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腎臓(尿の計算とか)


●腎臓での尿形成

基本方針は、
① 大きいもの以外なんでもろ過して、とりあえず腎臓に取り込む。
② 腎臓で、糖や水などを再吸収する。
  その結果、不要物を多く含む尿が形成される。
③ さらに(水不足時など含めて)尿に成分を分泌する。

・ ろ過… 

血液が糸球体でろ過される。腎動脈の血圧(血流)により、糸球体毛細血管の隙間から血液がろ過され、液性成分のみが流出する。タンパク質と血球以外がしみ出る。

これが、ボーマンのう内部に流れ込み原尿となる。従って、原尿と血しょうの成分はほぼ同一である。

・ 再吸収… 

必要なものは細尿管より再吸収する。

100%再吸収:
 グルコース(ただし、限度があり血糖が多すぎると、尿として排出)
大部分が再吸収:
 水、イオン類
一部が再吸収:
 尿素(主に腎臓髄質の組織液を高濃度にするために利用)
   ⇒  細尿管において水を再吸収するため
  (原尿 ➡  水の浸透の方向 ➡  腎臓髄質) 
   濃度低                        濃度高

細尿管で再吸収されないろ過された分だけ尿として排出):
 イヌリン(食物繊維の一種)

●腎臓の計算

原尿量の推定・濃縮率・再吸収量

・ 背景

腎不全などの病気ではろ過の異常が見られる。それゆえ、腎臓の病気に関する診断には腎臓のろ過機能の評価が必要である。だが、実際にろ過を観察することは難しく、間接的な方法が考案された。これがろ過機能を原尿生成量からとらえるという方法である。ろ過に異常があると原尿生成量が変化することを利用する。

・ 原尿量の推定

原尿(尿も)は常に生成されているので一定の時間当たりどれぐらいできるかを推定する。

単位時間当たりの原尿量の推定には、細尿管で再吸収されないイヌリンやクレアチニンを利用する。
再吸収されない物質は水の減少分だけ濃度が増すので。

次のように原尿量(量/単位時間)を求める。

原尿量(量/単位時間) =  尿量(量/単位時間) ×  イヌリンの濃縮率

式の意味としては、二倍濃縮のめんつゆを使う時に、めんつゆの体積が二倍になるように薄めると濃縮前の元の状態になるのと同じ。つまり、

濃縮前のめんつゆ量 =  濃縮後のめんつゆ量 ×  めんつゆの濃縮率
*これができないやつは濃縮されためんつゆを使うなと思う。)

・ 濃縮率の計算…

濃縮率  =  尿中での濃度 / 血しょう中の濃度(もしくは原尿中の濃度)

・ 再吸収量の推定…

原尿量がわかると、物質がどれぐらい再吸収されているかも推定できる。

再吸収量  =  原尿中に含まれる量 - 尿中に含まれる量

★腎臓による体液の調節

生物を化学物質からなる機械と見れば生命活動とは代謝である(なぜなら化学反応で自らの体を生み出し、さらに化学反応に伴うエネルギーを利用して活動するため)。

それゆえ、代謝が不安定になると生物は故障する。よって、代謝のための安定した環境が必要となる。すなわち、体液の状態を、代謝を行うために一定に保つ必要がある。

さらに、代謝では酵素を利用する為、最適な条件が存在する(最適pHや最適温度を思い出そう)。理想的には代謝に最適な状態を一定に保つことが望ましい。これが体液濃度に関する恒常性の進化のシナリオである。

●水生動物、魚類の体液の調節

動物によって様々な浸透圧調節器官が発達・進化

・ 淡水性の原生生物(ゾウリムシなど)や海綿
 ⇒ 収縮胞という細胞小器官で浸透圧を調節

・ 刺胞動物(腔腸動物とも呼ばれる)、棘皮動物
 ⇒ 多分知られていない

・ 扁形動物、輪形動物
 ⇒ 原腎管。多数の繊毛をもつ炎細胞が存在

・ 環形動物腎管、貝類も腎管(ボヤヌス器とも)、
 頭足類でも腎管、甲殻類では触角腺が存在

昆虫類では胃腸の間に閉口するマルピーギ管を利用し、
 糞とともに尿を排出 

・ 水生生物の体液濃度の調節

進化の道筋で見ると 
 ① 順応型 ⇒ ② 調節型(最適な条件の体液を一定に保つ)

順応型

 順応型 −1 海産無脊椎動物
 外部環境に細胞を順応(体液濃度=海水濃度 ⇒ 浸透圧調節能力未発達)   

 順応型−2 軟骨魚類
 尿素を利用して体液濃度を一定に保つ
 (尿素の濃度+体液濃度=海水濃度)
  ⇒ 細胞にとって理想的な条件ではないと考えられる

調節型(最適な条件の体液を維持 )

 淡水産無脊椎動物、硬骨魚類、陸生動物
 1%程度の体液濃度を保つ ⇒ 浸透圧調節能力発達
 (淡水への適応の結果と考えられる

・ 体液(血清)と等張の食塩水を生理的食塩水という。

 恒温動物では0、9%、両生類では 0.65 ~ 0.7 %
 K+、Ca2+、 Mg2+、炭酸水素、リン酸などの塩類溶液も必要。
 体液には緩衝作用が存在し、 pHが安定化する。

*ヘンダーソンハッセルバルヒの式は高校化学なのでやればいいと思う。

・ 硬骨魚類の浸透圧調節

魚類の浸透圧調節では、えらが重要(水の出入り、塩類の吸収・排出)

淡水魚( 淡水濃度 < 体液濃度なので水は体内に流入してくる環境 )
 ⇒ えらから塩類を取り入れ(塩類細胞)、また腎臓で塩類を再吸収。
   多量の低張尿を排出

海水魚( 海水濃度 > 体液濃度なので水は対外に流出している環境 )
 ⇒ 海水を摂取し、余分な塩分をえらから放出。
   少量の等張尿(よって海水魚の腎機能は低い)を放出。

・ 内分泌系による体液の浸透圧調節…

哺乳類の体液浸透圧を調節するのは 2つのホルモン
(ホルモン…  血液を介して運ばれる情報報伝達物質)

  1. 浸透圧の上昇 ⇒ 脳下垂体後葉からバソプレシンが分泌 ⇒ 細尿管での水の再吸収

  2. 水分が過剰 ⇒ 副腎皮質から鉱質コルチコイドが分泌 ⇒ 細尿管でのイオン類と水の再吸収

・ 窒素排出物の進化(生息環境に応じた窒素排准物)

 
陸上進出以前:
 体外に老廃物としてアンモニア「NH3」(神経毒性を持つ)を拡散・放出

陸上進出後
 水の節約が必要 ⇒ 老廃物を濃縮して排出(尿) ⇒ 窒素排出物を低毒性化 (濃縮可能)

アンモニア: 周囲に大量の水が存在する環境 
 ⇒ 水生の無脊椎動物や魚類
尿素: アンモニアより毒性低下 
 ⇒ 軟骨魚類(サメ・エイ)、両生類の成体、 哺乳類
尿酸: 固体で水に溶けにくく浸透圧に影響しない 
 ⇒ 鳥類、爬虫類のうちヘビ・トカゲ、昆虫類

ニワトリ胚における窒素排出形態は、
発生の進行に伴ってアンモニア⇒ 尿素⇒ 尿酸と変化する。
 ⇒ 個体発生は系統発生を繰り返す「ヘッケルの発生反復説


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