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92歳 三石巌のどうぞお先に 20

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


掃除屋

活性酸素始末する体の“サクラ”

 電子ドロボーがきたら、からだは盗まれ役のサクラをつかうっていう話はおもしろいだろう。サクラってどんなものかってこと知りたいじゃないかな。それを秘密にしておくほどボクはずるい男じゃない。
 からだのサクラだっていってもピンとこないからニックネームの変更だ。スカベンジャーとしておこう。この英語の意味は掃除屋だ。電子ドロボーつまり活性酸素をしまつしてくれるから、掃除屋がぴったりじゃないか。
 このごろベータカロチンってことばがちらほらでてきたろう。あれはスカベンジャーのひとつなんだ。よくしらべてみたらスカベンジャーの種類は一万ぐらいあるだろう。そのひとつがベータカロチンだ。さわぐことはないさ。
 ベータカロチンはニンジン、カボチャに色をつけている色素なんだ。東北大医学部のチームがあちこちの長寿村の人たちが何をくっているかをしらべたことがあるんだ。その答えはカボチャだった。年じゅうカボチャをくっていたってことさ。
 おまえもカボチャをくってるだろうって、ボクにききたいんじゃないかな。ところがどっこい、ボクはそんなものたまにしかくっちゃいないよ。
カボチャがなぜベータカロチンをもっているか。問題はそこだな。
 カボチャでもなんでも、植物ってやつはもろに日光をあびている。そこには紫外線があるってことを思いだしてくれないか。紫外線には波長の長いのも短いのもある。植物はそれをまともにあびているだろう。それはきびしいことなんだ。
 キミはフロンガス問題を知っているんじゃないかな。オゾン層にあなをあけて紫外線をとおしちゃうってことを。
 これがつまり波長の短い紫外線なんだ。それがヒフにあたると、そこにある水分子をわって活性酸素をつくっちゃうんだ。それでヒフがんができるってことをおぼえておくほうがいいだろう。
 カボチャにがんができるかもしれんが、とにかく活性酸素はまずい。そこでベータカロチンをつくる。植物はカボチャだけじゃない。みんなそれぞれに何百種類ものスカベンジャーをつくっている。ビタミンCもビタミンEもそうだし、カロチン、フラボノイド、ポリフェノールとわんさかある。こんどはその話だな。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。



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