この流れでスケベですか?!

ついこのあいだ、7月も終わるんだなぁと思っていると、ふと「はじめて買ったCD」の思い出がよみがえった。
ちょうどこの時期、7月の終わりのことだった。

私がはじめて買ったCDは、ゆずだった。


いきなり深淵を覗く

さかのぼること14年前、2009年3月。
中学を卒業したばかりの私は、YouTubeで「夏色」を聴きそのハモリの良さなどにすっかりハマってしまった。

他の曲も聴いてみたくなり、どの曲から開拓していこうか迷った私は、Google先生に「ゆず マイナー 人気曲」で聞いてみた。
新参者だけどいきなりコアな裏メニューを狙っていったのだ。

すると、「なにもない」という曲が良いぞ、という意見が散見されたのでYouTubeで聴きに行った。

その曲は、どこまでも灰色で、厚い雲に覆われているような、行き詰まりを綴ったものだった。でも絶望とまではいかない絶妙な塩梅。
あまりに哀愁にあふれたメロディーに切ないハイトーン。

衝撃を受けた。ゆずってこんな曲も歌うんだ!!と思った。
ゆずといえば「栄光の架橋」のような力強い応援歌とか「夏色」のような爽やかな曲を歌う、そういうパブリックイメージが強い。

「なにもない」を聴いて、そんなイメージだけでは語れない奥行きの深さを感じた。
彼らの本質はもっと別のところにある、と思った。
この人たちのこと、もっと知りたい!!!

そんな思いを起点に過去曲をあさっていくと、
底抜けに明るいノリとメロディーで淡い失恋を歌う「始発列車」
人生哲学のような「飛べない鳥」
群衆を蹴散らすように決意表明を叫ぶ、彼らの原点そのままである「てっぺん」
などなど、出るわ出るわバラエティー豊かな曲たち。 

ふーん……知れば知るほど、おもしれー男……。

私はここから10年に渡り、コアファンを極めていくことになる。


新曲にワクワクする日々

2009年4月。
「逢いたい」がリリースされた。 

「逢いたい」ジャケット写真


この曲は、北川さんの亡き父への思いを歌ったバラードである。制作にあたってノートを3,4冊費やし、作詞している姿がボロボロで今にも死にそうだったことから、そのノートは周りからデスノートと呼ばれたそうだ。まさに魂の一曲。

「逢いたい」アーティスト写真

(これまたPVが美しい世界観で素敵)

魂を削って生み出された渾身の一曲の次は、果たしてどんな曲が放たれるのか。
一体次はどんな曲なんだろうと考えると、全然想像がつかなくてワクワクが止まらなかった。
毎日過去曲を開拓してすっかりファンとなった私は、つぎ新曲が出たら絶対買おうと心に決めていた。

全私が震撼した新曲

2009年6月。 
呼吸をするかのようにパソコンでゆずofficial siteを見ていると、新曲情報が更新されていた。

「夏のエッチな衝撃ポップチューン!」というキャッチコピーとともに、ノーパン美尻丸出しお姉さんの画像が目に飛び込んできた。



?!??!!?!!??

「どうしちゃったの?!」という激しい困惑。
トチ狂ったのかと思った。
この展開、誰が予想できただろうか。
ファン歴3ヶ月も満たないタイミングで、ゆずの方向性を心配した。

ジャケットのインパクトが大きいので他の情報が入りにくいところだが、タイトルは「いちご」だった。

どうしよう、次の新曲買おうと思ってたけど、このジャケット買うの恥ずかしいんだけど…!!今回の購入は見送るか……?

でも完全限定生産!
特殊仕様のカラーケースパッケージ!

うわあ〜買うしかねえ〜 

既に私は沼に全浸かりだったので、もう後には引けなかった。
すぐさま最寄りの紀伊國屋で予約をした。
人生初購入CDが、ノーパン美尻丸出しお姉さんジャケだなんて、思いもしなかった。

でも、ジャケットのお姉さんがノーパン美尻丸出しだとしても、せいぜい歌詞は微エロだろうと思っていた。

2009年7月末。
羞恥心にまみれながらCDをフライングゲットして歌詞カードを読む。

……思ってたより全然エロだ!!!
スケベメタファーをビシバシ感じた。
「前も後ろも上が下にわかんない程に〜」のくだりなんか「やってくれたな」と思った。

今の私だったら、積み上げてきたスケベ知識をもとに「ふーん、エッチじゃん」と思いながら「真っ白なミルクに溺れたい……?ふーん……へえ〜…?」なんてニヤニヤできるが、当時少女漫画仕込みのピュア培養だった私は、この振り切りっぷりに「はわわ……💦」となってしまった。

しかもCDを取り出すと、CDの下から更にセクシーなポージングをしたノーパン美尻丸出しお姉さんが登場するのだ。
こんなスケベな仕掛けを仕込みやがって!

私はこのCDを、エロ本を隠すようにしまった。

どういう経緯でこの曲が誕生したのだろうとMステの出演を見ていたら、北川さんが「ツアーの移動で特急あずさに乗ってたらムラムラしちゃって……」と答えていた。笑ってしまった。

「いちご」アーティスト写真。
どんな感情の顔?

14年越しに聴いて

この曲をつくったときのゆずは当時32歳。
私はもうすぐ30歳。
14年の月日を経て当時の彼らに近づいた。 

今聴いて改めて思うのは、一見イロモノ感がありながらも、そこには彼らのキャリアの粋(すい)が凝縮されているということだ。

こんなに歌詞がエロなのに、2人が歌うと爽やかなのは、絶妙なラインのソングライティングと、練り上げられたハモリ芸にあり。

若い世代のコメントを見ていると「昔はいちごミルクをつくる歌かいちごジュースを飲む歌だと思っていた」というものが多い。
北川さんがサビ部分はそう聴けるようつくったと言っていたので、計算通りなのである。

ハモリ芸的観点においても、岩沢さんがインタビューで

「北川さんが自由に歌っているので、僕はその分うまく寄り添うように歌っている。ふざけているようだがすごく真面目に作っている。」

と語っており、たしかにこの曲が持つ抜けるような爽快感は、計算されたハモリ芸によるものだなと思えるのだ。

よく耳を澄ますと、おもちゃ箱をひっくり返したような効果音が随所に散りばめられている。
2番の歌詞の「波の彼方」の後にちゃんと波の音が聞こえたりもする。 
聴き心地として、ポップでチャーミングでキュートだし中毒性もあるので、気づけば繰り返し聴いてしまう。  

ところで、この「いちご」のあとに出した新曲だが、

「虹」をリリースしたのである。

……とんっでもねえ………………。

なんか、もう誰も何も敵わない。
このあとにこれですか?卒倒しそう。
他の追随を許さないじゃん。策士じゃん。空恐ろしいわ…。

この年はゆず史上屈指の振り幅であった。
この一連のリリースで、高度な緊張と緩和を交互に体感した。

「虹」アーティスト写真。
「いちご」の謎アー写を経由すると安心した。


ゆずの「いちご」、この夏ぜひおすすめしたい曲だ。
丸14年経っても全く色褪せない、大人の全力で真面目な悪ふざけ。
災害級の猛暑と連日報道されまくってるこの夏。
爽やかなハモリが炸裂する、夏のエッチな衝撃ポップチューン。ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか。

【余談】

このCDはエロ本のように隠していたのだが、ある日母が平然と車で聴いていた。

ちょっと〜〜〜!!!!勝手に持ち出さないでよ〜〜〜!!!

母はこの曲をいたく気に入りヘビロテしていた。

結局親子で「いちご」、聴きまくりました。

そんなわけで、私の人生における最初で最後のエロ本(CD)隠しは失敗に終わったのである。


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