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非公式小説 仮面ライダー555×リバイス×BLACK SUN 第2話「邂逅」

「面白い……!」
 ローズオルフェノクは再び攻撃を仕掛けた。しかし、ファイズはその攻撃を見事にかわし、反撃に転じた。
「行くぜ!」
『Complete』
『Start up!』


 ファイズは腕のファイズアクセルに取り付けているミッションメモリをベルトに装填し、ファイズアクセルのボタンを押した。
 ファイズはアクセルフォームの速度を活かし、超高速で動き出した。
「この速度は……!」
 ローズオルフェノクは驚きながらも、反撃の準備を整えた。しかし、ファイズはその隙を与えず、連続攻撃を叩き込んだ。
「これで終わりだ!」
 ファイズはアクセルフォームの高速移動を活かし、強烈なキックを放った。その一撃がローズオルフェノクに直撃し、彼を大きく吹き飛ばした。
「ぐあああ!」
 ローズオルフェノクは叫び声を上げながら、地面に倒れ込んだ。
 「何が起こったんだ!?」
 ライブは目前の事象を脳で判断しきれずに困惑した。
「仮面ライダーファイズ アクセルフォーム。さすがの高速移動能力。Greatだね!」
 ジュウガは高揚しながらも、ファイズの機械性能を分析していた。この一言で、ライブはファイズが何をしたのか、ようやく理解するに至ったのだ。
『Reformation』


 ファイズは全身の装甲が展開状態から通常状態へと戻り、複眼の色も赤色から黄色へと戻っている。超高速移動の代償に10秒間だけの稼働に抑制されてしまう、アクセルフォームの時間制限が訪れたのだ。
「……ここは一時撤退としましょう。」
 ローズオルフェノクは体制を立て直し、素早く逃亡を図った。
「くそ、逃がしたか……。」
 そう言いながらファイズはファイズフォンをベルトから取り外し、変身を解除した。
「大丈夫か?」
 そうライブとジュウガに声をかける長髪の男、彼こそが仮面ライダーファイズこと、乾巧である。身の安全を確保できていることを把握したライブとジュウガも変身を解除する。
「ありがとうございます。おかげで助かりました。俺はブルーバードの五十嵐大二です。あなたは……?」
 感謝の意を伝えるとともに、身元を尋ねる大二。その問いに巧は答える。
「いぬ……」
「乾巧、仮面ライダーファイズだね。どうも、ジョージ・狩崎です。」
 巧の自己紹介に被せるように、狩崎は答える。過去に活躍した仮面ライダーと会えて、興奮が冷めない様子だ。
「お前、失礼な奴だな?」
 言葉を被せられたことに不服な様子の巧は、狩崎に多少の憤りを露見させる。
「失敬、興奮していたものでね。Be coolになるよ。あなたの活躍はよくお聞きしている。かつて、仮面ライダーファイズとして、世界をオルフェノクの脅威から守った救世主であると。立ち話もなんだ、私たちと共に、ブルーバードに来てもらえないかい?」
 狩崎は巧に提案した。巧は一瞬考え込んだが、状況を理解し、頷いた。
「わかった。オルフェノクの脅威を再び放っておくわけにはいかないからな。」
 大二も感謝の意を示しつつ、状況を説明するために口を開いた。
「ありがとうございます、乾さん。今、都内では人体灰化現象が広がり、それがスマートブレインに関連していると考えています。 先ほどのオルフェノクもおそらくその一環で……。」
「スマートブレイン……。」
 巧の表情が険しくなった。
「あの組織が再び動き出しているとはな。いいだろう、詳しい話はブルーバードで聞かせてもらおう。」
 大二と狩崎、そして巧は、ブルーバードへ帰還し、先の戦闘の記録を報告するため、特例会議を開いた。ブルーバード本部の会議室に入ると、チームのメンバーが揃っていた。大二は状況説明のため、資料を広げた。
「それでは、会議へ移る前に……。」
 そう言いながら、大二は目線を巧へと送る。ブルーバードの隊員たちも、見知らぬ男に困惑している様子であった。
「乾巧だ。」
 簡潔に自己紹介を終わらせる巧。そんな彼にすかさず狩崎が付け加える。
「彼は仮面ライダーとしてかつて戦った戦士だ。我々にとって、頼もしい戦力になることは期待できると思うよ。」
「ブルーバードの門田ヒロミだ。よろしく頼む。」
「同じく田淵竜彦だ。」
 ヒロミと竜彦は巧に挨拶をする。
「ああ。」
 だが、巧は不愛想に返事をした。
「なっ……。」
 ヒロミはそんな巧に困惑するが、彼の目に悪意がないことを感じとり、共闘への信頼と決意を固めた。
「自己紹介はこんなところとして、会議を始めようか。」
 狩崎は淡々とその場を仕切る。
「はい。今回の灰化現象は、これまでのパターンとは異なります。俺たちは直接、オルフェノクそのものと対峙しました。」
 大二は説明を始めた。
「何だと!?!?」
 これまで直面しなかった敵との対峙を聞き、ヒロミは声を上げる。
「はい。聞いてください。」
 冷静に大二は説明を続ける。
「そして、今回の被害者は“影山海月”さん。都内のIT企業に働く会社員で、この方も、スマートブレインへの出入りがあったと報告されています。」
「これで背景にはスマートブレインが関与していることはほぼ明白になった訳だ。」
 竜彦は大二の報告から分析する。
「ああ、俺もそう思うぜ。あいつら、胡散臭い連中であることは確かだからな。」
 巧も竜彦の意見に同調し、手元のコーヒーを飲もうと口に近づける。熱いのか中々飲めないようだ。
「ここからが本題です。」
 大二は資料をさらに広げ、次のスライドを映し出した。
「今回の被害者である影山さんの経歴と、スマートブレインへの出入り記録を詳細に調べました。」
 スライドには影山海月の写真とともに、彼女の経歴が記されていた。
「影山さんは、都内のIT企業でエンジニアとして働いていました。彼女がスマートブレインに出入りしていたのは、約1か月前からです。スマートブレインは新しいソフトウェア開発プロジェクトを進めており、影山さんもそのプロジェクトに関与していた可能性があります。」
「ソフトウェア開発プロジェクト……。」
 ヒロミは眉をひそめた。
「それがオルフェノクや灰化現象とどう関係しているんだ?」
「まだ全てはわかっていませんが、スマートブレインの技術がオルフェノクの一連の事件に寄与している可能性が高いです。」
 大二は続けた。
「そして、影山さんはその技術に触れたことで、何らかの形で灰化現象の被害に遭ったのではないかと考えています。」
「スマートブレインの技術か……。」
 巧は考え込んだ。
「奴らの技術は昔から怪しいものばかりだった。今回もその一環だとすると、面倒なことになるな。」
「そうだね。」
 狩崎は頷いた。そして大二は続ける。
「そこで、我々の次のステップとして、スマートブレインの内部調査が必要だと考えます。」
「内部調査……か。」
 竜彦は腕を組んで考え込んだ。
「だが、あそこに潜入するのは容易でない。高いセキュリティが施されているし、我々の動きを察知される可能性もある。」
「そのためには、内部に協力者を見つけるか、あるいは技術的な突破口を見つける必要があります。」
 大二は提案した。
「幸い、影山さんの同僚である渡辺愛萌さんという人物が、影山さんの行動に不審感を抱いていたとの情報を得ました。」
「渡辺……。」
 巧はコーヒーを再び飲もうとし、また熱さに顔をしかめた。
「その人物から情報を引き出すのが最初の一歩だな。」
「その通りだ。」
 狩崎は資料を片付けながら言った。
「我々の任務は、渡辺さんから情報を得て、スマートブレインの内部事情を掴むこと。さらに、オルフェノクの活動要因を突き止め、対策を講じることだ。」
「もう1つあるぜ。」
 巧は口をはさみ、続ける。
「さっきのオルフェノク、ローズオルフェノクこと村上は俺たちが以前倒したオルフェノクだ。なんで奴が復活していたのか。それも引っかかる。」
「何!?」
 大二は想定外の情報に驚きを隠し切れなかった。
「復活したオルフェノク……。」
 ヒロミも驚きの表情を浮かべた。
「奴がどうやって復活したのか、それもはっきりさせないとな。」
「ローズオルフェノクの復活にも、スマートブレインが関与している可能性が高い。」
 狩崎は冷静に分析した。
「彼らの技術が、死んだオルフェノクを再生させることができるのかもしれない。」
「そうなると、内部調査がますます重要になるな。」
 竜彦は真剣な表情で頷いた。
「渡辺愛萌さんから情報を引き出すことが、すべての鍵になる。」
「はい。」
 大二は決意を固めた。
「渡辺さんに接触し、スマートブレインの内部情報を得る。そして、ローズオルフェノクの復活の謎も解明する。」
「よし、それでは各自、任務の準備を進めよう。」
 狩崎はチームに指示を出した。
「ヒロミ、大二、そして巧。君たちは渡辺さんへの接触を担当する。竜彦、君にはスマートブレインの技術に関する過去の情報を整理してもらいたい。」
「了解した。」
 ヒロミは頷き、竜彦も同意の意を示した。
「任せとけ。」
 巧も自信満々に返答し、再び熱いコーヒーに挑戦しようとしたが、やはり熱くて顔をしかめた。
「それじゃ、会議はこれで終了だ。」
 大二は立ち上がり、資料をまとめた。
「みんな、気を引き締めて行きましょう。」
 会議が終わり、各自が任務に取り掛かる準備を始めた。竜彦は狩崎の指示に従い、スマートブレインの技術に関する過去の資料を整理し始めた。一方、ヒロミ、大二、巧は渡辺愛萌へ接触する計画を練り始めた。
「影山さんの行動に不審を抱いていたということは、渡辺さんも何か重要な情報を握っているかもしれないな。」
 ヒロミは慎重に話を進めた。
「接触の際には、できるだけ警戒心を持たせないようにしよう。」
「そうだな。」
 巧も同意した。
「無理に情報を引き出そうとすると、逆に警戒されてしまう可能性がある。」
 大二は真剣な表情で頷いた。
「まずは彼女の勤務先に行ってみるのが一番だな。」
 ヒロミは提案した。
「会社の近くで待機して、退社するタイミングで声をかけるのが自然だろう。」
「そうだな、直接会社に乗り込むのはリスクが高すぎる。」
 大二も同意した。
「勤務先の周辺で待機しよう。巧さん、お願いできますか?」
「ああ。」
 巧は自信を持って頷いた。
「ただし、俺が接触するときは無理に注意を引かないようにするからな。」
「了解した。」
 ヒロミは確認した。
「それじゃあ、作戦はこうだ。大二が会社の出入り口を見張る。巧は近くで様子を見て、俺はもう一方の出口を監視する。誰でもいい。彼女が出てきたら、自然に接触して話を聞くんだ。」
 作戦を確認した三人は、ブルーバードの車両で渡辺愛萌の勤務先へと向かった。会社の近くに車を停め、それぞれの位置に分かれて待機した。

 しばらく待っていると、勤務先の建物から一人の茶髪の女性が出てくるのが見えた。彼女は渡辺愛萌だった。
「大二、ヒロミ、彼女が出てきた。」
 巧が無線で知らせた。
「了解。」
 大二は無線で返答し、彼女に向かって歩き出した。
「渡辺さんですか?」
 渡辺愛萌は驚いた表情で振り向いた。
「はい、そうですが、どなたですか?」
「俺はブルーバードの一員です。実は、あなたに少しお話を伺いたくて……。」
 彼女は眉をひそめ、警戒の色を強めた。
「ブルーバード?何故そんな組織が私に?何の話ですか?」
「あなたの同僚、影山海月さんについてです。」
 大二は慎重に言葉を選びながら説明した。
「単刀直入に言います。彼女がスマートブレインに関わっていたことについて、お話を伺いたいんです。」
「影山さんがスマートブレインに?」
 渡辺は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに警戒心を取り戻した。
「あなたたちが一体何を目的にしているのか、私は知りませんが、そんな話に巻き込まれるつもりはありません。」
「待ってください。」
 大二は落ち着いて言った。
「私たちは影山さんいや、平和のためにも、真実を知りたいんです。彼女が最近どのような行動を取っていたか、何か不審な点があったのか教えていただけませんか?」
「いいえ、本当に話すことは何もありません。」
 渡辺は冷たく言い放ち、その場を立ち去ろうとした。
 その瞬間、ヒロミが前に進み出た。
「俺たちもあなたと同じで、影山さんのことを心配しています。彼女が関わっているプロジェクトに何か危険があるのではないかと懸念しています。」
 渡辺は立ち止まり、ヒロミをじっと見つめた。
「それでも、私は信じられません。あなたたちが本当に彼女のために動いているのかどうかもわからない。」
 ヒロミも一歩前に出た。
「渡辺さん、我々があなたに嘘をついても何の利益もありません。影山さんが危険な目に遭い、その被害はそこに留まるとは限らない。俺たちは平和を取り戻したい。どうか、少しだけ話を聞かせてください。」
 渡辺は再び考え込んだ。彼らの真剣な表情と態度に、少しだけ心を開いた様子だった。
「もし話すとしても、ここではなく、もう少し落ち着ける場所でお願いします。」
「わかりました。」
 大二は頷いた。
「近くのカフェに行きましょう。」
 四人は近くのカフェに入り、静かな一角に座った。このカフェは仕切りも厚く、店内もまばらに人がいるくらいなので、証言を聞くにはうってつけの場所だ。渡辺はまだ警戒心を解かず、緊張した表情で彼らを見つめていた。
「渡辺さん、影山さんがスマートブレインに関わっていたことはご存知ですよね?」
 大二が慎重に切り出した。
「ええ、それは知っています。でも、具体的に何をしていたのかは私にはわかりません。彼女はあまりその話をしなかったので……。」
 渡辺は少し困惑した表情で答えた。
「彼女の行動に不審な点はありましたか?」
 ヒロミが尋ねた。
「不審な点ですか……。」
 渡辺は考え込んだ。
「影山さんはいつも真面目で、仕事熱心でした。でも、最近は何かに怯えているような様子が見受けられました。まるで何かを知ってしまったかのように……。」
「何かを知った?」
 巧が興味深そうに尋ねた。
「それについて彼女は何か?」
「いいえ、具体的なことは何も。ただ、ある日突然会社に来なくなったんです。私は何が起こったのか全くわかりません。」
 渡辺は不安げに言った。
「彼女が怯えていた理由について心当たりはありますか?」
 大二がさらに質問した。
「わかりません。本当に何も。ただ、彼女が関わっていたことが普通じゃないことに気付いたのかもしれません。でも、私はその内容までは全く知らないんです。」
 渡辺は頭を振りながら答えた。
「わかりました。ほかに変わった様子はありませんでしたか?」
 ヒロミが誠意を込めて頼んだ。
 渡辺はしばらく考え込んだ後、ようやく口を開いた。
「影山さんが何かに気付いていたとすれば、それはスマートブレインの秘密かもしれません。彼女が最近、頻繁に調査していたデータベースがあったんです。それが関係しているかもしれません。」
「そのデータベースについて詳しく教えていただけますか?」
 ヒロミが質問した。
「私は詳しいことまでは知りません。ただ、影山さんがそれを調べていたことだけは確かです。もし彼女が何かを見つけたのだとすれば、それが彼女の身に危険を招いたのかもしれません。」
 渡辺は不安そうに答えた。
「ありがとうございます、渡辺さん。」
 大二は感謝の意を示した。
「これからも何か気づいたことがあれば、ぜひ教えてください。」
「わかりました。影山さんや他の被害者のためにも、真実を突き止めてください。」
 渡辺は小さく頷き、少し安心した表情を浮かべた。
 三人はカフェを後にし、ブルーバード本部へと戻った。スマートブレインの謎を解明するための新たな手がかりを得た彼らは、次のステップに進む準備を整えた。
「竜彦、狩崎、今戻った。」
 ヒロミは竜彦や狩崎に声をかける。
「ああ、ご苦労、ヒロミ。こちらも夏木探偵事務所の協力を仰ぎながら、スマートブレインの過去のデータベースの解析を行っていたところだよ。それで、何か収穫は?」
 狩崎はヒロミに問いかける。
「ああ。渡辺愛萌に接触した。彼女の話では、影山海月はある一定の時期から何かを知ってしまったかのようにひどく怯えている様子だったらしい。」
 ヒロミは続けた。
「さらに、影山さんが頻繁に利用していたデータベースがあるらしいです。詳しい内容は不明ですが、それが彼女の身に危険を招いた可能性が高い……。」
 大二が付け加えた。
「データベースか……。それが重要な手がかりになるかもしれない。」
 狩崎は腕を組みながら考え込んだ。
「ふむ。夏木探偵事務所にも再度協力を仰いで、そのデータベースの詳細を調べる必要があるようだね。」
「そうだな。影山さんが何を見つけたのか、それを知ることでスマートブレインの真の目的が明らかになるかもしれない。」
 竜彦も同意した。
「だが狩崎、そのデータベースの解析、夏木探偵事務所に任せていいのか?」
 竜彦が尋ねた。
「もちろんだ。彼らはこの手の調査には慣れている。なんて言ったって彼らは今や私たちの立派な仲間だよ。我々もその情報をもとに次の手を考えよう。」
 狩崎は自信を持って答えた。
「じゃあ、俺たちはどうする?」
 ヒロミが尋ねた。
「まずはそのデータベースにアクセスできる方法を見つけましょう。そして、影山さんが見つけた情報を手に入れることが最優先です。」
 大二が指示を出した。
「了解だ、大二。」
 ヒロミは頷いた。
「さらに影山さんの生前の行動をもっと詳しく調べる必要があるな。彼女が何を見つけたのか、その手がかりがどこかにあるのかもしれない。」
 竜彦が言った。
「はい。彼女の周りに何か手がかりが残っているかもしれない。」
 大二は頷いた。
 その後、ブルーバードと巧は再びそれぞれの任務に取り掛かり、スマートブレインの謎を解明するために全力を尽くした。狩崎と竜彦は夏木探偵事務所と協力し、影山さんが調査していたデータベースの詳細を探る一方、ヒロミと巧は影山の生前の行動やその周辺を調査し、新たな手がかりを見つけるために動き出した。

 数日後、夏木探偵事務所からの連絡が入った。影山が調査していたデータベースに関する重要な情報が見つかったという報告だった。
「花さん!影山が調査したデータに関する情報が見つかったって本当ですか!」
 大二は高揚しながら夏木探偵事務所のドアを開け、中央に座る小柄な女性へ話しかけた。
「ええ。彼女の遺留品の中にあったスマートフォンを使って、サーバーへの接続履歴をあさったの。しっかり突き止めたわよ。」
 そう報告する女性こそ、この夏木探偵事務所の所長を務める夏木花である。探偵事務所といってもブルーバードの文書室を彼女が拝借しているだけなのだが。花はかつてデッドマンズの悪の女王「アギレラ」として世界を脅かした経歴を持つ。その贖罪のためにも自身の身をブルーバードに置き、日夜平和のために戦っているのである。
「しっかし、あの大企業スマートブレインにそんな裏があったなんて。驚きですね!花さん!」
 お茶を入れながら花にそう告げるこの青年は玉置豪。彼も花と同じくデッドマンズに所属していたが、彼も贖罪のため、ブルーバードに身を置き、働いているのだ。
「これが、影山さんが調査していたデータベースの一部よ。」
 花は手元の資料を見せながら説明した。
「このデータベースには、スマートブレインの内部プロジェクトに関する情報が含まれていたわ。」

「なるほど。影山さんがこのデータにアクセスしたことで、何か重大な秘密を知ったのかもしれない。」
 大二は資料を見ながら言った。
「ここに、オルフェノクに関する情報が含まれていたわ。加えて、人体の生成技術に関しても少しだけ記載があった。」
 花は指差しながら続けた。
「影山さんが知ったのは、この技術に関する何かかもしれないわね。」
「それなら、彼女が怯えていた理由も納得がいく。」
 大二は頷いた。
「ちょっと待って、この生成技術に関する情報どこかで……。」
 大二の脳裏に、生成技術と聞いて、よぎるものがあった。死んだ人間の体をクローンとして生成する「ヒューマンミュータント」。実際に過去に市村景孝はヒューマンミュータントの技術を応用してテロ組織「アリコーン」を率いていた。大二は不安な表情を浮かべながら、考えを整理しようとした。
「まさか、スマートブレインがヒューマンミュータント技術を……でもなんで……。」
 大二はつぶやいた。それもそのはずだ。「ヒューマンミュータント」に関する情報はブルーバードのみが保有するデータであり、スマートブレインが持っているはずがないからだ。
「その可能性は高いわね。」
 花が冷静に答えた。
「影山さんが見つけた情報が、オルフェノクの再生や人体生成技術に関するものであれば、彼女が危険にさらされるのも無理はないわ。ただ、なんでスマートブレインがこの情報を持っていたのか。まだそこは判明していないけどもね。」
「ヒューマンミュータントの技術が復活するなんて……。これは厄介ですね。」
 玉置はお茶を持ってきながら言った。
「影山さんが調べていたデータベースの内容をもっと詳しく調べる必要がある。スマートブレインが何を企んでいるのか、そして何故そのデータを保有していたのか。そこを明らかにしなければ。」
 大二は決意を固めた。
「そのためには、データベースへの完全なアクセスが必要ね。」
 花が言った。
「私たちの調査だけでは限界がある。スマートブレインの内部に潜入して、直接データを入手する必要があるわ。」
「潜入か……。それはリスクが高いな。」
 ヒロミが不安げに言った。
「でも、他に方法はない。」
 竜彦が強い意志を見せた。
「我々の手でスマートブレインの陰謀を暴くためには、これしかないだろう。」
「ああ。」
 巧が同意した。

 スマートブレイン――その名は、最先端の技術と革新的な製品で知られる巨大企業だ。秘密裏にファイズの技術を始めとしたライダーズギアの製造を行い、さらに落命者の蘇生といった技術や自社製の人工衛星も保有しているなど、その資金の出所なども含め知名度の割には会社の実態はほとんど知られていない。
 このような企業に潜入するには、大二たちもより一層の作戦を立案することが必要とされた。

 数日後、ブルーバード本部で、ヒロミ、大二、巧、竜彦、狩崎は、早速集まって作戦会議を開いた。彼らは影山海月が調べていたデータベースに関する情報を手に入れるため、慎重な計画を立てる必要があった。
「潜入チームを編成しましょう。」
 大二が提案した。
「ブルーバードが直接潜入するのはリスクが高い。でも、スマートブレインの内部または関係者に協力者を見つけるか、あるいは合法的な手段でアクセスする方法を探すべきだ。」
 ヒロミが冷静に意見を述べた。
「内部協力者を見つけるか……。難しいかもしれないが、渡辺さんが協力してくれるかもしれない。」
 竜彦が言った。
「そうだな。再度彼女に接触して、スマートブレインの内部情報を得る方法を探すのが、得策かもしれないな。」
 巧が同意した。
「Hey, 君はファイズの技術を利用しているのだろう?スマートブレインについて何か知らないのかい?」
 狩崎は巧に問いかける。
「悪いな。俺もこのベルトは元はと言えば貰い物みたいなもんだ。真理から渡されて……そうだ、真理だ!」
 巧はある人物のことを思い出し、咄嗟に声を上げる。
「Who?」
「あいつなら……!」
 巧は興奮し、狩崎の問いかけにも応じない。
「ちょっと、巧さん!落ち着いてください!」
 大二は巧へ声をかける。
「園田真理なら、スマートブレインについて何か知っているかもしれない。」
 巧が息を整えながら言った。
「園田真理?」
 大二と始めとしたブルーバードの面々は、新たな人物の名前が登場し、頭に疑問符を浮かべていた。巧は大二たちに、「園田真理」と、真理が父親のように慕っていた「花形」について説明し始めた。園田真理は、美容師を志す女性であり、流星塾で花形に育てられたという過去を持つ。花形は流星塾の創設者であり、スマートブレインの元社長だ。彼は子供たちを引き取り、愛情を持って育てる一方で、冷酷な実験も行っていた。花形からは多くの情報が得られる可能性があり、真理がそれを知っている可能性が高いと巧は説明した。
「なるほど。彼女が花形から情報を得ている可能性が高いわけですね。」
 大二が納得した。
「そうだ。花形は流星塾の創設者であり、スマートブレインの元社長らしいからな。真理と協力すれば操作も容易になるはずだ。」
 巧が力強く言った。
「それなら、真理さんに接触して、彼女から情報を得るのが最善策だな。」
 ヒロミが提案した。
「さっそく彼女に連絡を取ろう。」
 狩崎が言った。
「俺が会ってくる。その方が早いだろ。」
 巧はすぐに真理に連絡を取り、彼女と会う約束を取り付けた。真理は巧の突然の連絡に驚きつつも、重要な話であることを察してすぐに会うことに同意した。
「真理、すまんな。」
 巧が真理に会うと、どこか落ち着きを感じながら言った。
「巧、どうしたの?急に連絡してくるなんて。」
 真理が心配そうに尋ねた。
「実は、スマートブレインについて調べているんだ。お前の協力が必要だ。」
 巧が真剣な表情で答えた。
「スマートブレイン……分かった。何があったのか教えて。」
 真理が真剣な表情で言った。
 巧はこれまでの経緯と、影山海月が調べていたデータベースに関する情報を真理に説明した。真理は巧の話を聞き、深くうなずいた。
「私も昔、いくつか情報を聞いたことがあるわ。スマートブレインの裏には、確かに何か大きな陰謀が存在する噂を。」
 真理が静かに言った。
「どうにかしてスマートブレインにコンタクトは取れないのか?」
 巧が頼んだ。
「忘れたの?巧。私たちはこの前の一件以来、スマートブレインから追われるリスクを抱えている。それに、善良なオルフェノクの庇護も私たちの使命でしょ?」
 巧や真理は、つい先日、スマートブレインの北崎や胡桃玲奈と対峙したばかりである。新社長が就任したらしいが、2人も全貌は把握していない。
「ああ、そうだったな……。」
 巧はため息交じりに呟く。巧は真理を連れて、ブルーバードに帰還し、隊員に真理を紹介した。加えてスマートブレインにコンタクトを取ることが難しいことも説明した。
「やっぱり、影山さんの勤めていた会社に勤務している、渡辺さんを頼るのがベストかもしれないな。」
 竜彦はそう述べる。
 巧たちは渡辺愛萌に接触することを決め、彼女に連絡を取ることにした。渡辺愛萌は、影山海月の同僚であり、スマートブレインに勤務している。巧たちは彼女からの協力を得て、スマートブレインへのアクセスを試みることを計画した。

 

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