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92歳 三石巌のどうぞお先に 22

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


ボクのスカベンジャー

低分子化したフラボノイド

 スカベンジャー(老化や成人病の元凶とされる活性酸素をしまつしてくれる“掃除屋”の総称)のありがたみが、そろそろわかってきたかな。
 ものごとをちゃんと考えようとおもったら、かたくるしいことばを使わないといけないってこと、わかってもらえるかな。活性酸素とか、キサントフィル(カロチンなどと同じ色素物質のひとつ)とかのことばは学術用語ってもんだ。これをつかわないと、科学のはなしはできない。なにがなにして、なんてことじゃ科学の話ははじまらないんだな。
 用語を毛ぎらいしたらボクの文は読めない。かくごはよいかな。
 まず、活性酸素のスカベンジャーがほしくなったら何を食(く)ったらいいかって話をしよう。
 この連載を読んでくれているキミはもう、植物がスカベンジャーをふんだんにもっていることを知っている。菜食のメリットはそこにあるんだ、とボクがいうかと思っているんじゃないかな。ことわっておくが、ボクは野菜をすきじゃない。サラダは、ひとにおしつけちゃうほうなんだ。
 先々週、フラボノイドって用語がでてきた。これは草や木のもっている色素で、三千種ぐらいもみつかっている。葉っぱに多いが、ほかの部分にもあるんだ。ホウレンソウにもサラダ菜にもたっぷり、ふくまれている。
 それじゃやっぱり野菜サラダを食えばいいじゃないかって、キミは思ったろう。そりゃ、たしかにフラボノイドは口から入れば腸へいく。だが行き先はトイレだ。なぜかって、分子が大きすぎて腸の壁を通りぬけられないだな。
 ああそれでわかった、ベータカロチンがいいっていうのは、腸の壁を通りぬけるからだ、ってキミはいうだろう。キミはそれだけ知識が増えたってことだな。
 ちょっといっておくが、カロチンは油のなかの活性酸素のスカベンジャーだし、フラボノイドは水のなかの活性酸素のスカベンジャーだ。ビタミンEは油、ビタミンCは水ってところは、これによく似ている。もののわかった人間なら両てんびんを考える。
 ところで、先週ちょっと触れた例の、ボクがやっているスカベンジャーは何かって、ききだしたいんじゃないかな。トップにくるのはフラボノイドだ。ただし、それの分子を小さくしたやつだ。低分子化したやつだ。
 続きは来週に。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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