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2022-06-18京都サンガFC vs 鹿島アントラーズ

記事の見方

①試合を分割

⇨時間と局面を分割することで詳細な分析が可能
 ・15分ごとに「時間帯」を6分割する
 ・4局面で分割(敵陣攻撃、敵陣守備、自陣守備、自陣攻撃)

②どこで攻撃が終わったかを数値化

⇨ビルドアップにおける弱点を可視化
敵の配置に基づいてゾーンを4分割し、一回の攻撃がどこで終了するかをカウントし割合を算出します。
例えば、ゾーン2で味方ボランチがボールを失えばゾーン2に1カウント。
また、ゾーン1からGKがロングキックでゾーン3まで蹴り、相手CBにはじかれ相手ボールになった場合はゾーン1にカウントします。
一方、相手CBが弾いたボールが直接タッチラインを割り、味方のスローインになれば攻撃が続行されると定義します。

ゾーンの定義

算出例
例えば下グラフではゾーン3まで侵入できていますが、ゾーン4への侵入が少ないです。相手DFラインを突破する1vs1やラストパスに課題があると考えられます。

※①②はサッカーアナリスト杉崎健さんの書籍『サッカーアナリストのすゝめ』で紹介されている分析手法を用いています。

③主に数値データはFootBallLABを参照

試合分析

0-15分

基本データ


敵陣攻撃 
京都ウタカによるキックオフから開始し、バックパスを受けた京都GK上福本が前線へロングキックと同時に全体が前へ推進。しばらく五分五分の状況が続くが京都FW豊川がペナルティ付近から強引にシュート。リズムをつかんだ京都はその後も波状攻撃を続け、1分ほど京都の時間帯になった。明らかに京都が狙っていた形であり、上々の立ち上がりであった。その後もウタカがボールを収め味方へ散らすことができるとチャンスが生まれていた。10分自陣右から飯田によるスローインからボランチの位置に落ちたウタカを経由し左サイドの荒木へ展開。荻原、川崎、豊川がペナルティエリアへ侵入し3人対4人の状況を作り出し荒木からクロスが入るがシュートに至らず。このシーンで京都左SB荻原のインナーラップにより鹿島右SH仲間を追い越し自らフリーな状態を作った。荻原の走力は今後の有効な手段となり得る。ボール支配率は53.9%とホームの鹿島を上回り、シュートも3本と非常に良い立ち上がりであったが、ゾーン4への侵入がなく得点期待値としては低かったかもしれない。※得点期待値算出は今後の筆者の課題

敵陣守備 
終始強度の高いプレスをかけて相手のミスを誘発していた。京都左インサイドハーフ川崎も積極的に自ポジションを捨て鹿島CBまでプレスをかけていたのが印象的である。立ち上がり15分までに先制点を取る姿勢が見てとれた。

自陣守備 
鹿島ボランチのディエゴピトゥカが浮くことがあり、遅れて京都川崎が寄せるが間に合わず、ディエゴピトゥカを起点にシュートチャンスを作られるシーンがあった。金子の運動量を川崎がカバーしているように映るが、おそらく京都の想定内であると考えられる。鹿島は最終ラインから一気に上田の裏のスペースを狙っていたが、麻田が何とか処理するシーンがあった。鹿島の長所である上田の裏への飛び出しであるが、同時にFW和泉も裏を抜ける動きが多く、比較的京都としては守りやすかったのではないか。裏へ抜ける動きとフルバックの動きを併用されるとDFは守りにくいと考えられるが、筆者自身この時の鹿島の意図を汲み取ることができなかった。

自陣攻撃
鹿島のプレスの強度が強いこともあり、基本的に前へセーフティに蹴り出す戦法を選択。狙いはウタカか豊川の裏のスペース。グランダーでウタカへ繋ごうとするシーンもあったが鹿島CB関川のカットなどで効果的なシーンは作り出せなかった。8分を過ぎたあたりから鹿島のプレスも落ち着き、京都が自陣で繋げていたが、結局前線へロングボールを選択。このようにロングボールを選択していたため、相手にボールを奪われる回数が多かった。ゾーン1で攻撃が終わっている割合が30%以上と比較的多いのはそのためであると考えられる。
10分鹿島三竿のミスキックを自陣でカットした飯田がボランチの井上に預け、井上が左サイドへ展開すると見せかけ、縦にいた豊川へパス。鹿島は逆をつかれ後手に回る。豊川は金子へ落とし、金子は裏へ走り込んでいたウタカへパス。残念ながらGKにカットされたが非常に惜しいシーンであった。発端は飯田から井上が受ける前のシーン。井上はボールを受ける前に豊川・金子の位置を確認した上で相手の逆をついたのである。

15-30分

基本データ


自陣攻撃 

敵陣攻撃
この試合では幾度となく京都右DF飯田のスローインからチャンスが生まれてた。この時間帯では逆サイドバックの荻原へ展開しチャンスを構築。鹿島は当然逆サイドの荻原を捨てワンサイドで数的優位を作るが、鹿島は飯田のスローイン能力を把握していなかったように思われる。そもそも今シーズン飯田の出場機会は限られており鹿島にとって調査不足だった可能性が高い。22分ウタカが相手ペナルティエリア10m手前でボールを保持し鹿島に強いプレスをかけられるがサポートに入った川崎・金子が球際の攻防を制し左SH荒木へ展開しフィニッシュに持ち込む。15分〜30分の時間帯でポゼッションは37.5%まで落ち込んだが、シュート数は鹿島と同数の2本であり、このような速い攻撃でチャンスを作ることができていた。

敵陣守備

自陣守備
前へのプレスを緩めたことで、最終ラインをハーフウェイラインから20m下げた位置に設定し3ラインを構築。27分自陣左サイドから鹿島のスローインを受けたディエゴピトゥカに川崎のプレスが緩くなり、裏のAカイキへパスが通る。この時ディヘンスラインが整っておらず、飯田と長井の中間を迂回したAカイキが裏へ抜け出しGKと1対1。なんとか上福本がセーブし失点免れた。後方でブロックを組みゾーンディフェンスを選択したことで、お互いのマークの受け渡しが曖昧となりピンチを招いたと考えられる。
前へのプレスを緩めたことにより鹿島は比較的簡単に前線へパスを通すことができるようになった。ゆえに京都は自陣ペナルティエリア付近まで鹿島に侵入を許すが、DFラインは前半同様セーフティーに蹴り出し井上、川崎、金子が回収。川崎が奪取しその勢いで前進しファールを受けるシーンがあったが、川崎の特徴が表れた印象的なシーンだった。無理に前へ蹴り出してもFWが孤立する可能性が高く、強引なドリブルでファールをもらう選択は効果的だったと思われる。事実、攻撃終了はゾーン1が多く(40%以上)、前線へ蹴り出したボールを鹿島に奪取されていた。このことを川崎は認識していたと思われる。
ペナ付近に京都が最終ラインをセットすることで鹿島は攻めあぐね、結局強引なミドルシュートになることがあった。またこの状況を打開するために鹿島上田がボランチの位置へ降り、組み立てに参加しようとしていたがボールに触れられず。鹿島としてはボールを支配している割に決定的なシーンが少なかった。

30-45分

自陣攻撃
飯田のスローインを金子は受け、逆サイドの荻原へパス。10分にも同様のシーンが見られたが、鹿島はワンサイドに寄せているにもかかわらず、金子へのプレスが弱かった。このシーンでは、金子が、Aカイキ、ピトゥカ、和泉の三角形の中心に入り混乱させた。ピトゥカはバランスを意識し前へ上げなかったが結局逆サイドへ展開される。
この時間帯は前の時間帯と比較しゾーン1で攻撃が終了する割合が増した。前半が終わりに差し掛かったいるため、よりセーフティなプレーを意識したのだろうか。

敵陣攻撃 
40分以降前へのプレスが増し、ボールを奪うシーンがあった。それにより、ショートカウンターを繰り広げる。豊川のスローインを金子が受けたが、これまでに2度逆サイドへ展開されたことで鹿島が警戒し、鹿島右SH仲間がチェックバックでつぶしピトゥカがボールを奪い、そのままショートカウンターを遂行。

敵陣守備 
15分以降、前からのプレスを自重してきたが、37分三竿がフリーの状態で一気に仲間へロングパス。これがDFの裏を抜けGKと1vs1になりシュートを受けるシーンがあった。おそらくこのプレーをきっかけにDFのブロックが形成されても鹿島ディフェンスラインへプレスをかけないと守りきれないと判断。以降、鹿島CBへのプレス強度が増した。特に三竿へ豊川が猛然とプレスをかけたシーンが印象的だが、同サイドにいた監督からの指示があったと思われる。

自陣守備
34分鹿島にボールを繋がれ自陣ペナリティエリアまで引き下げられる。それにより鹿島のミドルレンジが空き、樋口に強烈なシュートを打たれる。もともと川崎が樋口をマークしていたが、ブロック形成のため川崎がボランチの位置まで落ちる。フリーになった樋口にボールが渡り、同じくボランチの位置に下がっていた金子が遅れてプレス。アディショナルタイムになりこのままHTを迎えたい京都はウタカも右サイドハーフの位置まで下がりブロックを形成。豊川のみを前線に残すシーンが見られた。

45-60分

基本データ

自陣攻撃 
鹿島は前からプレスをかけないにもかかわらず、長井は簡単なトラップミスにより相手スローインに。後半の立ち上がりが非常に悪く結果的に53分に武田と交代を命じられる。最終ラインでミスが多いとリズムが掴めす、ボール支配率は前半の立ち上がりと比べると13.6%も低かった。交代を鑑みると京都としてはプラン通りではなかったようである。

敵陣攻撃 
ボール奪取に成功し左サイドで形を作りウタカがミドルシュート。しかし、繋ぐシーンは上記の他はほとんどなく球際で奪われてしまうシーンが目立ち良い立ち上がりではなかった。相手へのプレスの強度を考慮するとやはり想定外の立ち上がりだったと思われる。

敵陣守備 
鹿島KOから京都は前線へのプレスを開始。前半同様、川崎の前プレが印象的。自ポジションを捨て圧力をかけていた。

自陣守備
50分鹿島CKのシーン、ペナルティエリア内にいた関川が足を踏まれたとアピールし時間を使う。このシーンにより集中力が切れたのか、その後CKから被ゴール。
長井の空振りにより裏へボールが流れ鹿島仲間が拾い、上田へパス。しかし上福本がキャッチしピンチを逃れる。長井は前半もラインコントロールをミスするシーンがあり状態はよくない。長井と代わった武田が中盤に入り、井上がCBに。しかし、武田は投入直後に頭部にボールを受け、即退場。一時的に10人となった京都に対し、鹿島はサイドチェンジを多用し京都を揺さぶる。58分鹿島右サイドで和泉・ピトゥカ・常本が中と外を交互に入れ替わり意図的にフリーな状態を作る。最終的に和泉が中へ侵入し、京都は荒木、川崎、荻原のマークの受け渡しがうまくいかず交わされてしまう。

60-75分

基本データ

自陣攻撃
鹿島が前へプレスをかけないため、京都CBは余裕を持って繋ぐことができた。攻撃もゾーン1で終了する割合が20%と低下しボールを前へ運べていることがわかる。井上は右SBの位置に落ちた福岡を囮にし、サイドハーフの位置に上がっていた荻原にパスを出す積極的なプレーをしていた。この選択により、荻原は相手の陣形が整う前にクロスを上げることができていた。

敵陣攻撃 
京都は何とか繋ごうとするが鹿島の強力なプレスによりなかなかうまくいかない。京都のストロングポイントである左サイドでも例外ではなかった。63分豊川と白井が後退。白井は前節まで右サイドでの出場が多かったが今回は左サイドでの出場となった。この交代を境に(直接的な効果は不明だが)ボール回しに変化があった。最終ラインでボールを保持した際、福岡が右サイドへ落ち、CB井上の指示で飯田がトップ下の位置に入り樋口、三竿、安西の三角形の重心の位置でボールを受ける。結果的にうまくコントロールできなかったが、鹿島は誰がマークにつくのか混乱状態だったため効果的な策だったと考えられる。鹿島が後ろで構えているにもかかわらず、この時間帯になりゾーン4まで侵入ができるようになった。やはり、流動的なポジションチェンジによるビルドアップは必要である。
65分以降鹿島のプレス強度が上がったことにより試合全体のスピードが上がる。それにともない、金子のパスミスが目立ち始める。周りのフォローが少ないというより、簡単なパスミスである。

敵陣守備 
依然として厳しいプレスを遂行。流れの中で福岡が樋口からボールを奪い、ウタカにつなぎシュート。 三竿へ福岡が遅れてタックル。これにより福岡はイエローカードをもらう。組織的な連動した守備が難しくなり後手に回るシーンが見られた。

自陣守備
敵陣深く飯田のロングスロー後に鹿島はカウンターを遂行したが、これに対し井上が上田へ執拗にアプローチし上田が中盤にはたいたボールを川崎・金子が奪取。その後川崎がウタカへスルーパス。惜しいシーンであった。
70分以降ウタカを前線に残し2ラインを敷きブロックを作る。これにより、鹿島ボランチが浮いてしまい、遅れて川崎が詰めるシーンが多く数的不利を作られてしまっていた。

75-90分

基本データ

自陣攻撃
75分FWイスマイラを投入。イスマイラは体の強さを生かしボール保持を試みるが、鹿島のプレス強度が落ちず苦戦。

敵陣攻撃
前線からのプレスを強め、早めのクロスからイスマイラの高さを生かす戦術にシフト。シュートは3本打ったがどれもゾーン3よりも後方であるため期待値は低かった。

敵陣守備
ウタカ、イスマイラを中心に前からプレスをかけるが、逃げ切りを図る鹿島はセーフティに前へ蹴り出す。

自陣守備
ウタカも左サイドハーフまで戻り守備を行っていた。イスマイラを残し、4−5−1の布陣に。この時間帯でも強度の強いプレスをかけているのは川崎である。
83分上田が右サイドの裏へ抜け出しボールを受けそのままクロスを上げるが麻田が阻止。また、京都CKの流れから左サイドからの鹿島のカウンターに対し右サイド荻原が追走。最後まで攻守とも強度が落ちないのは荻原、川崎であった。


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