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かわいい子は川にいれろ

一昨日、シェルパ斉藤さんのところ(TEAM SHERPA)に久かたぶりにお邪魔した。カフェのワンプレート「野菜皿」とニャンズが目当てだった。連休最終日だから八ヶ岳帰りのヒトたちもいて、「川で待ってて」と奥様の京子さんががおっしゃる。となりの小川におりていくと、「サンダル履いて来ればよかったな」と言いながら、間髪入れず娘はスニーカーとソックスをあっという間に脱いで、ずぶずぶ川に入った。そういうものだと思っているのだ。川が目の前にあれば入る。それ以外の選択肢はない。上流に生活排水がそれほど流れ込まないのか、川の生き物は存外に豊かで、石を裏返すとツガニたちがはいだしてきた。「すごいカニ密度ね」というと、「川エビもハヤもいるよ」と奥様。ホタルの幼虫が食べるカワニナも、でっかいのがたくさんいた。

 福島にいた頃は、いわきの北に流れる大久川でよく川遊びをしていた。小さな川なのにアユも上ったし、ヤマメも雑魚もたくさんいて、子どもの川遊びのために流れているような川だった。息子は竿を出すが私と娘はもっぱら「ガザガザ」に専念。川べりの草の下に魚あみをつっこんでガサガサっとやって、草の下に潜んでいるドジョウやエビや水生昆虫なんかをすくっては飼育ケースに入れて観察したり、飼ったり、ときには食べたり。それも堂に入ってくると網を入れる場所や角度や速さに磨きがかかり、場数をふむとなかなかの上級者になっていく。
 実をいうと、デビュー作の『パンプキン・ロード』の中で、主人公の女の子がそうやって遊ぶうちに元気になっていくくだりがあるのは、著者本人の経験のたまもの。
 太古の昔から、川では川の、山では山の、海では海の恵みに私たちは生かされてきた。子どもたちは、喜びも楽しみも危険も安全もそこから感得して大きくなった。そうやって大きくなった人は、心のエネルギーの充填方法を知っている。科学の進歩は、自ら学びたい人におまかせすればよいのだ。

塾にいく時間があったら、樹や葉や虫でもながめているほうがいい。
かわいい子には旅をさせろ、というのは正しいけれど、こわいウイルスの蔓延する世の中になってしまったからには、せめて、大人も子どもといっしょに裸足で小川の中を歩きましょう。子どもは、テストの答えよりもずっと大きな何かを、水の流れや石の感触から感じ取るはずだから。

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