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麻雀61:小さな天才【最強戦2023#11】

男と女のデスゲーム

瀬戸熊最強位が待つファイナルへの切符をかけて、8名で争う予選回。今回は女性4名のA卓、男性4名のB卓という卓組。すなわち、決勝卓は必ず男女各2名ずつとなる、アリそうでなかった企画。
決勝へは日向、松本のアベマズ2名とコナミ・伊達、サクラナイツ・堀というMリーガー4名での対局となった。

堀慎吾の強さ

男と女のデスゲームと銘打った決勝卓は、松本と堀の男性同士のバチバチの闘いとなり、女性陣の出番は少なかった。
同じ団体である松本と堀はこれまでも幾度となく卓を囲んでいるだろうから、相手の手の内も思考も手に取るようにわかるだろう。そんな2人が序盤にぶつかりあう展開になる。壮絶なめくりあいを制したのは、堀。いつもの最強戦であれば、ここからもう一波乱起こりそうなものだが、トップ目・堀の巧みなゲーム回しになすすべがなかった。

「相手の手牌が透けて見えているのか」
そう思えてしまうほどの驚愕の読み。
リーチ者のあたりハイをビタ止めや相手よりも自分が速度的に有利と読んだうえでのかわし手など、精度の高い読みを前提に多彩な戦術を組み合わせて、有利なポジションをしっかりと守ったり、さらに有利なポジションに転じたり。

しかし、このような読みの精度や多彩な戦術以上に堀の強さを支えるのは、その読みに対する絶対的な自信にあるように思う。

トッププロでなくとも読みの精度が高い麻雀プロは、案外に多い。
トッププロとその他のプロとの大きな違いは、その読みに殉じることができるかどうかだろう。自分の読みと心中する覚悟があるかと言い換えても良い。

そこが一流と三流の分かれ目だと思うのだが、堀はそれをさらに一段飛び越えたところにあるプレーを見せる。
麻雀をプレーしたことのある方なら、仲間内でのアットホームな麻雀であっても、「放銃したくない」とか「負けたくない」といった負の感情が邪魔をして、自分の直感を信じられなくなった経験が少なからずあることだろう。
最強戦という大舞台でも、不純な感情を一切混ぜることなく、自分の読みにストレートに従う姿は天才という表現すらも超越しているように見える。

誤解を恐れずにいえば、堀がシビアな局面で天才的な選択をする時は、間違いなく「勝利に向けた一打」であるはずなのだが、「結果を超越した一打」にもみえる。つまり、この一打によって生じる結果が吉凶どちらになっても後悔がない、といってしまってはあまりに軽すぎるか。本来は勝つための手段としての一打であるはずが、その一打を選択することそのものが目的化しているかのように見える瞬間がある。

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