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時編むナンタケット

マサチューセッツ州、ボストンの南東にあるナンタケット島の伝統工芸品、ナンタケットバスケットを編んでいる。

私は幼い頃から道具を使わない編む、組む作業が好きで、組み糸で帯締め(の様な物)を作ったり、針金で水引の飾りを作ったり、繊細な糸でレースの花を作ったり、割り箸でドールハウスを作ったりして遊んでいた。

道具を使わないのは、指と指の間に素材が触れ流れていく感触が好きで、せき止めていた堤防の水を流す様に指が意識外で動き出す感覚を楽しんでいるから。

犬のチャーム付きは母へ
隙間なく強く引きながら編み込んでいく

だから、かぎ針を使う編み物はあまり興味がわかなかったし今も出来ない。
ぐるぐるとハンドルを回すだけで細いマフラーが仕上がる子供向けの玩具が流行っていたけれど、今振り返ると、非効率に豊かさを感じる私の原点がここら辺だったのかなと思う。

年末に帰省をするので、お土産は何がいいかなぁとモールやマーケットに行く度に目星をつけようとしてもピンとくるものが無い。
だったら私が得意とする物で、アメリカの伝統文化を持ち帰ろうと思いついたのがこのナンタケットバスケットだった。
中にビスコッティを詰めて渡そう。

呆れる程物持ちの良い母は、私が小学生の時に牛乳パックを細く切り組んで作ったバスケットを今でも小物入れとして使っている。
私がこのバスケットを渡しても、きっと牛乳パックのバスケットを使い続けるだろうけど、この新参物も仲間に入れてもらおう。

適材適所が必ずしも良い結果を生むとは思っていないけれど、何処に収まると心地よいか美しくなるか素材が指先に教えてくれるているようで、この時ばかりは私の人格を離れて指が楽しんでいる。

ちなみに、ナンタケットとは、先住民族の言葉で「遠い島」を意味し、船の乗組員が島に残した大切な人を想い編んだと言われている。
また友情の証としてプレゼントをした歴史もある。

時を編む。しっくりくるな。

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