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秋の夜長に、ドラマのような時代小説はいかが? ~”みをつくし料理帖”『八朔の雪』~

もうすっかり寒くなって、秋真っ盛りですね。
私が住んでいる山梨県の富士五湖エリアは、標高が高いので、もう冬のような寒さです。

ということで、今回はいしかわゆき(ゆぴ)さんが作ってくれたテーマで書きたいと思います。

今日書くお題は・・・

秋の夜長にぴったりのオススメ本は?

まるでドラマのような時代小説

私のおすすめは、髙田郁さん著、”みをつくし料理帖”シリーズの第一巻『八朔の雪』です。

”みをつくし料理帖”はドラマや映画にもなった人気シリーズなので、知っている方も多いかもしれません。

簡単なあらすじをご紹介。

主人公は、大坂出身の十八歳の娘、澪。
幼い頃にあった水害で両親を失い、大坂の有名料理店の女将に拾われたことがきっかけで、料理人として歩み始める。
江戸に出てきた澪は、様々な困難に見舞われながらも、澪が働く「つる屋」の店主や、周りの人々の温かさに救われながら、料理の道を進んでいく。

私のオススメポイントは、まるでドラマを見ているようなえがき方。

『八朔の雪』は、つる屋の客の「せっかくの深川牡蠣を」の一言から始まります。
これを読んだだけで、どうしたんだろう、なんか怒ってる?と気になってしまう。

文章を追うと、まるで自分もつる屋の中にいるような気がするくらい、情景が目に浮かびます。

応援したくなる主人公、澪

主人公の澪は、両親を亡くすという悲しい過去を持ちながらも、懸命に努力している女の子。
そんな彼女に、物語の登場人物たちが惹かれていく様子が描かれています。

特に印象に残るのは、”化け物稲荷”のくだり。
澪の近所にある稲荷神社なのですが、参ると必ず祟りがある、などの悪い噂が絶えず、誰も手入れをしないので荒れ放題の状態でした。

それを見かけた澪は、あまりの荒れように心を痛め、なんとかお参りできるようにと動きます。

祠までの道を作ろうと、働きに出る前の早朝から昼まで、毎日、化け物稲荷に通う日々。
雑草を払い、根を抜き、顔や手足が虫に刺されてぶよぶよになっても構っていられない。

そんなある日、突然、握り飯と水と薬を差し入れてくれる老人に出会います。
それが、つる屋の店主、種市でした。
種市は、澪の働きぶりを見て、自分の店を手伝ってもらったら間違いないと思ったと話すのです。

ここを読んでいて、私なら絶対見て見ぬふりをするな、と思いました。
そこまで一人で行動する澪は、ほんとうにすごいと感心。
私も、その瞬間から、澪を応援する気持ちで読んでいました。

読者を引き込み、勇気づけてくれる物語

江戸時代の人情あふれる交流や、甘酸っぱい恋模様など、登場人物たちが生き生きと躍動する様子に、どんどん引き込まれます。

また、これ以降、何度も何度も艱難辛苦かんなんしんくが澪をおそいます。
その度に心が折れそうになるけれど、それでも諦めない、澪のうつくしい姿。
読者は必ず、勇気づけられます。

続きがついつい気になってしまう、みをつくし料理帖シリーズ。
美味しそうな料理の表現もたくさん出てくるので、たまには丁寧に食事を作ってみようかな、と思えちゃったり。
食欲の秋にもぴったりです。

ぜひ、秋の夜長に読んでみてください。






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