「数年内にブレークスルーが訪れる」元外資系投資銀行アナリストが挑む、オルタナティブデータの可能性
こんにちは。ナウキャストHRの木下です。
Finatextグループのメンバーを紹介していく社員インタビュー。
今回はナウキャストのオルタナティブデータアナリスト、峯嶋廣太さんにお話を伺いました!
自分でデータを取れない環境に感じたもどかしさ。
– 本日はインタビュー、よろしくお願いします!これまでさまざまな企業を経験されているかと思いますが、どんなキャリアだったかを教えていただけますか?
最初に入社したのは大手通信会社で、経営企画や管理に近い仕事をしていました。グループ会社からの申請や稟議の管理をしたり、経営会議に出てグループ会社の事業状況を確認したりですね。その後、より広い業界を経験してみたくなり、会計系のコンサルティングファームに飛び込みました。コンサルティングならさまざまな業界・業種に触れられますし、大学時代にファイナンスを学んでいたこともあって、M&Aにも興味がありまして。そこでは企業買収後のPMIを中心に経験し、バリュエーションやデューデリジェンスの支援などを幅広く手掛けました。
– その次は証券会社に転職されていますよね。
そうですね。大学時代の友人に誘われたのがきっかけでした。配属となったのは自動車セクターで、始めの数年間はジュニアアナリストとしてシニアアナリストのサポートを担当、その後シニアアナリストになって3年ほど、同セクターを担当しました。
– 長く在籍されていたかと思いますが、退職されたのはどんな理由だったのでしょうか。
かなり激務だったのでそろそろいいかなと考えていたのと、データサイエンスの勉強がしたかったからですね。というのも、それまでは自動車の販売台数や生産台数のデータ等のいわゆる伝統的なデータや、サブスクライブしていたデータをもとに分析をしており、自分自身で情報を取りにいくことはできませんでした。海外のグループ会社にデータのスクレイピングを依頼することはあったものの、ミスコミュニケーションが発生することが多く、欲しい情報がなかなか取れない。提供されているデータも、アメリカや中国のデータは充実しているけれど、自動車分野で参考にしたい東南アジアのものはあまりなかったりする。それならいっそ自分でやれたらいいのにな、と思うようになったんです。
オルタナティブデータに対する熱量と覚悟に共感。
– ナウキャストが扱うオルタナティブデータという領域には、当時から注目されていたんですか?
自動車業界では走行データなどを収集しているので、それをどうビジネスに活かすかという議論はよくされていました。先ほど申し上げたように、伝統的データだけだと物足りなさがありましたし、自分自身の経験としてオルタナティブデータの価値を実感していたところもあります。たとえば、インドネシアのトラックの販売店のデータをもらってきて参照したら分析の深堀がしやすかったとか、スクレイピングで取ってきたデータをお客さんに喜んでもらえたりとか。おそらく、同じセクターのアナリストの中でも関心は高かった方だと思います。ナウキャスト自体も一定の知名度があり、自分も当時から社名は知っていました。
– そうなんですね。ナウキャストに参画されるまではどのような経緯だったんでしょうか。
証券会社を退職してデータサイエンスの勉強をしていたときに、モビリティ関連スタートアップのCFOに声をかけられ、投資家対応などのファイナンス関連業務のサポートを1年間していました。それが終わる頃、次はどうしようかと考えていたときに、カジュアル面談サービスでナウキャストを見つけまして、とりあえず話を聞いてみようかなと思ったんです。
– カジュアル面談が最初の接点でしたよね。ちなみに、どなたと話されたかと、面談してみた印象についてもお伺いしたいです。
お話ししたのは、林さん(Finatextホールディングス代表取締役社長CEO)、辻中さん(ナウキャスト代表取締役CEO)、片山さん(プロダクトマネージャー・エンジニア)ですね。皆さんと会話してみて、シンプルな言い方をすると「時代を変えていこう」というのがすごく伝わってきました。現在はまだ普及しているとは言い難いオルタナティブデータという分野において、実際にこういう戦略を考えているとか、将来的にはグローバル展開も見据えているとか、さまざまなお話を通じて、この市場を本気で大きくしていこうという気概や熱量が感じられたのを覚えています。
– そこが峯嶋さんの軸と合致したということでしょうか。
そうですね。私の個人的なテーマとして、人が持つバイアスや先入観をデータで取っ払いたいというのがありまして。『FACTFULNESS』という本の影響でもあるのですが、バイアスを取り除く必要性やデータによる可視化の重要性はかねてから感じていました。エクイティアナリスト時代には非常に優秀な海外投資家の方でも、自身が居住している地域に関連した所謂土地勘のある銘柄と、土地勘のない銘柄で評価に差が出ると感じたケースに何度か遭遇したことがありましたし、留学時代には日本人固有のバイアスについて指摘されたこともありました。こういった経験などからできる限り客観的に評価・判断するとはどういうことなのか、という点に関して自問自答をしてきました。それが本を読んでよりクリアになり、自身の軸になっています。オルタナティブデータの価値を高め、広めていくナウキャストは、まさにその軸に合う会社だなと思いました。
奥深く、チャレンジング。新しいアナリストの世界。
– 2022年8月に参画されて3ヶ月ほどが経ちましたが、今はどのような業務を担っていらっしゃいますか?
たとえば、POS/クレジットカード/人流などのデータを活用して、食品・小売・ECなどの業界の事業環境や個別企業の事業の動向を分析し、業績(主に売上)の見通しを作成しています。それをもとに毎月レポートを発行し、投資家に対してプレゼンテーションも行っています。
– 証券会社のアナリスト、いわゆるセルサイドのアナリスト業務に近いイメージなのでしょうか。
投資家とのコミュニケーションという意味ではアナリスト時代の経験が生きている部分もあります。証券会社時代は、投資判断をするにあたって、まず業績予想モデルを作った上で、実際に企業に取材してレポートを書いてプレゼン、というのが基本的な流れでした。もちろん、業績予想モデルという定量要素をいかに精緻に作るかも重要でしたが、取材したときの反応や機微、企業の雰囲気といった、いわゆる定性的な側面もそれなりに加味していました。一方でナウキャストでは、データのバイアスをどう捉えるか、いかに精緻に予測するために詰めていくかを徹底的に考えます。そこにはだいぶギャップがありましたね。
– となると、証券会社時代のやり方が根付いている分、ギャップは大きいのかもしれませんね。
それはあると思います。証券会社のアナリストですと、投資判断をある程度付けてから図表を作るということが往々にしてありまして、それだとバイアスがかかった状態でデータを見にいくことになるんですよね(笑)。もちろん、主張の裏付けとしては一つのテクニックではありますし、人によるところも大きいんですが、ナウキャストのアナリストとは根本的にデータに対するアプローチが異なるので、面白い点だと思っています。
もっというと、証券会社の場合、アナリストとして一定のポジションを取らなければなりません。他のアナリストに対して差別化を図るためにビュー(見解)を強調する必要がある場合もあります。他方、ナウキャストでは中立性を重んじますので、アナリストの方には、このギャップが魅力に感じられるかもしれませんね。この点ではバイサイドのキャリアにもつながる部分があると感じていますし、アナリストとしての幅を広げられるのは間違いないと思います。
– オルタナティブデータの普及はこれからというお話が先ほどありましたが、中立性が強い分、投資家からも好意的に受け止められることが多いんでしょうか。
現状では、オルタナティブデータに対してやや懐疑的な見方をされる投資家の方は少なくありません。直近のファクトに基づいた分析になるので、短期的な予想になってしまうというか、会社の本質的な価値を評価するには足りないと思われているのではないかと推測しています。周辺情報も含めて色々な取材を実施し、定性要素を加味して企業を理解するというのが一般的なので、「月次の情報だけ見て、本当に株価を当てられるのか」という見方が根強いというのはあると思います。少なくとも私が証券会社に在籍した数年前の時点は、セルサイドにそういう風潮がまだありました。セルサイドがそうだということは、言い換えればバイサイドがそうであることを意味します。バイサイド(お客さん)の見方が変わっていれば、セルサイドも自ずと変わってくるので。
– なるほど。ナウキャストとしてはその風潮や意識を根底から変えていく必要があるわけですね。そのためには何をするべきだとお考えですか?
懸念されている要素に対するアプローチとしては、より長期スパンでデータを分析し、こういう変化が起きているので中長期的に見てこの会社の価値がこうなっていく、みたいな示唆をもっとできるようになるとよいかなと考えています。が、やはり今やっていることを、着実に続けていくことが一番大事だと思いますね。その価値に気付いてくださるお客さんを、一社でも一人でも多く増やしていく。今は投資家の中でもアーリーアダプターが注目してくれているような状況ですが、全体が段々と変わっていくにつれ、一気にその動きが加速する可能性だってあります。少なくとも私は、ブレークスルーが数年内に確実にやってくると思います。
裁量×スピード感で、若手がどんどん突き上げていく。
– 話は変わりますが、色々な会社を経験した峯嶋さんから見て、ナウキャストの組織や環境で印象的なのはどんなところでしょうか。
これまで自分が所属してきたような大企業と比べて圧倒的に違うのは、若手の裁量の大きさと活躍ぶりですね。今までなかったプロダクトを自分たちで作り、実際にお客さんに提供するところまでやって、事業部の売上にしっかりと貢献する。その一連の流れをジュニアのメンバーが普通にやっています。
– 大企業ですと、そこまでの裁量はないことが多いですか?
そうですね。一般的な大手証券会社ですと、新卒のジュニアアナリストは自分で銘柄を持つまでに2年、サブセクターを持つまでにさらに2~3年、といった時間軸で進むことが多く、仕事に対するアプローチも、シニアアナリストのサポートがメインで、お客さんとの直接的なコミュニケーションは限定的なことが多いです。
また、アナリストはメディアに出ることもありますが、基本的に証券会社ではベテランアナリストがその役割を担うことが多いです。シニアに代わってジュニアがメディアに出るというのも、なかなか珍しいことだと思います。
※ナウキャストのアナリスト・中山(2018年卒)が出ている例
日本経済新聞
The Wall Street Journal
早いうちから大きな裁量を任され、一気通貫でそうした経験が積めるというのは、若手にとって非常に魅力的な環境だと思います。私自身も、若手メンバーの活躍を見て刺激をもらっています。
– そんな峯嶋さんが今挑戦していることや、今後挑戦したいと思っていることを聞いてもよろしいでしょうか。
日本のオルタナティブデータをもとに分析できるのは基本的に内需関連銘柄に限られるものの、外需銘柄である自動車セクターにも適用できないかと考えていて、人流データと自動車工場の生産量の相関を投資家のトレードアイデアに結び付けられるよう工夫しています。
あとは、グローバル展開ですね。日本の市場は、株式取引自体も今後急成長していく見込みは乏しいので、海外、特にアジア地域に目を向けるのは重要です。先ほど、自動車セクターに関連する東南アジアのデータが少なかったというお話をしましたが、そういう可能性は他にも多いと思っているので、ぜひ今後そういった領域にも切り込んでいきたいですね。
– アグレッシブな目標、ありがとうございます!きっと同じアナリストの方も記事をご覧になると思うので、最後に何かメッセージを頂きたいです。
今後、投資分析におけるオルタナティブデータの活用の重要性は、ますます高まっていくと思います。そして、テクノロジー面や分析における留意点など、オルタナティブデータの扱い方が伝統的データのそれと大きく異なるのは、本日お話しした通りです。
自身の分析手法の幅を広げるという意味でも、近い将来、オルタナティブデータの利用がスタンダードとなる世の中に備えるという意味でも、早めにリスキリングを始めることがキャリア形成・キャリア維持につながると、私は思います。
若手の方であれば、言わずもがな、成長スピードの早い環境はお勧めできますし、キャリアのある方でもきっと刺激に事欠かないと思います(笑)。ぜひぜひ一緒に働けることを楽しみにしています!
– 改めて本日はありがとうございました!
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