スピリチュアル•ホワイト

ゲームの起動音。

「ようこそ。オアシスへ」

頭の中にサウンドガイドの声が響く。

歩行している中、現実は仮想現実へと入れ替わる。

「私の名前はイーティア。この世界を案内するAIです。あなたのお名前は?」

「ユーザー名を入力してください。」

コマンドが出現する。

「‥ホワイト」

ホワイトは入力を完了する。

「おめでとうございます。本日から貴方様はオアシスの住人です。」

賑やかな街の光景。

「この世界はアバターの世界。新しい自分をみつける為に生まれた世界です。」

再びコマンドが出現する。

「まずはレベリングから始めてはいかがでしょうか。財産、及びステータスは全て”レベル”によって変化いたします。おすすめはエリア•オリジナルクエストです」

プツンという音がした。

「いなくなっちゃった‥」

困った表情のホワイトは、コマンドに表示されていたマップを頼りに行動する。

【オリジナルクエスト】

「レベリング」や「スキル」獲得を目的とした、擬似ダンジョン体験所。
そこにはホログラムでできたゼリーのようなモンスターがたくさんいた。

「可愛い‥」

少し触れてみたホワイト。

「ダメージを確認。威力計算を行います。」

ゼリーが突然喋りコマンドが出現する。

「おめでとうございます。貴方様のレベルが0から1へ上がりました。」

驚いた表情のホワイト。

「同時にスキル”ライト”を獲得いたしました。」

ホワイトは疑問を隠せない。

「スキル‥?」

ゼリーは優しく応えた。

「スキルとは上昇したレベルに応じて獲得できる、言わば「特技」です。個々様々なスキルがあり、コレクション、コンテスト、闘技などで使われます。」

ホワイトは頷く。

「ゲームの世界に迷い込んだみたい‥」

ホワイトはゼリーを突き連打する日々を送っていた。

「ようやくレベル10‥」

ゼリーから報酬をもらう。

「木の棒‥?」

ホワイトは木の棒を手に入れた。

すると岩にクリスタルがついたモンスターが出現する。

「‥‥‥‥」

クリスタルのモンスターはずっとこちらを見ている。

「てい!」

木の棒で叩いてみた。

「ダメージを確認。威力計算を行います。」

クリスタルのモンスターが突然喋りコマンドが出現する。

「おめでとうございます。貴方様のレベルが10から15へ上がりました。」

クリスタルのモンスターから報酬をもらう。

「木の棒‥?」

ホワイトは少し笑った。

「貴方様にお供いたします。」

クリスタルのモンスターが友達になりたそうに凝視している。

「今日から君の名前はキッズゴーレムだよ」

偶然にもレアモンスターを仲間にしたホワイトのチート生活が始まる。

キッズゴーレムを2本の木の棒でドラム式に叩き、レベリングを行うホワイトはレベル30に到達するのにそんなに時間は掛からなかった。

【アバター専門店•ギルドショップ】

オアシスの街で有名なアバター専門店。
ここでは装備となるアバターとクエストを購入することができる。

「これ買います!」

クリスタルシリーズ(レベル10から装備可能)
防御に優れており、ユーザーのスキルの威力を半減する。レアな素材でできている。

プリンセスシリーズ(レベル20から装備可能)
威力に優れており、1度だけユーザーのスキルの威力を最大にする。とてもお高い。

「これも買います!」

【星降る夜に】クエストレベル30
荒野に星が降って来た。大きな岩にはキラキラ光るもの。お宝かもしれない。でもモンスターがいて近づけない。この謎に包まれた岩を探索して欲しい。購入•とてもお高い。報酬•とてもお高い。

荒野に来たホワイト

モンスターが現れた。

【グランドドラゴン】レベル18
大地を駆け回るドラゴン。温厚だが縄張り意識が高い。群れで行動する。地面をよく食べている。

「なんだか甘い香りがする‥」

グランドドラゴンがこちらへ気づいた。

土を踏む。

「この土、柔らかい‥泥?」

グランドドラゴンが怒り出し、集団で襲ってきた。

「戦うしかないか‥プリンセスシリーズ!」

ドレス姿へ変身したホワイト。

「ライト!!」

スキル名を叫んだ瞬間、高エネルギー弾のようなものがグランドドラゴンの群を一掃する。

グランドドラゴンの群を倒したホワイトはレベルが40へと上がった。

起き上がったグランドドラゴンの一体が悲しそうにこちらを見ている。

「もしかして‥」

土を舐めてみるホワイト。

「チョコだ‥」

手ですくうホワイト。

チョコ材を手に入れた。

「あのドラゴンはチョコを食べていたんだね。」

手に入れたチョコ材をグランドドラゴンへ渡す。

グランドドラゴンが仲間になった。

荒野の先に大きな岩が見えた。

「岩と言うよりこれって‥」

【隕石】
星から降ってきたとされるホログラムの大きな鉱石。

触ってみるホワイト。

鉱石は小さくなる。

スターライト鉱石を手に入れた。

「綺麗な石‥」

【エリア•フィアの鍛冶屋】

ホワイトはスターライト鉱石を加工するため、装備を製造しているフィアの鍛冶屋へと訪れていた。

「フィア•エリーゼは不在?ふざけるな!!こっちは客で、装備を作りに来たんだ!!鍛冶屋がいなくてどうするよ!!」

客と思われる人物の怒号が聞こえる。

「あの‥」

ホワイトは客に話かける。

「何だお前‥誰かは知らないが、この俺様に用があるのか?俺はレベル22のエリートだぞ!!」

客はホワイトのレベルを確認する。

「レベル40‥」

辺りもざわつく。

「ギルドにも所属してない‥何だこいつ!!どんなチートを使った!!」

「レベル40‥」

少女が1人ホワイトに声をかける。

「ふーん、まだオアシスに来て2週間なんだ。それでレベル40。」

少女はホワイトに興味津々で近づく。

「名前はホワイトって言うだね。私はフィア•エリーゼ。ここの鍛冶屋のオーナーを務めてるんだ。」

客が沈黙する

「レベル100‥」

ホワイトも少し驚いた表情をしている。

「レベル100と会うのは初めてかな?ウチはオアシスに何年もいるから、必然とレベルがカンストしてしまったんだよ。」

「ウチは気に入った客にしか装備を打たないよ。まずそこの客は礼儀から出直してきてね。」

怒号を放っていた客は腰を落とす。

「さてと!暇を持て余したウチの相手は誰?」

周りを見渡すフィアはホワイトと目が合う。

「レベル40の君か‥ここのルールは知ってる?」

首を横に振るホワイト。

「なら説明するね!ここのルールは至ってシンプル。ウチに気に入られること」

ホワイトは頷く。

「簡単な話、ウチとバトろうってわけ。」

微笑むフィア。

「レベル100と‥?」

辺りの客がざわつく。

「お前、何もわかってないのか。フィア様は勝てない闘技をお誘いになっている。」

ホワイトは疑問を隠せない。

「闘技も分かってないみたいだな。闘技とは1対1のオープン戦。お互いのステータスを見せ合い、値の低いものが敗者となる」

ホワイトは疑問を隠せない。

「つまりだ!!フィア様は装備を作る気はないんだよ!!」

ホワイトは悲しげな表情をした。

「そう、ウチは負けない。ステータス、つまり能力の値に関してはカンストしてる。だから100レベルなんだ。」

ホワイトは自身の置かれてる立場を理解した。

「君たちは何も分かってないよ、装備を作るには素材を理解しないといけない。練磨と鍛錬の先に技術を振るっていいのは自分だけさ。ウチは自分の為にしか装備を造らない。」

ホワイトは涙をこらえる。

「さぁ、勝負だよホワイトちゃん。」

お互いのコマンドが出現し、ステータスがオープンする。

【フィア•エリーゼ】
999  999  999
999  999  999
999  999  999

【ホワイト】



フィアは驚いた表情をしている。

「ステータスが表記されていない‥」

ホワイトは泣きそうな表情をしている。

「ステータスなし」

フィアは驚いた表情を隠せない。

「つまり、どういうことだ、考えろウチ!
ステータスなしって今まで見たことがない」

ホワイトは変わらず涙目だ。

「カンストを超えたカンスト‥」

「表記できないステータス」

「オアシスのエラー」

フィアは涙を浮かべる。

「負けた‥レベル100どころじゃない。レベル40って‥」

「戦いたくない‥恐いよ‥」

「この子、レベル100を超えた世界にいる」

凍りついた空気から数分が過る。

「君、一体何者なの‥?」

ホワイトはまだ涙目だ。

「口数が少ない子。君が何者なのか分からないけど、約束は約束。装備、作るよ」

動揺から少し落ち着いたフィアは少し嬉しそうに語った。

「君の求めてる装備は何?」

ホワイトは状況が飲み込めないまま
スターライト鉱石をフィアに見せた。

「もしかしてあのクエストを‥」

「君が何者かよく分かった気がする」

フィアは涙を浮かべながらホワイトの手を取る。

「私の夢だった、スターライトシリーズがようやく造れるんだ。」

ホワイトは何が起こったか分からないまま、鍛冶屋を後にする。

フィアには鍛冶屋の両親がいた。
オアシスのサービスが開始された頃、
まだ小さかったフィアは両親の後を追うことで精一杯だった。

両親はよくオアシスのお伽話を聞かせてくれた。
「世界がまだ暗黒に満ちていたころ、白き少女は邪悪な星屑を打ち滅ぼさん。そして囚われた世界は青と白の大空へとはばたくのでした」

「このエピローグが好きで、いつも夜になると母に聞かせてもらってた」

「でもね、両親は最後のクエストに行ったきり帰ってこなかった‥」

「ウチ、あの子に託したくなった‥もしあの子なら世界を救ってくれるって」

後日、フィアの元へと訪れるホワイト。

「完成したよ。お父さんのレシピで造った、フィア特製のスターライトシリーズ!」

スターライトシリーズ(レベル50から装備可能)
魔力に優れており、2つのスキルが備わっている。スキル:ホーリー。スキル:プラネット。

ホーリー
最高レベルのスキル「ホーリー」は、純粋な聖なる光を発することができます。この光は邪悪な存在に対して特に効果的であり、敵を浄化することができます。また、仲間の回復やパワーアップにも役立ちます。

プラネット
隕石からなるエネルギーを抽出し、魔力を上昇させます。強力な光のバリアを形成することができ、敵の攻撃や邪悪な力から仲間を守ることができます。

完成を喜ぶホワイト。

「君のステータスなら使いこなせるはずだけど、オアシスのエラーでレベル表記に達しないと装備ができないようだね。」

「レベル100を超えてる分、レベルが上がりにくくなっていると思うんだけど、下手したらオアシス中のクエストをクリアしてもスターライトシリーズは装備できないかも‥」

「そこのとこ何か対策はないの?」

ホワイトは得意げにして仲間を呼んだ。

「キッズゴーレムやーい」

フィアは驚いた。

「ホログラムは確かに仲間にできるシステムだけど、君の仲間って‥」

影からキッズゴーレムが現れる。

「クリスタルゴーレムじゃないか!オリジナルクエストのエリアで滅多にお目にかかれない!あの!」

「しかも仲間になってるということは‥天文学レベルの確率だよ!!」

「クリスタルゴーレムは経験値収集と言って、少量のダメージでも莫大な経験値をくれるんだ」

ホワイトは唖然としている。

「君のレベリング方法って‥」

木の棒でキッズゴーレムをドラム式に叩き、音を奏でるホワイト。

「一曲、弾き終わる頃には‥」

ホワイトのレベルが40から50へと上がった。

「君の事を、今日からチーターちゃんと呼ぶ事にするよ」

フィアは呆れた声を出した。

「チーターちゃんは、これからどうするのさ」

ホワイトは首を振る。

「次はここに行くといいよ。その名もコロッセオ。闘技を大義としたエンターテイメント集団の集まりさ」

「推薦状を書いてあるから、我皇ラルクという人物に会うといいよ。彼もレベル100。コロッセオの運営を任せられてる。」

「また会おうね。」

ホワイトは大きく頷いた。

ホワイトは「ステータスなし」、つまりレベル100以上の潜在能力を有していた。「最強」を超えるホワイトの物語はこれから始まる。















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