達の2倍程度であるとします。また「デモリッション」もちょっと長いので、実測してみると大体1.5倍程度のようでした。

 さて、このスキル構成におけるチャネリングスキルは「サンクチュアリ」であり、それは平均5.3打まで続けることにしています。サンクチュアリは0.5秒ごとに1打するスキルですから、5.3打した場合の継続時間は$${0.5\times5.3=2.65}$$秒です。ただ、実際に観察してみると、その前後にちょっとした準備動作もしくは事後動作のようなものがあるように見えます。そしてその余分な動作時間も攻撃速度の影響で短くなりそうに見えます。なので通常攻撃の行動占有時間と同じ時間と考えて、$${0.5\times5.3+0.56=3.21}$$秒、より正確には$${0.5\times5.3+\frac{1}{1.776}=3.213\ldots}$$秒を、この場合のサンクチュアリの行動占有時間としてみます。


 以上のパラメータを用いると、通常攻撃の秒間回数$${N_0}$$は次のようになります。

$$
\begin{align}
&N_0\nonumber\\
&=1.776\left\{1-\left(0.5\times5.3+\frac{1}{1.776}\right)\frac{1}{15}\right\}-\left(\frac{1}{8.34}+\frac{1}{8.34}+1.5\frac{1}{8.34}+\frac{1}{12.34}+2\frac{1}{10.34}+\frac{1}{15.34}+\frac{1}{60.34}\right)\nonumber\\
&=0.62002\ldots\nonumber
\end{align}
$$

です。


5-3.チャネリングスキルがあるときの各スキルの「実質クールタイム」

 ここで「実質クールタイム」と呼んだのは次のような意味のものです。

 前節冒頭で述べたように、チャネリングスキル使用中は他の行動をとることができません。したがってその間に他のスキルのクールタイムが明けても、すぐには使うことができません(まあ、すぐ使いたかったらチャネリングスキルの方を中断すればよいのですが)。これは実質的には、そのスキルのクールタイムが長くなってしまうのと同じです。それを本記事では「実質クールタイム」と呼ぶことにしました。以下では番号$${i}$$番のスキルの「実質クールタイム」を記号$${C_i'}$$と表すことにします。

 計算式は次のようになります。

$$
C_i'=C_i+\frac{(D_8)^2N_8}{2}
$$

 ここでも簡単のためにチャネリングスキルが1個である場合の式を示しました。複数ある場合については上掲のPDF(ASPD.pdf)を参照してください。 

では、具体例として、スキル「サンクチュアリ」を組み込んだスキル構成例のひとつを用い、実際に計算してみましょう。

チャネリングスキル「サンクチュアリ」を組み込んだスキル構成の一例における、各種パラメータ

すみません、表には書かれていませんが、例えば「コンビクション」の元々のCDは8秒です。それが0.34秒伸びて8.34秒になっています。他のスキル達も同様です。すべて0.34秒伸びています。それらが「実質クールタイム」です。サンクチュアリの存在により、各スキルとも平均0.34秒の待ち時間が発生しているということです。これによりコンビクションでは8.34/8=1.043倍、クルセイドでは60.53/60=1.006倍になっていますね。クールタイムの短いスキルほど、こうむる影響は大きい、ということです。何となく納得できる話ですね。

 さて、計算は次のようになります。まず前節と同じく、この設定下ではサンクチュアリの平均連打数を5.3回としていますので、平均継続時間$${D_8}$$は前節と同様に計算して$${0.5\times5.3+\frac{1}{1.776}=3.213\ldots}$$秒秒であるとします。そしてサンクチュアリの秒間回数$${N_8}$$は$${N_8=1/15=0.06666\ldots}$$回です。したがってコンビクションの「実質的クールタイム」$${C_i'}$$は、

$$
C_i'=8+\frac{(0.5\times5.3+\frac{1}{1.776})^2\frac{1}{15}}{2}=8.344\ldots
$$

となります。




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