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騙されていたのは、我々自民党支持者だったというオチ 〜エイト本を読んだ感想〜

昨日、鈴木エイト氏の『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』が販売されました。
amazonでも上位にランキングしていますが、私も早速手にとって読みました。
感想から言うと「私のような安倍さん及び自民党の(元?)支持者こそ一読するべき本」だと感じました。簡単に私の読後感を書いてみたいと思います。

(1)2012年:第二次安倍政権誕生時に既にあった統一との協力関係

2012年の衆議院選挙を振り返ると、安倍さんが自民党総裁として登場し、『日本を取り戻す』などのスローガンのもと選挙に大勝、無事政権交代を果たしました。
当時の私は社会人になりたての頃で、民主党政権下でなかなか経済が上向かない状況もあり、完全に安倍さんを支持する形で自民党に投票した記憶があります。

しかし本著を読むと、この時に既に統一教会との関係は相当深く進行していたことがよく分かります。
特に自民党の保守系議員にとって2009年に民主党に政権を取られたことが大きな危機感を呼び起こしたようで、選挙に勝つためには手段を選ばない、組織票だけでなく無尽蔵の人員を"派遣"してくれる教団と連携していく方向に舵を切ったようです。目先の選挙や自身の政治課題を実現するために、最も関係を持ってはいけない相手からのアプローチを受け入れたといえます。
そして同時に2010年前後は、統一教会側も2009年の新世事件以降、教団の中枢部に警察の捜査が入ることを非常に恐れており、自分達を庇護してくれる政治家へのアプローチを強化していた時期だったのです。

つまり、下野を経験したことで選挙に勝つことが至上命題になっていた自民党側と、選挙に協力することで体制保護を欲していた教団とはまさにこの時点でwin-winの協力関係だったのです。そういう意味では、2012年の政権交代は統一と自民党との悲願が達成された瞬間でもあったといえます。

2012年に自民党に投票した当時の私はそんなことを知る由もなかったのですが、ここから自民党(特に安倍さん)と統一との関係はどんどん濃厚になっていきます。

(2)2012年〜2022年:関係はどんどん濃密になっていく。

自民党が政権を取ってからの10年間、統一による政界への浸透がどんどん進行したことが本書では描かれます。概要をまとめると、以下のようになります。

  • 2013年7月の参議院選挙運動中には、自民党候補の北村経夫氏へ組織票を集中させるよう票の差配が行われる(この過程で菅官房長官の関与が仄めかされている)。

  • 2016年、当時の安保関連法に反対する学生グループSEALDsに対抗して、統一信者2世を中心にUNITEが結成される。自民党の有力議員(平井卓也議員など)が公然とUNITEを支持するようになる。

  • 2017年以降は、自民党の有力議員(マザームーン山本や山際氏など)が公然と統一関連のイベントに出席するようになる。

  • さらに統一関連議員が続々と閣僚入りを果たすような事態となり、第4次安倍改造内閣(2018年)では異常な数の統一関連議員が閣僚入りするに至る。

  • 極めつけは、2021年に安倍さん自身がUPF(統一家庭連合のフロント組織)でビデオ講演を行う(これが、今回の銃撃事件の引き金になってしまったことは、周知の通りです)。

このように、約10年弱続いた安倍〜菅政権下においてどんどん統一との関係が強化されていくことが本書では描かれます。そしてそれは、かつての下野の悪夢を払拭して何としても選挙で勝ち続けたい自民党側と、政権に近づいて自分達の体制保護を確保したい教団との利害関係がこの間ずっと強化されていたことを示しています。

なおそんなことを知らなかった私自身は、この間も基本的に安倍さんを支持するスタンスは変わらず、結構な割合で自民党やその候補に投票していたと記憶しています。

(3)最大の被害者は、情弱の自民党支持者である。

よく報道されていますが、自民党が特定の宗教団体と関係を持つこと自体は何ら攻められる問題ではありません(統一が反社会的団体であることは置いておくという前提ですが)。

むしろ問題は「特定の宗教団体との関係を政治家が隠蔽すること」にこそあるのだと、本書を読むとよく理解できます。
というのも、鈴木エイト氏から統一家庭連合との関係を取材された議員は、原田義昭氏や北村経夫氏などの比較的取材に協力的な議員を除いてみんなコソコソと逃げ回っており、統一との関係が暴露されることを非常に恐れていたことが分かります。
一番ひどい例として、元自民党議員の菅原一秀氏が繰り返し取材妨害を行い、統一教会と自身との関係が世間に暴露することを防ごうとしたエピソードが本著では語られています。
また、安倍さん自身がビデオメッセージの公開を1日だけに限定したことや、昨今の萩生田議員が取材から逃げ回っている姿勢などを見ても、彼らが「国民に統一との関係を知られたくない」と感じていることはヒシヒシと伝わります

別に問題がない組織との付き合いであれば堂々と取材に応じればよいし、むしろ自ら公表して世間に説明すればよいだけの話ですが、彼らがコソコソと関係を持つことこそが、実は自民党議員自身が統一教会を問題ある団体だと見なしていることの自白になっています。

例えば、私自身もこの本を10年前に読んだなら、自民党に投票することはなかったでしょう。
自民党議員が統一との関係を隠してそれを明るみに出そうという動きを封じてきたことこそが、有権者の知る権利やそれに基づく適切な投票判断を下すことを妨害していたのであり、まさに『一番アホなのは、まんまと騙されていた我々のような情弱の自民党支持者である』ことがよく分かる本となっています。

(4)統一問題は終わらない 〜本丸は菅元官房長官なのか〜

本著を通じて安倍さんと統一教会との協力関係が描かれていますが、残念ながら安倍さんはもうこの世にはおらず、岸田総理はその関係を究明することは難しいとして安倍さんの再調査には消極的な姿勢を見せています。

しかし、本著ではもう1人の黒幕候補として菅元官房長官の存在が挙げられています。考えてみれば安倍さんは菅さんと二人三脚で政権運営をしてきたわけで、特に選挙時の組織票の差配などには菅さんも深く関与してきたでしょうし、本著では統一教会系の団体やイベントに自民党議員を派遣する際に「どの議員を派遣するか」という人の差配にも、菅さんが深く関与していたことが示唆されています。

このあたりは著者の鈴木エイト氏自身も、統一教会問題はまだまだこれからも続くといったことを述べており、個人的には引き続き疑惑追及を応援したいと思います。
そして何より、私自身がかつて自民党に投票してその政権を支えていた者の責任として、「これからも統一問題を忘れてはいけない」ことを強く意識させられた1冊でした。

気になった方がいれば、是非手に取ってお読み下さい。


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