見出し画像

Blue植物化❸ビフォーとアフター、切り離された双子


八月がやってきた。

Augustは、
孤独になれる月。

自由に、存分に
独り、で、いられる。

暑さに疲れたカラダが
深い睡りへと、

枝から落ちる
熟した果実のように、

とぷんと沈み、
ぷかりと浮かび、

それをくり返す。


(夢のなかに
半分いるような間隔は
如月に、似ている)


オーガスト、
強くて寂しがりのあなた、
ようこそ。

今年も、あなたと

生物としての、
大きな疲れと
僅かに萌す再生を、

感じながら、31日を過ごす。

夕青空。
蜂蜜いろの西日。



引き続き、
ハルキ・ムラカミを読んでいる。

健康なるものと不健康なるものは決して対極に位置しているわけではない。対立しているわけでもない。それらはお互いを補完し、ある場合にはお互いを自然に含みあうことができるものなのだ。往々にして健康を指向する人々は健康のことだけを考え、不健康を指向する人々は不健康なことだけを考える。しかしそのような偏りは、人生を真に実あるものにはしない。

村上春樹
走ることについて語るときに、ぼくの語ること
p149より(文春文庫 



ダイエット、というと

世に溢れる《ビフォーアフター》の
画像や映像を思う。


ビフォーは、
どんよりと曇っている過去で
アフターは、
ひかりの満ちた、明るい未来で

そのふたつの《像》には
決別、があり、

ビフォーは、含んでいた影ごと、
その人物から切り離され、

(まるで、運行する列車から
重い車両が、連結を解かれたように)

アフターの像が内包するひかりを
体現しよう、と、人物は

新しい連結を始める。

トンネルを抜けたように、
暮らしが変わる。


きらきらと輝く。


お伽話の登場人物のような、
ビフォーとアフター。

決別したふたご。

夜の野へ置き去りにした妹。
或いは、井戸へ閉じ込めた姉。


アフターは、ビフォーに
二度と会わない、と決めている。


しかし、アフターは、
ビフォーを、手放さない。 

メタモルフォーゼの証として
独り、ビフォーの墓を、頻繁に詣でる。


あのころの昏さ、寂しさ
あのころの拗ね、闇、怒り

埋葬したビフォーを反芻し、
都度、安堵する。

嗚呼、あのわたしは
もう、いないのだ、と。



ビフォーは、独り
アパートで暮らしている。

とても、地味な暮らしだ。

若さも美しさも、恋も成功も
アフターに渡してしまった。

ただ、生きるだけ、だ。

ビフォーは、
もはや、《ジブン》を持たない。

鏡を見ることはなく、
規則正しく、自身独りを養い、

花や鳥に、こころを潤し、

誰に、目を留められることなくも
平らかに、生きている。


アフターは、
わたしを切り離すとき

わたしをずっと苦しめた、
虚栄心みたいなもの、を
すべからく、持っていってくれた。

あの、重たく、闇い、モノを
知らず、背負って、持っていった。

わたしは、とても、楽になった。

カラダが軽くなり、

野から出て、
或いは井戸から這い出ることが
できた。


今は、こころに風が通い、
涼しく、あたたかく、

つましく、ささやかながら
暮らしていけている、

と、ビフォーは
アフターを懐かしく、

感謝しつつ、しづかに想う。


ビフォーは、ジブンで縫った
カラダの線が出ない服を着て働きに行く。

駅を越えた、工場の町へ。

向こうから、アフターが、
足早に、歩いてくる。 


早朝ランをして、
オートミールとプロテインの朝食を摂り
蒸した鶏胸肉と玄米入り野菜サラダの容器を
ちいさなバッグに入れたアフターが
颯爽と、ぴったりとした服を着て、
電車に乗り、華やかな街へ。

すれ違う。

ひかりと影が、
交差する。

どちらが、ひかりか影か、
もはや、ビフォーにも
アフターにも、わからない。


8.1の夕ごはん。
夏野菜煮と五穀米ごはん。
茹でいんげんとトマト。
薄焼き卵いり春雨サラダ。
ビール代わりのソーダ水。


わたしは、
ビフォーのようになりたく
ダイエットをしている。

鏡から、離れ、

カラダから、
冷えた脂肪を追い出し
温かな筋肉を増やし、

おんな、という記号を
身から、だんだんと外し、

つましく、ささやかに
平らかに暮らしたい、と。


Blue植物化、とは
そういうダイエットで、あり、

それが、出来たら
良いなあ、と願っている。



🕯️ダイエットキロク

7.1
体重 53.2kg
体脂肪 32.0%

8.1
体重 51.7キログラム
体脂肪 29.7%


※初老なので、体脂肪減を目指したい。
やつれず、しなやかに強くなりたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?