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三石巌の分子栄養学講座−11

この文章は三石巌が1984年に初めて分子栄養学を勉強される方へ向けて書いたものです。



ビタミンCを十分に摂る理由

カスケードの水車の例として、これまで、抗壊血病作用と抗白内障作用とをとってきました。しかし、後者にはちょっと問題があるので、ここで、具体例を改めて、インターフェロン合成作用とコーチゾン合成作用をとることにします。インターフェロンは抗ウイルス因子のこと、コーチゾンは、副腎皮質ホルモンの代表の意味です。

インターフェロン合成も、コーチゾン合成も代謝過程ですから、カスケードでは、それぞれに水車をもつことになります。むろん、それぞれに漏斗もついています。漏斗の材料は、インターフェロン合成の主酵素となるタンパク質、コーチゾン合成の主酵素となるタンパク質、ということになります。そして、ビタミンCは、両者に共通な助酵素、ということになります。

この二つの漏斗のカスケード上の順位は、人によって違うと考えることにします。そして、Aさんでは、インターフェロンが上位に、Bさんでは、コーチゾンが上位と、互いに逆の関係にあったとしましょう。

ビタミンCが大量にあれば別ですが、ご両人とも、それが不十分だったとします。すると、Aさんは、インターフェロンはつくりやすいけど、コーチゾンはつくりにくいことになります。そこでAさんは、風邪はなかなかひかないかわりに、ストレスには弱い身体の持主ということになります。風邪はウイルス感染症、コーチゾンは抗ストレス因子だからです。 これと反対に、Bさんは、ストレスには強いけど、風邪はひきやすい身体の持主ということになります。

もし、AさんもBさんも、ビタミンCを十分にとれば、二人は、風邪にかかりにくく、ストレスに強い身体をもつことができるでしょう。ところが、ビタミンCが不足したことになると、前記のような弱点があらわれることになります。これは体質上の弱点といえるものですけど、その弱点がビタミンCの大量投与でカバーできるということです。逆にいえば、体質上の弱点は、ビタミンCが不足のとき、一般的にいえば、助酵素が不足のときにあらわれる、と考えてよいのです。

前に、漏斗の管の太さが親和力で決まるといいました。しかし例えば、ウイルスがいないときには、インターフェロン合成の必要はないわけですから、漏斗に水が流れこむこともいりません。そこで、管にはコックをつけることにします。ウイルスがいないとき、インターフェロンのコックは閉じています。

ストレスが強いと、そのコックが全開します。するとBさんの場合、インターフェロンに落ちる水がなくなりがちです。それで、すぐに風邪をひくことになります。過労のとき風邪をひきやすい人は、Bさんのようなケースだと思います。

活性酸素とビタミンC

カスケード理論では、段々の滝の各段に漏斗をおきました。その漏斗には、主酵素と助酵素との親和力で太さの決まる管がついていました。管から落ちる水で廻る水車がありました。太い管からは大量の水が落ちます。すると、太い管の下の水車は、回転しにくく、たっぷり水がないと、勢いよく廻らない、と考えたらよいでしょう。

ところで、この管にはコックがついていました。ウイルスがいなければ、インターフェロンをつくる必要はありません。ストレスがなければ、コーチゾーンをつくる必要はありません。そこで、コーチゾーンのコックは閉じています。

カスケードではたくさんの水車が廻っているわけですが、なかには休んでいるものもあります。上位の水車が休めば、下位の水車はそれだけで有利になります。 カスケード理論の説明の最初のころ、岩に浸みこむ水についてふれました。浸みこんだ水は水車をまわしませんから、それは、代謝にとっては損失になります。岩に浸みこむ水が少ないことは、代謝にとって有利な条件になるわけでしょう。

岩に浸みこむ水が、全てムダなものとはいえません。ビタミンが有利な働きをあらわさずに分解してしまえば、それはムダになります。しかしそれが、代謝と無関係な働きをあらわすことも、大いにあります。それは、ビタミンCについていえば、活性酸素という名の毒物の除去です。岩に浸みこむ水が、活性酸素を洗い流してくれる、と考えるのです。

活性酸素は大気中にも少し含まれいますが、エネルギーをつくるとき、炎症があるときなどには、体内で発生します。これは、組織を痛めるし、発ガンの契機にもなります。それを除去することは、生体防御のうえでの必須の条件になります。

私の白内障をとりあげたとき、ビタミンCの抗白内障作用という言葉をだしました。白内障は、恐らく活性酸素中毒ですから、抗白内障作用イコール活性酸素の除去法であるかもしれません。とすれば、それは岩に浸みいる水のしわざで、水車とは無関係になります。

もっとも私たちの身体は、「活性酸素除去酵素」を自前でつくります。これは代謝の産物ですから、水車の回転を必要とします。 その代謝の助酵素としてビタミンCが位置づけられる可能性は小さくないと思います。もしそれが正しいとすれば、ビタミンCは、活性酸素退治に二役をつとめる立役者ということになるでしょう。

ビタミンCのカスケードでは、それが水車をまわして働き、岩に浸みこんで働き、というわけです。ビタミンの種類によっては、岩に浸みこんだものが全て損失になる、ということもあるはずです。


三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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