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その姫は海賊船に乗って来る

 白馬に乗った王子ならぬ海賊船に乗った姫の話である。
 古い昭和の人に念のため言っておくが、乗っているのは海賊船である。イルカではない。(平成以降の生まれの人にはきっとわからない話)

 文庫1、2巻を読んでから数ヶ月、ようやく3、4巻を一気に読破した。
感想は、一言で言うと「滾った!
 だが、これは終盤の3、4巻を読んで得た感想だ。
 正直、1、2巻はちょっとダルかった。血湧き肉躍る物語を期待していたので、なかなか本題に入らない前置き設定に始終しているような印象がしていた。
 1巻をまず買って読んだ。前置き設定で終わった印象。「ま、長編だし仕方ないか、次からやな姫の活躍は」と2巻を購入。でも、やっぱり絶賛前置き設定大行進。それで、ちょっと後半の巻を読むまで間があったのだが、ふっと思い出し「もうええ。最後まで読んだれ」と3、4巻を一気購入、読み始めたところ……
「えっ。嘘やん。こっからが活劇真骨頂なの? オモロイやん」
 前半のかったるさはどこへやら。ようやくストーリーが本格的に動き出し、リズミカルかつスピーディーな快走が始まる。海賊姫と巨漢海賊との戦闘は、もうホント「滾る」の一言
 カタルシス半端ない。前半の設定もこの後半の盛り上がりのためにあったのだとようやく知る。後半はいくさ場面だから、死人の山なのに、死んで欲しくない(でもフラグ立ってるよな)キャラも死ぬのに。でも、読後はなぜか爽快である。
 1巻から物語のキーワードとして出ていた「鬼手」という奇策の意味も、後半で知れる。
 ネタばれちゃったら「面白おもしゃない」ので、具体的なことは伏せておくが、私は思わず「昭和暴走族のマドンナ」を思い出したよ。マブい女子をひとり「マドンナ」として集団の王座的なハコ車に乗せて、姫のように大事にして、その他ヤンキー(ツッパリ)どもは彼女を守る。特攻中でもガチンコ中でも抗争中でも何でも、マドンナは絶対に守る。むしろマドンナを守るために戦っているような有様である。そして、マドンナは戦わない。仲間たちが血を吹い斃れようが、絶対に戦わない。姫だもん。
 海賊姫の景は、「昭和暴走族のマドンナ」と違って戦う。マドンナというより、レディースのヘッド兼特攻隊長。もう、一人でだってカチコミかけるよ。姫だけど。
 ってなわけで、もし、前半の巻で私と同じような印象を抱いて、続きを放っておいちゃっている人がいたら、とにかく最後まで読んでみてください

 それから、仄めかし三回転半ひねり想定外着地な恋愛系(何だそれ?)が好きな人にもお勧めかな。
 海賊姫の「輿入れ先候補(そう言って良いのか悩むが)」として、二人の男が出てくる。ツンツン→ツンデレに転じる就英は、さしずめ王道の韓流風王子か。対するデレデレ→ツンツン→ツンデレツン……と巨体に似合わぬ複雑な変遷を見せる七五三兵衛は、中南米のアモーレ・マッチョ王子か。七五三兵衛は、王子というより野獣っぽいが、案外とロマンチストでフェミニストで、ある意味、男女平等主義だったりするから「オモロイやっちゃ」な男である。
 さて、その愛(なのか?)の顛末や如何に! そこは言ったらつまんないから言わない。うふふ……。

 さて。恒例の余談。
 女性がフィジカルに大活躍、延々と冒険し、あるいは大戦闘を繰り広げる小説や漫画や映画、ドラマを見ていていつも思うことがある。
(この人たち、月一(イチ)のアレ、どうしてんだろ?)
 現代なら、いろいろとケアアイテムがあるが、そういうものがない時代の話や中世風異世界ファンタなんかを見ていると特に思う。
 少なくとも彼女らは、PMSや月経痛、貧血とは(ついでに更年期障害も)無縁のようではある。羨ましい。
 昔、「百恵ちゃんはう○こしない」という異世界ファンタジー真っ青のファンタジーを語る野郎どもがいたが、それと同じか。やっぱり、その辺はファンタジー仕様「フィクションってことだからいいの」って暗黙の了解があるのか。じゃないと「面白おもしゃない」もんね。


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