香りつれづれ ~あまく危険な香り~
山下達郎の「あまく危険な香り」
中学生の頃から聴いているが、今なお聴くたびに切なさに心が震える。
いつまでも色褪せることをしらないというのは、名香も同じ。
カルティエの「ベゼ ヴォレ(盗まれた口づけ)」
これ以上に、あまく危険な香りにふさわしいネーミングはない。
百合の甘く濃密な香りの主張から始まるが、重すぎることなく軽やかで、やがて、さわやかな風が吹き抜けていく、そんな印象だ。
吹き抜ける風は、シトラスの効果かもしれない。
一瞬、香りのなかの甘さがゲランの香水の雰囲気に似ていると感じた。
「ベゼ ヴォレ」の調香師マチルド・ローランはカルティエの前にゲランで働いていたという。
なんとなく香りの雰囲気や印象が似るということがあるのかどうかはよくわからないが、知れば知るほど面白い世界だと思う。
「ベゼ ヴォレ」は、百合の花束の香りがイメージされていて
葉、花弁、めしべ、茎をすべて合わせた香りであるらしい。
そして、とても興味深いのは天然香料は一切使用されず
合成香料のみで調香されているという。
天然香料のみ使用しているフレグランスメーカーもあるが、
すべての香りは、揮発性の化学物質の組み合わせや変性であると考えると
私自身は天然も合成もあまりこだわらない。
盗まれた口づけという近寄りがたそうな名前からイメージするより
ずっと馴染みやすい優しい香りだと思う。
甘い香りが恋しいときにはこの香りがいいと思った。
さて、山下達郎は、「あまく危険な香り」として
どんな香りをイメージしたのだろう。
達郎ファンとしてはとても興味がある。
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