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クレジットカードのサーチャージって?日本と諸外国の違い

こんにちは、BUDOUです。
今日は、クレジットカードのサーチャージについて書きたいと思います。


サーチャージとは

クレジットカードなど、キャッシュレス決済におけるサーチャージ(surcharge = 追加料金)とは、特定の決済手段について、本来の価格より上乗せして請求することです。

こちらの記事でも紹介したように、我々消費者がお店でクレジットカードを利用すると、そのお店は利用額の3%程度を加盟店手数料(MDR)としてアクワイアラに支払わなければなりません。
その分の負担を補填するために上乗せして請求する分がサーチャージです。

日本でサーチャージは原則禁止

とはいえ、日本で生活する限りにおいてはサーチャージを目にすることはあまりないでしょう。なぜならば、日本では全ての国際ブランド(ビザやマスターカードなど、クレジットカードのブランド)が、クレジットカード会社や加盟店との契約でサーチャージ禁止条項を定めているからです。
以下、2024年に出た公正取引委員会のレポートによると、

クレジットカード会社とのライセンス契約又は加盟店との加盟店契約において、全ての国際ブランドがサーチャージ禁止条項を定めている。また、3者の国際ブランドが現金割引禁止条項を定めている。

公正取引委員会「クレジットカードの取引に関する実態調査報告書」(2024年4月)

とあります。
日本でクレジットカード会社や国際ブランドと契約している限りにおいては、加盟店がサーチャージを導入してしまうと規約違反となることがわかります。
筆者は、場末の居酒屋や個人経営の雑貨店などでは日本でもサーチャージを目にしたことがあります。これらはしっかりと規約違反ということになりますね。

サーチャージ解禁ずみの国もあり

日本以外の諸外国では、サーチャージが規約上禁止されておらず認められている国もあります。
背景には、国際ブランドによる不当な独占状況を加盟店が苦とし、訴訟が起こったり政府が対応を進めたことがあるようです。

アメリカ合衆国の場合

アメリカでは、ほとんどの州でサーチャージを導入することが認められています。
以下のサイトによると、2024年2月時点では全米50州+地域のうち、

  • コネチカット州

  • メイン州

  • マサチューセッツ州

  • ニューヨーク州(協議中)

  • プエルトリコ

以外の州ではサーチャージ導入が認められているようです。

背景には、2013年ごろから巻き起こった加盟店軍 vs. 国際ブランドの集団訴訟により、国際ブランドによるサーチャージの禁止が独占禁止法に抵触すると結論づけられたことがあります。
訴訟大国であるだけあり、加盟店サイドからの圧力により認められた形になります。

以下は、ビザによる、「米国サーチャージQ&A」から、サーチャージを導入する場合の条件です。

・サーチャージを開始する少なくとも30日前にアクワイアラに通知
・サーチャージの額をビザに送付するデータラベルに追加
・サーチャージの対象はクレジットカードのみとする
・MDRあるいは3%のうち、低い方をサーチャージ率の上限とする
・サーチャージの額を、対面/非対面問わず支払い開始時、支払い時、レシートに・「加盟店による請求額」として明示する

Visa「U.S. Merchant Surcharge Q and A」(BUDOU訳)

MDRを補填する分のサーチャージ導入が概ね認められていることがわかります。

オーストラリアの場合


オーストラリアのカフェにて(BUDOU撮影)


オーストラリアでもサーチャージの導入が認められています。
ACCC(オーストラリア競争・消費者委員会)のウェブサイトによると、

・カードによる支払いに対して加盟店はサーチャージを請求することができるが、サーチャージ率は加盟店手数料による追加負担分を超えてはならない
・加盟店がサーチャージを請求する場合には、その根拠となる加盟店手数料負担を明示できなければならない
・もしサーチャージを請求されずに商品を購入することが不可能な場合には、サーチャージ分は元々の表示額に含まれていなければならない

ACCC(オーストラリア競争・消費者委員会)「Card Surcharges」(BUDOU訳)

とのことで、加盟店手数料を補填する分のサーチャージが概ね認められていることがわかります。

オーストラリアでも国際ブランド各社による規定でサーチャージ導入が禁止されていましたが、2003年ごろオーストラリアの中央銀行であるオーストラリア準備銀行によってサーチャージ禁止規約撤廃の動きが始まり、現在では上記のようなルールになっているようです。
アメリカと違って、公的機関が中心となってサーチャージ導入に至ったことがわかります。


日本でサーチャージ解禁はあり得る?

アメリカでは10年、オーストラリアでは20年前からサーチャージが解禁されたようですが、日本で解禁される可能性はあるのでしょうか?

日本でも加盟店手数料の負担は大きな問題になっており、サーチャージ解禁を含めた解決策の導入は検討されています。

インターチェンジフィー(IRF)の公開

2022年11月、経済産業省による働きかけの結果、ビザ、マスターカード、銀聯(Union Pay)がインターチェンジフィーの標準的なパーセンテージが公開されました。

背景には、中小商店などへのさらなるクレジットカード普及のためには、
「加盟店・アクワイアラ間の加盟店手数料の交渉や、アクワイアラ間の競争を促進する観点から、〜(中略)〜インターチェンジフィーの標準料率を公開することが適当である」と結論づけられたことがあります。
つまりIRFが公開されれば中小の商店であっても強気にアクワイラと交渉できるとの理屈なようです。

筆者の個人的な感想としては、IRFなどというマニアックなものの数字を公開したところで何か変わるのか?と思いますが、取り組みが開始したということが大事なのかもしれません。

Visa日本法人への立入検査

2024年7月、公正取引委員会がVisaの日本法人に立入検査をしています。
Visa社が、「Visa社が提供する決済ネットワークを導入しないと手数料率を引き上げるぞ」とカード発行会社を脅していたとのことです。

以上のように、日本では政府主導で加盟店の手数料負担を軽減するべく対策が進められています。
各種フィーの規制やサーチャージの解禁についても、続報が待たれるところです。

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