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2022-06-26(日)京都サンガFC vs 湘南ベルマーレ

記事の見方

①試合を分割

⇨時間と局面を分割することで詳細な分析が可能
 ・15分ごとに「時間帯」を6分割する
 ・4局面で分割(敵陣攻撃、敵陣守備、自陣守備、自陣攻撃)

②どこで攻撃が終わったかを数値化

⇨ビルドアップにおける弱点を可視化
敵の配置に基づいてゾーンを4分割し、一回の攻撃がどこで終了するかをカウントし割合を算出します。
例えば、ゾーン2で味方ボランチがボールを失えばゾーン2に1カウント。
また、ゾーン1からGKがロングキックでゾーン3まで蹴り、相手CBにはじかれ相手ボールになった場合はゾーン1にカウントします。
一方、相手CBが弾いたボールが直接タッチラインを割り、味方のスローインになれば攻撃が続行されると定義します。

算出例
例えば下グラフではゾーン3まで侵入できていますが、ゾーン4への侵入が少ないです。相手DFラインを突破する1vs1やラストパスに課題があると考えられます。

※①②はサッカーアナリスト杉崎健さんの書籍『サッカーアナリストのすゝめ』で紹介されている分析手法を用いています。

③主に数値データはFootBallLABを参照

④主な略記

 GL:ゴールライン
 TL:タッチライン
 HL:ハーフウェイライン
 PA:ペナルティエリア
 IH:インサイドハーフ
 VO:ボランチ
 SB:サイドバック
 DF:ディフェンス
 CB:センターバック
 FW:フォワード
 MF:ミッドフィルダー


試合分析

0-15分

基本データ


敵陣攻撃 
1分右SB飯田が自陣から大きく湘南の左裏へ蹴り出したボールをウタカが背面でトラップし、キープに持ち込みファールを得た。湘南DFは前節の鹿島DFと比較し能力が落ちるかもしれない。なぜならこの時間帯の攻撃終了ゾーンの10%以上がゾーン4まで進入できているからである。さらにこのシーンでは湘南右CB舘がウタカのマークについていたが、彼は173cmと体躯に優れているわけではないため今後も舘のサイドでミスマッチを作ることが攻略の手段の1つになる可能性がある。
今節も右SB飯田がでスローインでチャンスメイクをしていた。一発で相手の裏のスペースを狙えるため、効率の良い手段であると思われる。
左SB荻原は積極的に直線方向への仕掛けを試みることで、切り返した際は顔を上げ視野を保つことができていた。しかしこの際、利き足でない右足によるコントロールとなるためチャンスに直結する効果的なプレーは難しかったはず。おそらく、湘南の右WB石原は情報インプットしており、縦の方向への進入には警戒していたと思われる。
10分武富が敵陣HL20m前方付近でボールを奪い、中央にいた金子へパス。荻原は裏へ抜けた荒木へミドルパスを繋ぎ敵陣深くからクロスを上げることができた。武富がボールを奪った瞬間、ウタカが敵陣PA左寄りから中央へ駆け込み、湘南右WB石原が釣られて中央へ絞り荒木がフリーになったことにより生まれたと思われる。やはり、ウタカが前線で効果的な動きをすることで周囲の選手はフリーになる確率が上がるようである。また、荒木が上げたクロスに金子、武富がペナルティエリアに入っていたことが印象的である。京都は自陣でセーフティに蹴り出し、全体のラインを上げることで両IHが高い位置まで上がることができる。セーフティに蹴り出すということが意思統一できているため上がり遅れることなく厚みのある攻撃を仕掛けられていると考えられる。チームの決め事として機能しているという印象を受けた。
13分ウタカが敵陣中央でVOの位置で左からのボールを受け、逆サイドへ展開したシーン。筆者は初めウタカが降りてきてボールを受けたように見えたが、実はウタカはほとんど動いておらず、相手が後退したことにより相対的にポジションを下げ、フリーを作っていた。非常に興味深いプレーであった。

敵陣守備 
湘南KOから開始。湘南FWがCB大岩へ落としたのと同時に豊川、ウタカが猛然とプレス。大岩が大きく蹴り出したボールは京都自陣左HL10m後方のタッチラインを割った。スタートは非常に良い入りができていた。その後も敵陣でパスを奪われた際、武富が2回、アピアタウィアが1回強度のあるプレスで相手からボールを奪取していた。

自陣守備 
湘南も京都同様セーフティに前へのロングキックを多用していたが、CBアピアタウィアと麻田が合わせて2回/2回(勝率100%)空中戦を制していた。しかし、アピアタウィアは町野との地上戦の1vs1では裏を返されてしまい、ファールで止めるしか無かった。スピードに不安があるため、京都のハイプレス、ハイラインの戦法には合わないと感じてしまうが、曹貴裁監督からの評価は高いため、今後筆者自身紐解いていきたい。

自陣攻撃
前節同様、立ち上がりはセーフティに前へ蹴り出すプレーが多かった。湘南もハイプレスをかけており、余裕を持ってビルドアップができなかったことも要因であると考えられる。
12分、アピアタウィアがHL10m後方の位置でフリーでボールを受け、右SBの位置に降りていた豊川へパス。しかし豊川は、湘南左WB高橋とIH茨田に狙われており、奪取されピンチを迎えてしまう。ポジションチェンジによってフリーを作ろうとしていたが、このシーンの本当のフリーは右FWの位置まで上がっていた飯田であり、近くの豊川を飛ばして飯田につける方が良かったかもしれない。

15-30分

基本データ


自陣攻撃 
自陣からのロングキックが15分までと比較し、9回から5回に減り後方でつなぐ時間が増えた。しかし、ゾーン2で攻撃が終了する割合が40%以上であり、なかなかビルドアップからリズムを作ることができないでいた。

敵陣攻撃
22分、HL付近でアピアタウィアがボールを奪取し荒木へパス。荒木は後方にフォローに入った武富へワンタッチで落とし一人かわした後、前方のウタカへパス。荒木がCBの裏へ走り込んだため、ウタカは裏のスペースへボールを出すが、大岩に弾かれてしまう。しかし、再度ウタカが取り返し、少し間を置いてペナルティエリア10m後方中央にいた武富へパスし、そのままミドルシュートしたがGKに阻まれた。この時武富より前方にいたのが、飯田、ウタカ、荻原、荒木、豊川、金子の6人、湘南の選手は8人が戻っていた。荒木、豊川、金子がPA内へ侵入してことで湘南DFはVOのスペース空けてしまったため、武富はフリーでシュートを打つことができた。
さらに23分GK上福元のロングキックから空中戦の末、飯田がこぼれたボールをワンタッチで前方の荒木へ、荒木はワンタッチでCBを急襲していたウタカへパス。右へ追い出され、結局ループで放ったシュートは枠に外れたが、立て続けに素早い攻撃で湘南ゴールを脅かすことができた。この時もペナルティエリア内にいたのが、武富、金子、豊川、荒木、ウタカの5人と多くの選手が攻撃に絡んでいた。

敵陣守備
17分飯田からウタカへのパスを杉岡にカットされたが、すぐさまウタカ、飯田、武富が囲い込み、杉岡からボールを受けた大岩のパスミスを誘うことができた。結果的に逆サイドの荻原が奪取しチャンスを構築した。このシーンは特に左IHの武富の素早い切り替えが印象的だった。大岩がボールを受ける時点では5mほど離れていたが直ちに詰め、大岩がキックモーションに入った時にはスライディングタックルできる位置まで寄せていた。武富は敵陣でのタックルが15分までに2回あり、チームトップの回数である。15分以降も継続して強度の高い守備を見せていた。
26分、またも武富が強烈なタックルによりボールを奪取した。湘南GK谷からCB大岩へスローしたところに豊川がファーストプレス、田中にボールが渡ったところを武富がプレスし、こぼれたボールを飯田が拾い前方の豊川へパス。CKを得ることができた。
さらに28分豊川の高橋への執拗なプレスにより中央へのパスをミスし、武富が拾う。そのままワンタッチで前方の荒木へパスしシュートしたが枠を捉えられなかった。このシーン、流れの中で豊川がプレスをかけている間に左FWの荒木が中央のウタカとクロスする形で右へ移動。一時的にフリーな状況を作り、武富が見逃さずパスをしたことでチャンスが生まれていた。やはり、ポジションを流動的に変えることはフリーな状況を作る上で重要な戦術であると言える。

自陣守備
15分、湘南IH茨田により右サイドGL付近まで走り込まれたところをアピアタウィアがカット。このシーンでは飯田が湘南高橋の位置へ、豊川がVOの位置まで下がった状況だった。茨田がサイドに流れることによりサイドで数的優位を作られてしまい、そこをうまく使われたシーンであった。4-3-3の京都と3-3-2-2の湘南では豊川、金子、飯田がカバーをすることができる思われるが、今回のシーンでは湘南が左でビルドアップし、金子がそれに対応するために左へ絞り、空いた右サイドを湘南田中がサイドチェンジしたことで引き起こった。このシーンではそもそも、自陣で簡単にサイドチェンジをされてしまうことが問題であると思われる。田中へは左に絞っていた金子が寄せるべきだったと思われる。

30-45分

基本データ

自陣攻撃
攻撃終了の割合がゾーン1で10%とかなり低くなった。この要因として井上にボールが集まるようになったことが考えられる。前半終盤になり湘南の足が止まり始めたことにより後方でボールを持つことができたと思われる。しかし、MFの3人の流動性が見られず、結局出しどころがなく裏のスペースへ出してしまっていた。SB、VO、FWによるポジションチェンジによるパスコースの創出などの工夫が必要である。

敵陣攻撃 
武富を中心にボールが回る。サイドへの展開、ウタカへの縦パスなど効果的なパスをいくつか通していたが、その後の攻撃が単調で、湘南DFとしては慣れてきた節がある。

敵陣守備 
ハイプレスの強度が落ちたことにより敵陣でのボール奪取が0回だった。前の時間帯では4回敵陣で奪取しておりショートカウンターにつなげていた。この時間帯では取り切ることができず、結果、シュート0本に終わっている。湘南はシュートが0〜15分が1回、15〜30分までが1回、この時間帯が3回と増えており、京都の重心が後方へ下がり、前へのプレッシングが弱まったと考えられる。あるいは、京都のプレスが弱まったために、湘南が前まで押し込めたということも言えるかもしれない。どちらにしても京都は悪循環に陥ってしまった。

自陣守備
ボール支配率が逆転されたが、それに伴い被ゴール数も増加した。33分自陣中盤での守備強度が低下したわけではないが、湘南池田を中心にしたボール保持から積極的な縦中央へのくさびのパスによりサイドへ展開しクロスを上げられてしまった。こぼれたボールを荒木が拾ったシーンがあったが、自陣で取り返され、クロスから町野にシュートを打たれた。前の時間帯で行っていた京都の攻撃をこの時間帯では湘南にされているようであった。

45-60分

基本データ

自陣攻撃 
立ち上がりは両者とも積極的にハイプレスを行っていたので、京都のビルドアップも無理せず前線へロングフィードを選択していた。
50分荻原がメンデスからボールを受けた際、湘南選手に囲まれたシーンあった。プレーが切れた後、メンデスに対しジェスチャーを交え「VOに当てた後にメンデスが受け、その後にサイドへボールを渡してほしい」という素振りを見せた。武富も同調し、メンデスに対し「一旦自分にボールを預けてほしい」というジェスチャーをしていた。後半の立ち上がり、後半から入ったメンデスはビルドアップに不安を抱えているようであった。

敵陣攻撃 
後半立ち上がり、京都のKOから開始。京都は金子のKOを横で受けた武富がそのままドリブルで敵陣に進入。町野と田中に阻まれるがファールをもらう。FKでゴール前に放り込みチャンスを構築した。立ち上がりは積極的な姿勢を見せた。
53分メンデスがボールを受け、左の荻原へ預けたが荻原は孤立してしまい中央へドリブルした結果、奪われた。しかし、このシーンでは荻原の前方に全ての湘南の選手が戻っており、京都のDFは数的に優位であった。もちろん前方のフォローが必要ではあったが、あえて荻原はDFに下げず、積極的なプレーを選択した。守備側としては荻原が一人マークを剥がしてしまった場合、推進力を持って進入してくるため、非常に厄介なのではないだろうか。
58分にも同様にメンデスがウタカにボールを預け、そのままペナルティエリアへ上がりクロスを呼び込んでいたがクロスは上がらなかった。しかし、メンデスが上がることで湘南DFはクロスへの意識が高まり、VOの位置にスペースを空けてしまった。福岡はそのスペースを突きゴールに迫っていた。チームとしての狙いがはっきりしていたシーンであった。
59分FW豊川が左奥に流れることでフリーになりメンデスからフィードを受けていた。やはりポジションを変化させることで有効な手段となり得ていた。

敵陣守備 
46分豊川が湘南右CB杉岡へ猛然とプレス。たまらず杉岡はロングキックを選択し荻原がボールを回収。非常に積極的な後半立ち上がりの守備であった。
49分自陣左20m付近から湘南池田がボールを保持、メンデスが対峙したことで、後方の石原にパス。しかし荻原の強度の高いプレスに怯み、ボールを失う。こぼれたボールを福岡がワンタッチで前線へスプリントしていた荻原へパス。ウタカと共に2vs2に状況を作った。このシーンでもわかるように荻原のプレーは際立っており、前への推進力が高い。また、後半から3バックに変更し荻原はWBとなったため、より前に飛び出すシーンが増えると考えられる。
前の時間帯では敵陣でのタックル(相手のボールに触れる)がなかったが、この時間帯では福岡、武富、金子それぞれ1回の計3回あり、数値的な面からも積極的な守備であることが確認できる。

自陣守備
46分、左サイドHL10m後方の湘南スローインから、球際の攻防があり、湘南田中が自陣中央で回収、町野がメンデスと麻田の間をダイアゴナルな動きによりPAへ進入、メンデスが遅れて体を入れ、事なきを得た。非常に危険なシーンであり、湘南としては前線へのアバウトなボールから混沌を生み出し、シンプルな攻撃を狙っているようだった。翻って京都も同様の手段を選択している。
51分湘南が左サイドでボールを保持した際、石原と瀬川を武富が1人で見る状況を作られていた。これは荻原がDFラインに吸収されたことによるのだが、チームとして想定していたシーンであれば問題ない。しかし、結局武富が遅れてプレスにいったため瀬川をファールしてしまい、チャンスを造られてしまった。

60-75分

基本データ

自陣攻撃
この時間帯も湘南のハイプレスの前では無理に繋がずロングフィードを選択していた。
前の時間帯で2回メンデスのオーバーラップがあったが、この時間帯でも荻原にボールを渡した後メンデスがオーバーラップするシーンがあった。このシーンで、荻原はボールを受けた後中央へ進入したが石原にプレスを受け、ファールをもらう。湘南としてはメンデスが上がってくることを認識し始め、荻原へのプレスがファールになったとはいえ、スムーズになり始めていた。
ボール支配率が相手を上回っているにもかかわらず、シュートが0本、被シュート5本であった。ビルドアップの際、最終ラインでは余裕を持ってボールを保持できているが中盤に預ける際に奪われショートカウンターを食らっていた。攻撃終了はゾーン2が50%でありここのつなぎが課題であった。ハマられた状態が継続していたため、ポジションチェンジを使ったビルドアップが有効と考えられる。しかし、無闇に流動的になると奪われた際に陣形が整っておらず危険度が高まるため、トレードオフの関係であると考えられる。

敵陣攻撃 
左GL20m付近から右WB飯田がロングスロー。井上へ渡ったボールは相手にクリアされ再度スローインになった。このプレーに曹貴裁監督が拍手。飯田のロングスローは京都として練習を積んでいる戦術であることが読み取れた。
60分荻原のスローインから武富が受け、池田のプレスをかわし、中央へフリーな状態で進入。右IH金子が左斜めの動きにより茨田とCBの間のスペースへ走り、ボールを受ける。そして杉岡は金子が走り込んだことにより前方へ釣り出され、それによりCBの裏のスペースが空きウタカがそこに走り込むがパスは通らず。しかし、可能性を感じる連携であった。金子、ウタカともに斜め前への動き出しによってチャンスを構築できていたようである。

敵陣守備 
敵陣でのタックルが福岡の1回のみと減少した。ロングカウンターを受けるシーンもあり、前の時間帯と比較しやはり強度は落ちていると言える。

自陣守備
68分相手ペナルティエリア内で白井がボールを奪われた後にカウンターを受けるシーンがあった。湘南高橋が右WB飯田を交わしクロス。この時点で瀬川が後方から入り込みフリーな状態。クロスは逆サイドに流れてしまったが非常に危ないシーンであった。マークとしては福岡のようであるがボールウォッチャーであった。

75-90分

基本データ

自陣攻撃
湘南のハイプレスの強度は落ちず、京都はビルドアップでのミスが発生する。78分井上が右でボールを受けた際、タリクからのプレスによりタッチラインを割ってしまった。湘南は交代した選手を中心にハイプレスを継続していた。
また、79分左サイドで麻田が湘南のロングボールを処理する際、町野のスピードに負け、入れ替わられ中央にいたタリクにボールが渡り上福本と1vs1になるが、なんとか防ぐシーンがあった。

敵陣攻撃
先制点を許した直後、メンデスを前線へ張らせパワープレーに。しかし、その後はDFラインへ戻り、臨機応変に前線へ上がっていた。

敵陣守備
やはり失点後ハイプレスの強度が増し、ボール奪取回数が増えた。石原との球際のマッチアップでは大前の粘りからウタカ、金子とつなぎペナルティエリアへ進入できていた。その後も井上が1回奪取に成功しており、数値の上でも強度が増していることが分かる。

自陣守備
敵陣HL5m右からの大前のFKは左サイドへ流れメンデスがキープするが舘に奪取されそのままロングカウンターかと思われたが、井上がペナルティエリアから30m以上のスプリントで戻りボールを奪い返した。見事な帰陣であった。
前の時間帯からも見られたがFW瀬川がトップ下の位置に下がった際、京都の選手はプレスに行けないことがあった。86分このフリーとなった瀬川に交代で入った米本が絡み、飯田の裏のスペースを抜けたウェリントンへパスを送り、ウェリントンの折り返しを町野ゴール。このシーンの発端は、自陣でハイプレスを受けた飯田が前線へアバウトにクリア。それをDFに拾われ米本に預けチャンスを構築された。

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