見出し画像

眺める、の日。

2023 4.15

いちにち、雨の予報の日。

午後から、雨脚は強くなる
と、あったので、

午前中、合羽を着て
花殻摘みなど、1時間半ほど、
作業をした。

合羽越しとはいえ、
雨にあたり、冷えたので
温かいお茶を飲んでから、
再び、庭に出て、

雨に濡れる可憐な花たちを
傘をさしながら、眺める。

昨年、初冬に種を蒔いた
パンジーさん。

ゆっくり育って、おっとり咲いた。


来週あたりには咲きそうな
可憐な蕾たちも眺める。

こぼれ種からの、矢車草
エキウムブルーベッダー。
見たことない花、だから
楽しみでならない。
カモミール。
もう、芯が黄色い。
セリンセマヨールさん。
どこに蕾をつけるのかしら、と観察。


雨が本降りとなり、
すごすごと、部屋へ。

電子マネーとか、
AIアナウンサーとか
刻々と、世は変わるが、

雨に対して、は、
古き世から変わらない。

わたしたちは《濡れて》しまう。

濡れないように、

傘をさしたり、
合羽を着たり
雨靴を履いたり、する。

そして、雨の日は仕方ない、と
或いは、雨の日だからこそ、と

いつもの部屋を、
巣のように感じて、

雨音に包まれながら、

安心して、うたた寝をしたり、
編みものをしたり、シチューを煮込んだり
本を読んだり、する。


わたしも、庭を
窓硝子越しに眺めながら、

旅をハジメル、かのように
長編小説を読みはじめた。

壁がある街と、夢読みと
金色の毛がある、単角の獣と
死にゆく影の、ハナシ。

ページを繰りながら、
ときどき、庭を眺める。

ふと、黒と白の鳥が来て、
ジギタリスとペンステモンの
足元に敷いている藁を2、3本
くちばしに咥えて
飛び立つのを、見る。

巣作りは
待ったなし、だものね

と、わたしはうなずく。

敷いた藁を、
巣作りに使ってもらえる

のは、光栄だ、とも思う。


コーヒーを淹れ直し、
本のなかへと、戻る。

16時過ぎ、風呂に湯を張る。

湯が溜まるまで、しばし、と、
傘を差し、庭へ、出る。

雨粒の重みに耐えかねて
八重のチューリップの花茎が
折れていた。

可哀想に、と
猫の仔を拾うように、
部屋へと、連れてくる。

台所の窓辺へ、挿す。


ゆっくりと湯に浸かり、
髪を乾かして、

昏くなったころ、

本を持ち、
傘を差して、
庭の近くのrestaurantへ。

客は、テイクアウトを待つ
軽そうな黒フレームの眼鏡をかけた
青年しか、いなかった。

わたしが、ビールと
前菜盛り合わせを頼めば、

彼は、料理を受け取り、
にこやかにレストランを出て行った。

そこからは、わたし独りで
雨の夜のレストランで、

雨粒に煙る窓を見ながら
本のなかを、旅した。

1時間半ほど、読んだ。
ワインとスパゲティを追加で頼んだ。


部屋に戻るときも、
雨は降っていた。

傘をさして、わたしは
レストランの脇の

いつのまにか、満開となっていた
ハナミズキの白花を眺め、

なんと良い、春の雨ノ夜だろう

と、思った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?