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渋谷に波が来ている気がする

2019年11月1日、渋谷スクランブルスクエアの開業を以って、いよいよ渋谷再開発大詰めという感じがする。このビルのオーナーは東急、東日本旅客鉄道、東京地下鉄と日本で最も金持ちな鉄道会社の肝煎りプロジェクトであることが分かる。
サイバーエージェントグループの主要企業やグーグルの日本法人、ミクシィなどが入居予定で、WeWorkも国内最大の3,500デスクを配置する。公園通りにPARCOがリニューアルするなど、駅周辺の中心地から延びる通り沿いも刷新が進む。

渋谷への集中投資は、2002年制定の都市再生特別措置法に端を発する。税制支援や容積率制限の緩和などが織り込まれており国を挙げた都市集中化のプロジェクトは随分前から始まっていた。

その当時に、渋谷が最も投資の活発な街になるということを真剣に想像した人がどれくらい居たかは分からないが、スクランブルスクエアのオーナーリストが示すように、巨大三電鉄の利害が交差する街であった。
それはもちろん六本木にはなく、東京駅にもない特殊性であった。さらに、京王線が乗り入れ、近隣駅には小田急線が走る。日本全国に都市再生特別措置法の対象となる街があるが、これほど資本が集中する街はないだろう。

東急電鉄はこの渋谷の求心力を背景に人口が増加し続ける田園都市線の開発を推進する。東急の2030年までの長期経営構想においてなお渋谷は最重要拠点である。期間リスクを取れる事業家が最も強いということを証明するのは難しいが、渋谷再開発が山場を迎えて東急の戦略の長さと強さを確かめことができる。そしてもう一つ、やはり「国策」というレバレッジを掛けることができる事業体が強いということも確からしい。企業間の争いにおいても、都市間の争いにおいても自由競争というのは滅多に存在しない。

ところで、公共インフラと税金という特段に高いゲタを履いたこの渋谷地主たる企業の約20%は外国人株主が保有する。私たちは通行人として新たな渋谷の繁栄を享受するだろうが、長い時間を掛けて富がどこに集積していくのかはまた別の話だ。

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