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M-1グランプリ 2023

2023年M-1グランプリでは、トップバッターの令和ロマンが優勝を勝ち取った。
実に22年ぶり、初代王者中川家以来の快挙である。
キングオブコントでもトップバッターのカゲヤマが準優勝となっていることから、トップバッター不利説が揺らぐ、お笑い界的には割と歴史的な年になったと思う。

今回は、各出場者を筆者独自の視点で採点、論評を行う。

決勝戦

令和ロマン 88点


トップバッターの点数は基準点であるので、筆者はネタの善し悪しに関係なく85点と決めている。
この85点に、トップバッターハンディとして3点プラスして、88点とさせていただいた。
トップバッターは基準点となるため、どの審査員も抑え目の点数になりがちなので気の毒だ。
令和ロマンのこの漫才は、筆者がつい最近なんばグランド花月で見たネタだった。その時は大して面白いと思わなかったが、今回のM-1では爆笑を取っていた。2人とも落ち着いているし、ネタにしつこさがないので見ていて心地良かった。
内容もあるあるネタだし、それを少し捻ってイジるので見ている側も素直に笑えたと思う。
ぶっ飛びすぎたら見る側は置いてけぼりになり、かと言って落ち着きすぎたらそもそもハネない。
あるあるネタで観客を引き込みつつ、そこから捻りを入れるという良い線だったと思う。

シシガシラ(敗者復活組)  75点


ネタが単調すぎてあまり広がりがない。
令和ロマンを基準としているので、75点と低い点数になった。
松本人志も言っていたが、ツカミが面白いのに途中の失速が残念でならなかった。
ハゲネタ1本は厳しい。2018年のギャロップもそれで失敗し、上沼恵美子に叱責されている。
また、2005年にはタイムマシーン3号がデブネタ一辺倒で挑んだが、やはり厳しい結果となっている。

さや香 90点


面白い。さすが今大会の優勝候補。
さや香の漫才はテンポも勢いもあるので、M-1みたいなショーレースにめちゃくちゃ向いている。
コンビ中が悪いことで有名だが、むしろそれを武器にしてお互いが激しく言い争うことで、尻上がりに盛り上げることができるのだ。かつてのブラックマヨネーズを彷彿とさせる。これは文句なしに高得点。
ちなみにさや香は、筆者が就活していた2017年のM-1決勝戦に出ているので個人的に思い入れがある(もちろんそれは点数には反映させてない)。その時は明らかにチュートリアルの漫才を模倣していたから、掛け合いはあまりなく、新山の1人舞台に近かった。
そこから苦しい雌伏時代を送り、昨年2022年で久しぶりの決勝。
ボケとツッコミを入れ替えるなどの賭けに出たが見事功を奏し、一躍全国区となった。
だから今年のM-1はさや香に対する期待のハードルが高まり、却ってウケにくいと心配だったが、杞憂。見事に爆発した。

カベポスター 80点


うーん。今一歩足らないかなぁ。
のめり込むほどではない。
新聞などを読みながら話半分に聞く分には良い。
昔のおぎやはぎみたい。
ボケは面白いし、ツッコミの間は抜群に良いから、ツッコミのフレーズをもう少し捻ると笑いの量が増えていくだろう。
事実、M-1の優勝者はツッコミが目立っている。中川家礼二、アンタッチャブル柴田、ブラマヨ小杉など、皆ボケに負けないキャラクターだ。中でもフットボールアワー後藤の例えツッコミは秀逸だし、ミルクボーイに至ってはツッコミ主体の漫才だ。また優勝できなくても、南キャン山ちゃん、オードリー若林、ぺこぱ松陰寺など枚挙に暇がない。
さや香のように、ツッコミがボケに負けないくらいであれば掛け合いも盛り上がるし、もっと笑いが増えると思う。

マユリカ 80点


ここもなぁ。カベポスターに比べればコンビ間のバランスは良いけど、爆発しなかった。
1日経てば何の漫才だったか忘れてしまうレベル。見ている分には良いのだけど、ネタが終わると、アレ?この漫才のテーマなんだったっけ?となってしまう。
漫才よりもその後の今田耕司との掛け合いの方が面白かった。平場でもちょいちょい見るので、これから売れるとは思う。

ヤーレンズ 89点


面白い。大ボケは文句なしに面白く、小ボケのタイミングはこれまた絶妙。ツッコミのフレーズは比較的単純なのだが、間が良いので1つ1つのやり取りが全て笑いにつながっている。
観客も「ヤーレンズ面白い」とだんだん理解しだす感じがテレビで見ていて分かった。後半になるにつれて尻上がりに盛り上がっていった。
当初の優勝予想ではさや香やモグライダーの陰に隠れ、目立たない存在だったが、見事M-1の決勝で花開いた。

真空ジェシカ 83点


確実に笑いのポイントを押さえていく技術はお見事!センスに限れば今大会で間違いなくトップのコンビだろう。
ただ、オール巨人も言っている通り、真空ジェシカは爆発力が足りない。
考え抜かれたフレーズは全て面白いのだが、もう少し錦鯉のようなバカらしさがあった方が素直に笑える。
なんせ、錦鯉なんかハゲのおっさんが「こーんにーちはー」というだけで笑いを起こすのだから。

ダンビラムーチョ 75点


もうダメ。全然ダメ。
歌ネタや天丼(同じギャグを繰り返すこと)は基本M-1ではウケない。
なぜなら歌っている間ツッコミの余地がなくなり、掛け合いがずっと生まれないからだ。
M-1のネタ時間は4分と短い。貴重な4分を歌で浪費してどうする!💢
決勝に出たんだからそれくらい分からないといけないはずだが、こ奴ら今まで何をしていたのだろう。

そもそも、過去のM-1を例にとっても
2019年のニューヨーク、2010年のカナリアなど、歌ネタでいずれも最下位だ。2002年のダイノジもそれで失敗しているし、2020年のおいでやすこがも最終決戦で延々と歌い続け、結局優勝を逃している。
ネタの一部に歌があるならまだ分かるが、序盤のほとんどを歌で浪費してしまうとは、、、。M-1に向けて頑張ってきた貴重な1年が水泡に帰してしまった。
歌ネタはウケない。

くらげ 75点


この人たちは天丼であえなく撃沈。
完全にネタの選択ミス。何やってんだか。
そしてコンビ名が、「くらげ」。
売れる気はあるのか?

相方の好きなモノを当てるネタ。
間違えた答えを連発する、という流れはパターンとしてあまりに単純すぎるし、それに対する相手の答えは「違う」「違う」ばかりだった。つまり、全然広がりがない。2017年のマヂカルラブリーも「客、客、客」のフレーズ連発で最下位に沈み、挙げ句の果てに上沼恵美子がブチギレた。
この年をきっかけに上沼恵美子=ブチギレのイメージがつき、翌2018年には後輩から更年期障害と馬鹿にされる羽目になったのだから、ものすごい風評被害だ。
とてもお笑い番組とは思えぬ。

ボケの杉の平場トークは割と面白く、ツッコミの渡辺はいじられ素質があるからバラエティで爪痕を残せそうで、案外売れるかもしれない。
かつて千鳥も2003年、2004年と連続最下位だったし、ネタとトークはまた別物なのだろう。

モグライダー 81点


歌ネタ。そりゃ点数は伸びにくい。
しかし歌の途中で掛け合いがあるので
まだ笑いがある。
とは言っても、「空に太陽がある限り」というバラードチックな曲のためか、終始低調な雰囲気だった。
まるで錦野旦も一緒にスベっているように見えたから不思議だ。

すでに売れているコンビはM-1ではウケにくい。かつてのキングコングがそうだった。
ツッコミの芝は
ハリセンボン、しずる、かまいたち、藤崎マーケットと同期。1年後輩にオリラジ、はんにゃ、フルポンというベテラン芸人。すでにテレビで活躍しているのだから、そろそろ後輩に譲っても良いだろう。

芝はイケメン芸人で芸能界にも女性ファンがいると知り、筆者も芝の髪型と服装を真似て婚活に挑んだことがあるが、全くモテなかった。
髪型と服装以前に、骨格が違い過ぎるのだろう。

最終決戦


令和ロマン
素晴らしい。1本目のネタよりウケていた。
強いネタを残していたのは素直に驚く。
普通、M-1では2本目より1本目に強いネタを持ってくるからだ。
客席のウケ、爆発力も申し分なかったし
この後のヤーレンズとさや香に大きなプレッシャーを与えたと思う。

ヤーレンズ
面白かったが、緊張していたためか
セリフを噛んでしまった。
立て板に水のように喋り続けるのが特徴であるだけに、噛みは目立ってしまった。

さや香
1本目の掛け合い漫才とはうって変わって、新山が1人で喋り続けるネタ。
これはアウト。歌ネタと同じで相方の入る余地を奪ってしまった。つまり、掛け合いが生まれない漫才だった。
本人たちも述懐していたが、全く笑ってない客がいたという。それくらい笑いの量は前の2コンビに比べ、少なかった。
昨年に引き続き、1本目で1位通過して、2本目で優勝を逃すという悲しい結果に終わった。
しかも、今回は審査員の票が1票も入らなかった。

筆者としては令和ロマンに1票
さて結果はどうなるか。


結果は
令和ロマン4票
ヤーレンズ3票
さや香0票

左から順に開票していくので
最後までどちらが優勝か分からなかった。
山田邦子の反応が良い。

令和ロマンの優勝。
割とすんなり決まるかと思ったが、意外にも結果が割れた。
トップバッターの優勝は2001年の中川家以来、22年ぶり。M-1におけるトップバッター不利説を覆した!
ツッコミのケムリは筆者と同い年。
中川家優勝の時は、まだ小学2年生だった。


今年のM-1は観客が重かったと複数の出場者が言っていたが、2018年や2020年に比べればそこまで気にならなかった。ただ昨年と比べれば、確かに重たい空気感はあった。
2本目のさや香は特に気の毒だったが、山田邦子が「さや香の最後のネタ、全然良くなかった」とイジって会場の爆笑を掻っ攫ったから、彼らも救われたろう。
また、個人的に新審査員に海原ともこが入ったことが嬉しい。何度も審査員候補に挙げられながら、今まで審査員になることはなかった。
おそらく拒否していたのだろう。
それだけになかなか注目できる審査であった。
来年もぜひ審査員として出演してほしい。

結果的には、今年のM-1は面白かったと言える。


M-1グランプリ 面白さランキング個人的ベスト3

2019年(優勝:ミルクボーイ)
2007年(優勝:サンドウィッチマン)
2003年(優勝:フットボールアワー)

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