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#19 おじさん引き続き油断する

ジュースを買った。カルピスの桃味だった。最寄りのスーパーだからと油断したのがいけなかった。おじさんともあろう者が。前回に続いて油断している。最近、体重計に乗るのが怖くなってきた。ダイエット危機である。

おじさんは2022年12月1日よりダイエットを開始し、程よく心が折れながらもダイエットを続けてきた。夜食も食べたし、マクドも行った。往生際悪くコーラゼロを飲んだ。先日ケンタッキーを食べた。サイドはクリスピーチキン。不心得者のように衣を剥がすことはない。寒すぎて運動しないで寝た日もあった。残虐行為を並べ立てればきりがない。

しかしながらおじさんにもおじさんなりに後悔の念というものがあり、同時に失敗に学べるおじさんなので現状ダイエットが順調なのだ。欲望に負けたあと体重が激増することもなかった。1食だけなら暴食してもまだなんとかなることを知った。約80日のあいだ1日しか欠かさず運動しているのは、すごいを通り越しておかしい。おじさんは知らず知らずのうちになにかに乗っ取られている可能性すらある。おそらく夜中、眠っているおじさんの耳から紫色の触手とか出てるはずだ。おじさんを健康にしてどうするつもりなんだ……!


おじさんは怠惰な人間である。ここまで太った人間なので自明の理である。そして同時に不摂生でもある。青年期のほとんどは夜に寝ない生活を送っていた。若い男性の例に漏れず肉と魚、炭水化物と油、総じてカロリーが大好きでいつでも飢えていた。文化部の母と運動部の息子の関係は、必要な食事量という1点に於いて絶対にわかり合えない。夜更かしは満腹中枢を乱し、若かりしおじさんはパスタを茹でた。この時期作っていたパスタは「バカパスタ」と呼んでおりカロリーを効率よく摂取するためだけのメニューである。現在でもたまに作る。罪である。

料理は運動と違って非常に楽しい。日本の学問で最も研究者が多い分野だと思う。理を料ると書いて料理。理を調えると書いて調理。家庭科であり、同時に理科でもある。勉強であり娯楽でもある。できると少しばかり人に尊敬される。男性ならばなおさら(かつては「料理男子」という差別的文言が飛び交っていたが、現代では中食の発展とともに男女ともに料理が必須スキルではなくなったので、料理ができることは特殊技能になりつつある)。10年後には米研ぎだけですごいと言われる時代になるのかもしれない。悲しいことだが。

今はおじさんにとって人生で最も料理ができる恩恵を受けている時期で、料理ができなければダイエットは数日でバッドエンドだったことだろう。元々おじさんは食文化学、栄養学にも興味があったし、そもそも勉強とは楽しいものだ。勉強が嫌われるのは強制するからで、強制されれば大抵のものは嫌いになる。人間はそういうふうにできている。ダイエットも妻に強制されていたら意地でも抵抗して100kgを悠々と突破していたであろう。

つくづく興味とは御しがたいもので、「興味さえあればなあ」と常々思っている。興味さえあれば今頃は英語、スペイン語、中国語、ドイツ語、アラビア語、ヒンディー語、マレー語、ベトナム語、C++、JavaScript、Ruby、HTML5、Pythonくらいは自在に操れるようになっているはずだし、楽器も18種類くらいなら軽く1曲演奏できるレベルに習得していたはずだ。しかしそうはなっていない。興味が向かないせいである。今はダイエットと料理ばかりに夢中なのだ。今も剥がした鶏皮を炒って脂を抽出しながらこれを書いている。精神崩壊を防ぐために興味に責任転嫁することにより過去の愚かさを希釈して安心しておく。




さておきカルピスは非常に美味しい。ぐびぐび飲める。1本140kcalである。おにぎり1つが160kcalくらいである。罪だ。


もう開き直ったおじさんは生地を捏ねる。

おじさんのピザ


わあ

材料(中型2枚分)

・ピザ生地
強力粉     200g
塩       ひとつまみ
砂糖      小さじ1
オリーブオイル 大さじ1
水       100cc

・トマトソース
ホールトマト缶  1缶
玉ねぎ      0.5個
ニンニク     1片
砂糖       小さじ1
オリーブオイル  大さじ3~5
お好みのスパイス 適量

・トッピング
お好みで。


作り方

1.トマトソースを作る。玉ねぎとニンニクをみじん切りしてオリーブオイルで炒め、ホールトマトをザルで濾して加えて煮詰める。
2.生地の材料をすべてボウルに放り込みベタつかなくなるまで捏ねる。10分捏ねてベタつくなら適宜薄力粉を足す。まとまったらラップにくるんで20分ほど放置する。
3.オーブンを220度に予熱する。生地を麺棒や手で伸ばし、フォークで全面に穴を開ける。ソースを塗ってトッピングし、220度で10~15分ほど焼く。


ピザについて

おじさんの母上はオーブンを使う人だったので、なにかあるとお菓子を焼いてくれた思い出がある。しかしもっとも特別なものの1つは間違いなく自家製のピザである。

これは母上のレシピをおじさん用にアレンジしたもので、原本は生地にイースト菌を使って発酵させるふんわりタイプのピザだった。生地が膨らむと満腹感がアップしておじさんには辛いので、甥姪に振る舞う場合は今でもそちらを採用することもある。

おじさんが最初にピザを覚えたのは中学生くらいだったように思う。カロリーに取り憑かれていた欠食児童おじさんは馬鹿みたいにチーズを山積させ未来さんが見たら卒倒するようなピザをよく焼いていた。流石に今は胃腸と膵臓の問題でチーズマウンテンをスプラッシュさせることはできないが、それでもたまにはピザを焼いて映画を見る。久々に羊たちの沈黙を見た。ピザを食べながら見る映画ではなかった。

コーラが飲みたくなってきた。ゼロじゃないやつ。


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