産地の信用を得るために 惣菜部門

産地の信用を得るために 惣菜部門

「加藤さんおはようございます」
「店長、おはようございます、店長、店長会で提案した惣菜部門の脱中国の案できましたか」
「加藤さん、そうなんだ、来週早々にテストを始めなきゃならないんだけど」
 青山店長は、ヨコシマスーパーの店長会で、産地の信用を得るために、使用している、すべての産地を記載することを、水産部門から始め、惣菜部門で、中国産のタマネギと記載したものと、北海道産のタマネギと記載したものの、売上、廃棄がどうなるかをテストしようとしていたのです。
 ヨコシマスーパーの惣菜部門は、自社のセンターでカット野菜として仕入れ、店舗で加工していました。
 きんぴら、煮物などは、センターで調理し、パック詰めまで行い、店舗では並べるだけでした。弁当は、大きな袋に、きんぴら、煮物等が入れられ、お店で揚げた唐揚げ、ちくわ天などと、白ご飯と盛り付けられて作られていたのです。
 白ご飯は、センターで、炊かれ、盛り付けに適した温度まで冷やされ、お店に運ばれてきたのです。
 ヨコシマスーパーでは、過去に、炊きたてのごはんで、親子丼を調理し、温かいまま、店頭で販売し、大きな食中毒を出した経験があるので、弁当は、特にご飯は、菌が繁殖しにくい温度帯まで冷やしてから盛り付ける事を徹底していたのです。
 法律上は、米は国産表示でよく、野菜も、弁当では表示しなくてもいいのです。
 しかし、お客様の声とすれば、白ごはん(国産)ではなく、県名の表示が欲しいとの声が多かったのです。
 生鮮部門でも、肉は国産、たまごは国産、野菜は県名、魚は県名と、法律も産地表示に統一的な考え方が無いことも、売り場の産地表示を難しくしている要因の一つと考えます。
 青山店長は、惣菜部門で使用している食材を国産食材は県名単位、海外品は国名の表示を行うテストを考えたのです。
 方法は、水産部門と同じで、大きなホワイトボードを売り場に掲示し、使用している食材の産地名を記載したのです。
 記載するための情報は、加工センターから一覧表をもらい、その情報を掲示しました。
 掲示した、ホワイトボードは、写真を撮り、産地情報とともに、ノートに貼り付け保管しました。
 問題は、かき揚げなどに使用している、中国産のタマネギでした。
 中国産のタマネギは、価格の魅力もさりますが、茶色い皮が剥いてあるので、加工するときの手間が大きく異なるのです。
 加工センターでは、タマネギの皮を剥くときには、空気をあてて剥くのが一般的ですが、何せ、泥が飛び散ってしまうので、専用の部屋が必要になります。
 作業性を揚げるためには、加工センターに入る段階で、茶色い皮を剥いた物が必要になってしまいます。
 青山店長は、第一段階として、今使用している、食材を正直にホワイトボードに記載することにしました。
 特に、中国産のタマネギは、弁当は、酢豚弁当、惣菜は、酢豚と、中華系の物に絞ったのです。一週間置きに、北海道産と中国産のタマネギを入れ替え、売上の変化が無いかもテストを行いました。
 弁当は100円、惣菜は50円の店頭価格で、中国産と北海道産の価格差をつけ、売上がどう変化するか、二週づつ行ったのです。
 なんと結果としては、安い、中国産の物の方が、売れ残りが無かったのです。
 お客様は、すでに、中国産のタマネギを使用していることを認識し、こだわる方は、惣菜部門で惣菜自体を買わない選択をしていたのかもしれません。
 しかし、ポテトサラダ、かき揚げなどに使用している、タマネギは、このテストの前に、中国産から、北海道産に変更したのです。
 家庭料理で、二手間かかる、ポテトサラダ、家庭の台所が油で汚れてしまう、かき揚げは、惣菜部門の稼ぎがしらなので、評判が落ちて、売上が落ちることを避けたかったのです。
 出来れば、すべてのタマネギを国産の物に変更したかったのですが、加工センターの、増築を行わないと、タマネギの皮を剥くことが出来なかったのです。
 中国産にこだわる方の中には、大切な子供の健康を考えると、中国産は避けたい、けど。自分が昼食で食べる、お弁当、会社にもって行くお弁当は、産地を気にしていないのかもしれません。
 青山店長は、タマネギ、長ネギ、ゴボウなどの、土の付いた野菜を、自社で加工することを考えずに、加工センターが出来ている事に驚いたのです。
 おいしさを考えると、ゴボウなども、泥を落として、加工し、水をつけて直ぐに調理した方がおいしいのです。
 売上上位のポテトサラダに関しても、皮を剥いたジャガイモを仕入れていたのです。皮を剥いて、直ぐに蒸かした方が、ジャガイモのおいしさが逃げないのを知っているのに剥いたジャガイモを仕入れていたのです。
 いつの間にか、ヨコシマスーパーは、おいしさよりも、生産性を優先する会社に変わってしまっていたのです。
 美味しい物をお客様に販売したいと、スーパーで働いている青山店長は、悩みを持ってしまったのです。
すべて架空のお話です。

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