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4種の法人比較(4)~一般社団法人の名称のイメージ~

非営利型の法人形態

ここまで紹介した株式会社、有限会社、合同会社はいずれも営利型の法人形態でしたが、今回紹介する一般社団法人は非営利型の法人です。

この「非営利」という言葉は一般に誤解されがちで、まるでボランティア団体かのような印象を与えるのですが、法律上の「非営利」というのは利益を出資者に還元しないことを意味します
ですので、売上を上げることも、従業員や役員に給与・報酬を与えることも何の問題もありません。

公益法人制度改革

さて、一般社団法人は、公益法人制度改革により2008年に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて新たに創設された法人形態です。

もともと日本には明治31年以降、「社団法人」「財団法人」という法人形態が存在しました。この2種類の法人は公益事業を行う法人として位置付けられ、法人設立の際にその公益性が審査されました。
しかし主務官庁の許可が必要なこの制度は新規法人の設立を困難にし、民間が非営利事業に取り組む障壁となっていました。

そこで、公益法人制度改革により、非営利型の法人を広く普及するため、官庁からの認定を不要とする非営利型の法人設立を容易にする一方で、官庁による客観的な審査基準の下、行政が公益性を認定した法人へ移行することも可能とする二段構えの制度へと大幅な制度改正が行われたのです。

その結果、現在では、「一般社団法人」「公益社団法人」「一般財団法人」「公益財団法人」の4つの類型に別れることになりました。


かつての「社団法人」「財団法人」はどうなったのか

公益法人制度改革が導入された当時「社団法人」「財団法人」として活動していた法人は、法改正後5年以内に公益法人に移行するか、一般法人に移行するか、解散するかの三択を迫られました。

その結果、下記のように各法人で選択が分かれました。

この結果を見てもわかるように、かつて公益事業を担っていた「社団法人」「財団法人」の約半数が一般法人への移行を選択しました。
これは、新しい公益法人の認定基準が厳しかったことや、公益法人として活動を行うことのメリット(税制、ブランド等)とデメリット(官庁の監督による制約、コスト等)を比較してのことだと思います。

一般社団法人という名称のイメージ

このような歴史的経過を踏まえると、「一般社団法人」は「社団法人」のイメージを相当程度引き継いでいると言えます。
かつての「社団法人」「財団法人」は設立のハードルが高かった分、社会的に信用の高い団体が多くありました。
行政の外郭団体だったり、巨大な宗教法人のグループに属していたり、地域のアイデンティティと呼べるような行事を主催していたり、有名な奨学金や助成金を事業として給付したりしていました。
これは活動そのものの公益性に加えて、背後には強力な権威と資金源があったことを意味します。

もちろん、その名称からも「一般社団法人」のルーツには「社団法人」があることも明らかです。

このような事情により、「一般社団法人」という名称には、法的には事業内容に制限がないにも関わらず、確かな「非営利」のイメージが付いているように思います。

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