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視点ー「カーボン・ニュートラル」に潜むウソ 後編 『EVは善玉か』

    「カーボン・ニュートラル」を実現するために、多くのパーセンテージを占める自動車産業。その流れから、二酸化炭素をまき散らすガソリン車を廃止し、電気自動車(EV)にシフトする動きが加速している。



    日本では、トヨタをはじめ多くのメーカーが、ハイブリッド車に重点を置いてきたため、EVの普及は遅れている。しかし、世界的に見るとEVは確実にシェアを伸ばしている。



    特に中国の躍進ぶりが目立つ。国の方針としてEV生産に力を入れ、補助金を出して価格を安くするなど、テコ入れしてきた。2035年には、全世界がガソリン車の生産を打ち切る、との発表もされている。



    果たして、このままEVにシフトしてしまうのだろうか。 確かにEVは、走行中に温室効果ガスを出さない。この点では環境に良いと言えるだろう。



    ところが、大部分がバッテリーで構成されているEVは、その製造にかかる原料の採掘や製錬などで、大量の温室効果ガスを発生する。EVの製造過程で排出されるエネルギーと温室効果ガスは、ガソリン車の2倍に上るとされている。



    また、電気自動車に使われるバッテリーは、リチウムイオン電池であるが、5年ほどで寿命を迎える。コバルトやニッケル、マンガンなど、土壌や水を汚染する材料が多く使われているため、そのまま廃棄すると環境汚染に直結するなど、問題を抱えている。



    さらに、EVのデメリットとして、車両本体の価格が高い、充電時間が長い、充電できるスタンドが少ない、バッテリーに寿命があり交換代も高額、といった点が挙げられる。



   以上列挙したことからわかる通り、EVは温室効果ガスを出さないという反面、製造過程で大量の温室効果ガスを出している事実。劣化したバッテリーが環境に悪影響を及ぼす可能性が高い点。デメリットも多いことなどから、EVを善玉として持ち上げ、ガソリン車を悪玉扱いするのは、拙速ではないだろうか?



    ガソリンエンジンは、自動車生産の歴史上、長らく主流の技術として君臨してきた。特にスポーツカーに搭載されるエンジンは甲高いサウンドを奏で、ときに官能的とも表現されるほど。EVでは味わえない魅力だ。



    そんな魅力を、「カーボン・ニュートラル」の合言葉で、簡単に消してよいのか。私には大いに疑問が残るのだ。
   
    

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