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スナック忘れな草~上を向いて歩こう・2023菊花賞~
■ 難解な菊花賞
2023年10月16日(月)午後8時
-東京都某区 スナック忘れな草-
月曜日。週初めてネタが少ないということもあり、スナック忘れな草の常連たちによる、菊花賞の軸馬選びは難航していた。
今日発表された谷村新司さんの訃報から、音楽関連の馬名であるタスティエーラを推すタコ社長。ソールオリエンスが、皐月賞と合わせて二冠を達成するのではないかという真一郎。それに対しギョニ子は、秋華賞で三冠ジョッキーとなった川田将雅の勢いを買って、サトノグランツを中心視したいという。
競馬情報サイトnetkeiba.comの予想オッズでは、これら3頭が上位3強を形成していた。麗子ママは他の客の接客やおでんの準備に忙しく、その時点では検討に加わっていなかった。
「マスターは何を推すんだい?」
タコ社長が訊いた。
「そうですね。重賞も走っていない馬ですが、ドゥレッツァが気になっています。想定騎手ルメールというのが魅力ですね」
「ほう?何やら根拠がありそうじゃねえか?」
タコ社長の問いに、マスターは深く頷いた。
■ 八大競走完全制覇
「くろたんが運営する掲示板に、面白い投稿がありました。『〇番が勝つよ』というハンドルネームで、アメブロを運営している方の投稿です」
秋華賞
1-02 ハーパー 2着(正2・ルメール)
8-17 ソレイユヴィータ 17着(逆2・武豊)
「ご覧のように、片や3着、片や17着と明暗を分けた『正逆2番』配置のルメールと武豊。この二人は、現役騎手では2名しかいない、八大競走完全制覇騎手なのです」
<JRA 八大競走>
皐月賞
東京優駿(ダービー)
菊花賞
桜花賞
優駿牝馬(オークス)
天皇賞(春)
天皇賞(秋)
有馬記念
<八大競走 完全制覇騎手>
保田隆芳
(1968 皐月賞 マーチス)
武 豊
(1998 東京優駿 スペシャルウィーク)
クリストフ・ルメール
(2019 天皇賞・春 フィエールマン)
※( )内は八大競走完全制覇達成レース
「菊花賞のひとつ前のGⅠ秋華賞で、現役では2名しかいない八大競走完全制覇騎手が、『正逆2番』という作為を感じる配置。何か意味があるのではないかという見解です」
「八大競走・・・藤井聡太が将棋の八大タイトルを独占してまだ間もねえ。今週も藤井聡太ネタがあるかもしれねえなあ」
タコ社長の言葉にマスターが頷いた。
■ 1つの八が4つの九を生む
「私もそう思います。将棋界と競馬界は深いつながりがあるのでしょう。将棋の八大タイトルで、棋聖戦と名人戦以外は『王』という文字が使われています。これは天皇に通じます。また、競馬の一年は東西の金杯から始まりますが、これは、王将の両サイドを守る金将を表しているのだと思います」
<将棋 八大タイトル>
竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖、叡王
「マスターいつだったか、アーモンドアイの国内八冠も、将棋のタイトル戦がひとつ増えたからって言ってたわよね?」
ギョニ子の問いにマスターが頷いた。
「そうです。叡王戦ができるまでは将棋は七大タイトルでした。七大タイトル時代、唯一七冠独占を達成したのが1996年の羽生善治であり、彼は現役唯一の永世七冠棋士でもあります。叡王戦ができたことで国内八冠が解禁となり、白羽の矢が立ったのがアーモンドアイだったというわけです」
「アーモンドアイはドバイターフも勝ってるから、海外を含めると九冠馬ですよね?」
真一郎が訊いた。マスターが答える。
「その通りですね。この、海外が1勝のみというのも、意味があると思っています」
アーモンドアイ 国内八冠馬(海外含め九冠)
アーモンドアイ 九冠馬(国内八冠)
「このどちらの表記にせよ、アーモンドアイは日本の競馬界に『八』と『九』という、ふたつの数字を刻んだわけです」
「八と九。そのどちらも大事だというわけだな?」
タコ社長の問いにマスターは頷いて言った。
「藤井聡太竜王・名人の八冠独占。彼は八冠を独占していく過程で、『九』という数字をも次々に生み出していきました」
渡辺 明
木村 一基
豊島 将之
永瀬 拓矢
「社長さん、こう並べるとわかりますよね?」
「おおそうか!」
タコ社長が膝を叩いて言った。
「この4名の棋士は藤井聡太にタイトルを奪われた棋士たちだ!タイトルを奪われて無冠となったために、表記が例えば渡辺明名人から渡辺明九段に変わった。つまり、藤井聡太八冠が4名の九段棋士を生んだわけだ!」
「おっしゃる通りです。もちろん、4名の棋士は無冠になる前から九段ではあるので、藤井聡太八冠自身が九段という称号を与えたわけではないのですがね」
■ スキルヴィング
「秋華賞の『正逆2番』だけど、18頭立てだったから『正逆17番』でもあるわね。『正逆17番』と言えば、今年のダービーを思い出すわ」
そう言ったのは、おでんの仕込みが一段落ついた麗子ママだった。今年のタスティエーラが勝ったダービーで、正逆2番、かつ正逆17番の2頭の悲劇が忘れられないという。
ダービー
1着:6-12 タスティエーラ(キャロット)
【17着】:1-02 スキルヴィング(正2)
(【逆17】・ルメール・キャロット)
※入線後死亡
中止:8-【17】(ドゥ)ラエレーデ(正17・逆2)
(坂井瑠星・父ドゥラメンテ)
菊花賞
ドゥレッツァ(ルメール・キャロット・父ドゥラメンテ)
「なんじゃこりゃ!入線後死亡したスキルヴィングと、スタート直後に落馬したドゥラエレーデ。この2頭を合体させたのがドゥレッツァってわけかい?」
タコ社長はそう言って腕を組んだ。真一郎が続く。
「17ですか・・・奇しくも今年の菊花賞は登録が17頭。何かありそうですね」
ギョニ子が頷いて言った。
「もしかしたら、ドゥレッツァが17番に入ったりしてね。ねえマスター、17頭立ての菊花賞って過去にあったかしら?」
ギョニ子の問いに、マスターは即答した。17頭立ての菊花賞をすでに調べていたのだろう。
1996 菊花賞 17頭立て
8-17 ダンスインザダーク 1着(武豊)
※出馬確定時点での17頭立て
「ひゃー!ダンスインザダークが勝った年かい!17頭立てで17番が勝利。こりゃあ、ますます17番が怪しんじゃねえの?」
タコ社長がそう言うと、マスターはニヤリと笑って言った。
「社長さん、それだけではありませんよ。最後の17頭立て菊花賞、1996年。この年号でピンときませんでしょうか?」
「ええと、おいおいおい!羽生善治が七冠を達成した年じゃねえか!!こりゃ偶然と思えねえぜ!」
タコ社長が興奮して言った。ギョニ子がまとめる。
「最後の17頭立て菊花賞が1996年。その年に史上初の将棋七大タイトル独占があった・・・そして今年、藤井聡太八冠が誕生し、菊花賞が1996年以来となる17頭立てになる可能性がある・・・」
マスターが深く頷いて言った。
「面白くなってきましたね。ただ、まだ月曜日です。乗り越えるハードルはふたつあります。ひとつは、このまま回避馬が出ずに、17頭立てで確定するかどうか。もうひとつは、ドゥレッツァが17番に入るかどうかです」
みんながうんうんと頷いた。そのあとは小一時間ほど雑談を続けてから、お開きとなった。
■ くろたん劇場
2023年10月17日(火)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-
ギョニ子と真一郎が揃って店にやってきて、スナック忘れな草のいつもの常連が勢ぞろいした。それを待っていたかのように、3分ほどしてやってきた客がいた。
「私もみなさんが推すドゥレッツァを支持しますよ」
そう言って入ってきたのはくろたんだった。17番ゼッケンのユニフォームを着ている。いきなりカラオケのリモコンを操作すると、RADIO FISHの「PERFECT HUMAN」をかけて振り付きで熱唱した。そして、満足そうな笑みを浮かべると、タコ社長の右隣りに座った。
「17番・・・そしてパーフェクト・・・もしかしたら」
マスターが言った。
「槙原寛己ですね?」
「ズゴーーーーン!!マッキーじゃなくてローキ!佐々木朗希のほうですからーーーー!残念!」
そう言ってくろたんは、ギターを弾く真似をした。
「さぶっ!久しぶりに見たけど、ギター侍はやっぱ寒いわ」
ギョニ子はそう言って両腕をさする動作をした。
「くろたん、今日は極上のネタがありそうですね?」
マスターの問いにくろたんは頷いた。
「フフフ。くろたん劇場をたっぷり楽しんでもらいますよ」
~くろたん劇場 開演~
くろたん「かくかくしかじーか。かくかくしかじーか」
~中略~
一同「おおーー!」
一同拍手。
~くろたん劇場 終了~
「って、中略すな!!」
くろたんが真顔で突っ込んだ。
■ JRAアプリリリース記念
「この前のJRAアプリリリース記念を覚えていますか?」
麗子ママから受け取った熱いおしぼりで両手をぬぐいながら、くろたんがみんなに訊いた。ギョニ子が答える。
「えーと、あれよね?JRAアプリのリリースを記念して、名称変更されたレース。確か先週か先々週、東京競馬でやったんじゃなかったっけ?」
第4回東京競馬第2日第10レース
【10月8日(日曜)】 変更前 赤富士ステークス
変更後 JRAアプリリリース記念
「ずいぶん、ざっくりとした記憶ですね。まあいいでしょう。JRAアプリリリース記念は、赤富士ステークスを名称変更して施行されました。2016年から2022年までの赤富士ステークスの開催日をみてください」
<赤富士S 2016~2022>
2016/10/16
第4回東京5日目
2017/10/15
第4回東京5日目
2018/10/14
第4回東京5日目
2019/10/19
第4回東京6日目
2020/10/24
第4回東京5日目
2021/10/23
第4回東京5日目
2022/10/22
第4回東京6日目
「すべて5日目か6日目。つまり、第3週の施行ですね?」
マスターが尋ねると、くろたんは頷いて言った。
「その通りです。ところが今年は10月8日、第1週の2日目に組まれていたのです。そのうえで、『JRAアプリリリース記念』と名称変更をした」
2023/10/8 第4回東京2日目
東京10R 赤富士S→JRAアプリリリース記念
「確かにそれは引っ掛かるわね」
ギョニ子が顎を引きながら言った。くろたんが続ける。
「アプリの開発なんて数週間でできるものではない。数カ月、いや数年単位で準備していた可能性すらある。長い準備を経て完成したアプリの記念レース。何かしらのサインが仕込まれているはずです。つまり、他のレースではなく、赤富士ステークスでなければならなかった理由。それがサインでしょう。まずはこれを見てください」
2022.(10/22) 赤富士ステークス
2023.(10/22) 菊花賞
「直近の赤富士ステークスの施行は昨年、日付は10月22日でした。今年の菊花賞も10月22日。同じ日付。これがサインの入り口となります」
2023 赤富士ステークス
名称変更→JRAアプリリリース記念
10/8 JRAアプリリリース記念
1着 2ー03 パラレルヴィジョン
(C.ルメール・キャロットF)
2022.10/22 赤富士ステークス
1着 6ー06 ペチプドナイル (C.ルメール)テン乗り
菊花賞
ドゥレッツァ (C.ルメール)・尾関知人・(キャロットF)
「JRAアプリリリース記念を制したのは、ドゥレッツァと同じ『ルメール・キャロット』のパラレルヴィジョンでした。そして、JRAアプリリリース記念の元レースである赤富士ステークス。昨年のそのレースを制したのも、これまたルメールでした」
「なるほど、ルメールやキャロットを強調しているわけだな?」
タコ社長が尋ねるとくろたんは頷いて言った。
「そうです。しかしそれだけではまだ弱い。施行日をずらしてまで、赤富士ステークスを記念レースにしたかった理由。それがこれです」
2022.【10/22】 赤富士ステークス
1着:6ー06 ペチプドナイル【4/24・C.ルメール】
※ルメール テン乗り
2023【10/22】菊花賞
ドゥレッツァ 【4/24・C.ルメール】
店内におおという歓声があがった。
「昨年の赤富士ステークスを勝ったペプチドナイル。誕生日がドゥレッツァと同じ4月24日。しかもそのときルメールはテン乗りだった。あきらかな仕込みでしょう。1年後の同じ10月22日施行の今年の菊花賞。ルメールが勝つと予告されていたのです」
くろたんはそこまで言うと、目の前に用意されていた山崎のロックを一気に飲み干した。
「私はこれで失礼します。他に何かネタがあれば、随時ツイッターでつぶやきますよ。何かの役にたつかもしれない」
くろたんはそう言って店を出て行った。
「今のネタはなかなか強烈でしたね」
真一郎が感心したように言った。
「軸馬はドゥレッツァでよさそうじゃないですか?」
みんながうんうんと頷いた。麗子ママが続いた。
「くろたんさんの考察の中に、誕生日の一致があったわよね?ペプチドナイルとドゥレッツァが同じ4月24日生まれだって」
「それがどうかしたのかい?」
タコ社長が尋ねると、麗子ママが答えた。
「月曜日のJRAニュースで、宮崎育成牧場の動画を紹介していたの。YouTubeを観てみたら、動画のアップは9月3日。1ヶ月もたってからの紹介だから、菊花賞につながるネタがあると思ってチェックしたわ。動画内のハイライトがブリーズアップセールなんだけど・・・」
ブリーズアップセール
2023年【4月24日】開催
ドゥレッツァ
2020年【4月24日】生まれ
「ブリーズアップセールの開催日が、ドゥレッツァの誕生日と同じだったの」
![](https://assets.st-note.com/img/1697938775434-s1rM1saVeG.png?width=1200)
「それは奇妙な一致ですね。というより、これを示唆したくて、このタイミングでその動画を紹介したのでしょう」
マスターがそう言うと、みんながうんうんと頷いた。そのあと、麗子ママが昨日仕込んでおいたおでんを食べながらの雑談タイムが小一時間ほど続き、その日はお開きとなった。
■ 競走馬の休日
2023年10月18日(水)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-
「JRAのFacebookだけど、珍しい投稿がありますね。競走馬の休日だって」
![](https://assets.st-note.com/img/1697938825565-WvZJVLOBbJ.png?width=1200)
スマホを操作しながらそう言ったのは真一郎だった。今日もスナック忘れな草の店内には、タコ社長とギョニ子もおり、サイン競馬仲間の常連が揃っていた。
「休日かあ。この前の患者さんを思い出しちゃうな・・・」
ギョニ子が珍しくしんみりとした表情で言った。先日、退院された患者を思い出したという。
「10月の頭のほうだったかな。その男性の患者さん、還暦の誕生日だったの。そしたら奥様がどうしても手作りのケーキを食べさせてあげたいって、病院に連絡が来たのよね」
ギョニ子の話によると、コロナ対策のためご家族の面会は制限していたが、その患者は末期癌で先が長くないことがわかっていたため、特例で面会が許されたという。
「だいぶ飲み込みも悪くなっていたから、奥様が作ったケーキを全部は食べられなかったけど、それでもおいしいおいしいと何度も言って、涙を流しながら食べていたわ・・・」
結局、そのケーキが患者がまともに食べられた最後の食事になった。一週間後、息を引き取った患者を迎えに来た奥様は、主人の誕生日をどうしても祝いたかった理由を、看護師長に話していったという。
「その奥様の誕生日がね、12月23日なの。上皇陛下の誕生日と同じよね?2018年までは元号が平成で天皇誕生日だったから、12月23日は祝日だった。そのころまだ癌におかされていなかったご主人は、奥様の誕生日には丸一日まったく予定を入れず、何十年ものあいだ毎年お祝いしてくれていた。ところが2019年からは元号が令和になり、12月23日は平日になってしまった。年末は毎年、時には午前様になるほど忙しくしているご主人だったから、これでもう自分の誕生日は、以前のような誕生日にはならないと奥様は覚悟していたわけ」
ギョニ子はそこまで言うと、生ビールをぐびっと一口飲んでから話を続けた。
「ところが2019年の12月23日。令和になってからの最初の誕生日ね。ご主人は数日前から何時間も残業をして仕事を片付けていて、わざわざ有休を取ってお祝いしてくれた。それが何よりうれしかったそうなの」
「いい話ですね」
マスターが目を細めて言った。ギョニ子が続ける。
「それでね、2020年も2021年もそして昨年も、12月23日は平日だったから、ご主人は奥様の誕生日が近づくと残業で仕事を片付けて、誕生日当日は有休を取って祝ってくれたんだって」
「ということは、昨年の12月23日が、ご主人が祝ってくれた最後の誕生日になってしまったんだね・・・」
真一郎が訊いた。ギョニ子が頷いて言った。
「そういうことなの。でも、奥様の表情には微塵の後悔もなく、やれるだけのことはやったという満足感にあふれていたそうよ」
■ キャンドルライト賞
「12月23日といえば・・・」
ギョニ子の話の余韻にみんながしばらく浸ったあと、麗子ママがぼそりと言った。
「月曜日に、有馬記念の公開枠順抽選会のニュースがあったわよね?なんか告知が早いような気がして、昨年のニュースを見てみたの」
<JRAニュース>
2022/11/19(土)
有馬記念公開枠順抽選の実施
2023/10/16(月)
有馬記念公開枠順抽選の実施
「なんだよ、1ヶ月も早いじゃねえか?」
タコ社長が言った。麗子ママが答える。
「そうなのよ。それでもしかしたら、今週のレースにつながるものが有馬記念の週にあるのかなって思って番組表を見てみたの。このレースが怪しいわ」
2023/12/23(土)
※上皇陛下 90歳の誕生日
中山12R キャンドルライト賞
「上皇陛下の90回目の誕生日、つまり卒寿。その日にキャンドルライト賞・・・」
マスターが言った。
「誕生日をお祝いするキャンドル。2018年まで12月23日は祝日だった。今日子ちゃんがあげてくれた、Facebookの『競走馬の休日』・・・休日を祝日と解釈するとつながります。これは調べる価値がありそうですね」
そう言ってしばらくパソコンを操作していたマスターだが、5分ほどしてそうかと声を挙げた。
「キャンドルライト賞を調べてみたところ、興味深い事実がありました」
<キャンドルライト賞>
2018/12/23 中山08R(有馬記念)
※ブ(ラスト)ワンピース 平成「最後」の有馬記念
2019/12/21 中山12R(中山大障害)★
2021/12/26 中山12R(有馬記念)
2022/12/25 中山12R(有馬記念)
2023/12/23 中山12R(中山大障害)★
※( )内は当日のメイン(重賞)
「平成最後の有馬記念があった2018年。その年にキャンドルライト賞は初めて施行されました。有馬記念を勝ったのは『ラスト』を馬名に持つブラストワンピース。これは有名ですね。2019年は有馬記念当日ではなく中山大障害の日に施行。2020年は施行がなく、2021年と2022年は有馬記念当日。中山大障害当日に施行は、2019年以来となります」
「2019年と今年、何か共通点があるのでしょうか?」
真一郎の問いに、マスターが頷いて言った。
「共通点がありました。2019年9月2日、上皇陛下は歴代天皇の中で、最高齢を記録したと報道されています。つまり長寿のお祝いの年だったのですね。そして今年2023年は、先ほど挙げた通り上皇陛下の90回目の誕生日。いわゆる卒寿に当たります」
<中山大障害当日にキャンドルライト賞施行>
2019 上皇陛下・歴代天皇最高齢更新の年
2023 レース施行当日「卒寿」の誕生日
上皇さま
歴代天皇の中で最高齢に
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/66985.html#:~:text=87歳の上皇さま,となられました。
「お祝いの年のキャンドルライト賞は、『中山大障害』の日に施行する。そんな意味があるのかもしれません。もしかしたら・・・」
マスターはそこで言葉を区切り、一呼吸おいてから言った。
「今年の菊花賞は『平成』がテーマなのかもしれません。なぜなのかはわかりませんが」
「平成と言えば・・・」
真一郎が言った。
「もしですが、将来『平成の日』という祝日が制定されたら、日本で『17個目』の祝日になるんです。今週たびたび出てきた『17』。偶然とは思えません」
「それは素晴らしい視点ですね!」
珍しくマスターが興奮して言った。少し声が上ずっている。
「しんちゃん、おめえ何でそんなこと知ってるんだい?」
タコ社長がカウンターの逆サイドから声を掛けた。カウンターの右角に座っている真一郎が笑って答える。
「商売柄でしょうかね」
真一郎が言うには、言語聴覚士というリハビリ専門職であるために、患者と日付に関する話をすることが多いという。
「今日がいつなのか、ここはどこなのかという時間と場所に対する意識。それを見当識(けんとうしき)と呼んでいます。アルツハイマー型認知症や、脳血管障害などの病気により、その見当識が低下することがあります。今日が何月何日なのかとか、今月10月にはどんな祝日があるかという話題を振って、患者さんの反応をみるわけです」
真一郎の説明は続いた。日本の祝日は16個あるが、患者に尋ねて特に反応が薄く、なかなか出てこない祝日が、海の日、山の日のふたつだという。
「このふたつの祝日の共通点は、平成になってから制定された祝日だという点です」
<平成に制定・名称変更された日本の祝日>
みどりの日
(1989~2006 4月29日)
(2007~ 5月4日 ※1988~2006は「国民の休日」)
昭和の日
(2007~ 4月29日)
海の日
(1996~2002 7月20日・2003~ 7月第3月曜)
山の日
(2016~ 8月11日)
「厳密には昭和の日も平成に入ってから制定されたものですが、昭和のあいだは天皇誕生日という祝日でした。それと、みどりの日は昭和63年に国民の休日として制定されたものが、昭和の日制定に伴い2007年に名称変更されたものです。つまり、平成になってから純粋に個数として増えた祝日は、海の日と山の日のふたつです」
真一郎によると、認知症患者は最近のことは覚えられないが、昔の記憶は保たれていることが多い。古くからある祝日は覚えているが、平成になってから制定された祝日にはなじみがないため、忘れていることが多いという。
「海の日や山の日の話をしても、そんな祝日あったかしらと、きょとんとする患者すらいますよ」
「しんちゃん、祝日に関する情報が、菊花賞を解くヒントになりそうな気がします。些細なことでもよいので、祝日に関する情報を挙げてもらえませんか?」
「そうですね・・・」
マスターの提案に、真一郎は5秒ほど視線を宙にさまよわせた。
「これはどうでしょう。現在は7月の第3月曜日の海の日ですが、もともとは海の記念日でもある7月20日だった。由来は、青森から函館を経て横浜にご安着された明治天皇の巡幸の最終地点が横浜港で、その日付が7月20日だったからです。さらにこの日付は、祝日法が制定された日付でもあります」
祝日法制定: 昭和23年7月20日
明治天皇巡幸:明治 9年7月20日(横浜港にご安着)
「なるほどなあ。関係ねえかもしれねえが、今年の凱旋門賞に唯一日本馬で参戦したスルーセブンシーズ。海を示唆する馬名だよなあ」
「関係あると思いますよ」
タコ社長の言葉にそう言ったのはマスターだった。
「スルーセブンシーズは、騎手がルメール、厩舎が尾関知人、馬主がキャロット・・・」
「おいおい、ドゥレッツァとまったく一緒ってわけかい?」
タコ社長が言った。マスターが頷く。
「スルーセブンシーズは宝塚記念2着馬。勝ったイクイノックスと同じ3枠に入り、その時の騎手は池添謙一でした。ブラストワンピースで有馬記念を勝った騎手ですね」
「なんだかつながって来たわね」
ギョニ子がカーディガンの袖を腕まくりしながら言った。
「海の日・・・つまり祝日法という隠れキーワードを持つスルーセブンシーズ。ブラストワンピースの池添謙一騎手を介して、『平成』とつながる。もし将来、『平成の日』が制定されれば、それは『17個目』にあたる」
「スルーセブンシーズとドゥレッツァ。両馬を管理する尾関知人調教師だけど・・・」
そう言いながら、麗子ママがスマホの画面をみんなに見せた。
「誕生日が1971年の12月17日。西暦の下2桁の『71』を反転させればだけれど、『17』をふたつ持っているわ。もしかしたら、尾関知人調教師だけかもしれない」
その言葉を聞いて、マスターが素早くパソコンを操作した。3分後、マスターは深く頷いて言った。
「麗子ママの言う通りでした。JRA所属に限ると、西暦と誕生日の両方に、連続するかたちで『17』と『71』を持のは、尾関知人調教師だけでした」
<17日生まれの騎手・調教師 ※JRA所属>
土田真翔(2004年2月17日)
藤岡佑介(1986年3月17日)
小林真也(1981年2月17日)
加用 正(1953年5月17日)
伊藤伸一(1959年7月17日)
牧浦充徳(1974年8月17日)
久保田貴士(1967年9月17日)
菊川正達(1962年11月17日)
尾関知人(1971年12月17日)★
杉山佳明(1983年12月17日)
松永昌博(1953年12月17日)
「いつか『平成の日』が施行されれば『17個目』の祝日となる。その『17』という数字と深いつながりがあるのが、尾関知人調教師。彼の管理馬が凱旋門賞に出走したスルーセブンシーズ。そして、同じ騎手、調教師、馬主のチームがドゥレッツァというわけです」
マスターのその言葉に、みんながうんうんと頷いた。久しぶりの大ネタ発掘になりそうな予感に、店内はしばらく沈黙した。
「あ、祝日ネタでこれがありました!」
沈黙をやぶったのは真一郎だった。日本で制定された16個目の祝日である山の日に、ある逸話があるという。
「山の日は8月11日ですが、最初は8月12日で検討されていました。そうすれば、13日から16日までのお盆休みとつながって、5連休になりますからね」
「そう言えばそうね。なんでくっつけなかったんだろうって思ったことがあったわ」
ギョニ子がそう言って、真一郎が続いた。
「山の日が8月12日なることに、異を唱えた議員がいました。小渕優子議員です。8月12日は日航機墜落事故があった日。しかも山に墜落したわけですから、これでは山の日ではなく日航機墜落事故の日になってしまうと」
真一郎の説明に、うーんと低いうなり声をあげたのはマスターだった。
「たいへん興味深い話です。それで一日ずらし、8月11日になったわけですね。小渕優子といえば、お父さんが元首相の小渕恵三。平成という年号の発表を行った政治家です。山の日と平成。つながりますね・・・」
マスターはそう言って、険しい表情になった。何か深い思考を巡らせているようで、ほかのみんなが声を発しづらい雰囲気になった。
「ええと、いよいよ明日だな、枠順発表。今日はこのあたりでしめようか?」
タコ社長が気をきかせて言った。
「17番にどの馬が入るか。しかと見届けようじゃねえか」
タコ社長の言葉にみんなが相槌を打った。そして、その日はお開きとなった。
■ パドック間違い画像
2023年10月18日(木)午前1時(17日深夜)
-東京都某区 スナック忘れな草-
常連客や麗子ママが帰ったあとも、マスターは店内に残っていた。藤井聡太八冠。正逆17番。スキルヴィング。スルーセブンシーズ。ドゥレッツァ。山の日。日航機墜落事故。祝日法。平成の日。ブラストワンピース・・・これらのピースがうまくつながりそうな予感がしたが、一方で、何かが足りないという予感もあった。足りないのはなんだろう。
いったん、考えるのをあきらめて、くろたんのX(ツイッター)を見返してみることにした。月曜日にくろたんが来店したときに、何かネタを見つけたらつぶやくよと言っていたのを思い出したのだ。
パドック画像間違い くろたんX(ツイッター)
![](https://assets.st-note.com/img/1697939602073-IMTkoogRna.png?width=1200)
「パドック画像間違いか・・・」
確かにレアな画像だった。前走ではない画像が使われることは時折みられるが、馬自体の取り違えというのは見たことも聞いたこともない。8番のコスモディナー。マスターはパソコンでそのレースを検索した。2着馬の情報を見たとき、何かひらめくものがあった。まさか!
![](https://assets.st-note.com/img/1697939803948-eyh4oKTasP.png)
「ウマのそら」菊花賞編の3つの坂。3つ目のまさかとはこのことだったのか。「3分名馬」のコントレイルにもつながる。急いでネットを検索し、必要な情報が得られるサイトにたどり着いた。ビンゴだった。
示された名前にピンとくるものがあり、YouTubeもみてみた。マヤノトップガン・・・間違いない。今年の菊花賞にはある大きなテーマが隠されている。それは日航機墜落事故だ!
■ コスモディナー
2023年10月19日(木)午後6時半
-東京都某区 スナック忘れな草-
スナック忘れな草に常連たちが勢ぞろいした。17番にまさかのドゥレッツァが入り、みんな少し興奮していた。マスターが昨日たどり着いたある考察を話そうとしたとき、それを制して先に口を開いたのはタコ社長だった。
「藤井聡太八冠と17番がつながったぜ!これでドゥレッツァは鉄のパンツだと思うなあ。藤井聡太八冠が最初にタイトルを取ったのが、17歳11カ月のとき。棋聖戦だった!」
タコ社長がどうだと言わんばかりにみんなを見渡した。みんなうんうんと頷いている。マスターが言った。
「それは盲点でしたね。社長さん、ありがとうございます」
「礼はいいってことよ」
タコ社長はそう言いながらもうれしそうだった。
「ところでマスター。おめえさんも何か掴んだんだろ?昨日の終わりごろの辛気臭い顔とはえれえ違いだぜ!」
タコ社長に図星を突かれ、苦笑いしながらマスターが言った。
「ばれましたか。実は昨日、みんなが帰ったあと、くろたんのツイッターをみてみたんです。富士ステークスに出走する、ソーヴァリアント。この馬のパドック画像間違いについてツイートしていました」
![](https://assets.st-note.com/img/1697939945629-MuBIL9l6o1.png)
「昨日、しんちゃんから山の日制定にまつわる逸話がありましたね。8月12日を予定していたが、日航機墜落事故の日だったために11日にずらした」
真一郎が頷いて先を促した。
「間違い画像に使われたコスモディナーが勝ったレース。2着馬がカイコウ。騎手は落合玄太。たった4名しかいなかった日航機墜落事故の生存者のひとり、その方のお名前が落合なのです」
パドック間違い画像のレース
8/20 札幌8R クローバー賞
1着:8-08 コスモディナー
2着:7-07 [地]カイコウ【落合】玄太
日航機墜落事故
生存者のひとり 【落合】由美
![](https://assets.st-note.com/img/1697940079685-NfQ5mpqTOz.png?width=1200)
「ええ!?そんな偶然があるのかしら!」
ギョニ子が驚いて言った。マスターが続ける。
「これだけではないのです。他の生存者の名前も、今週JRAから提供されていました。
■ マヤノトップガン
マスターが次に示したのは、YouTube動画とFacebookに登場していたマヤノトップガンだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1697940145835-dscNTAMV6y.png)
YouTube動画・Facebook
マヤノトップガン
(生産者:川上悦夫)
マヤ → 山(山に墜落)
トップガン → 飛行機
川上 →【川上】慶子 生存者のひとり
![](https://assets.st-note.com/img/1697943217330-ia4SEXJ2Mj.png?width=1200)
「なんてこったい!覚えてるぜ、川上慶子さん。かなりの美少女だったから、マスコミに取り上げられて大変だったよなあ」
タコ社長はそう言って天を仰いだ。
「この、コスモディナーが勝ったレース名がクローバー賞。日航機墜落事故の生存者は4名。あれだけの事故で助かるなんて・・・」
マスターの言葉にかぶせるようにギョニ子がいった。
「相当な幸運よね。4名の生存者・・・ラッキーを示す四葉のクローバーってわけね?」
マスターは頷いて説明を続けた。
「2着馬カイコウですが、馬名意味は『邂逅』という難しい単語です。意味は、思いがけず出会うこと。あきらめかけていた生存者のご家族にとって、まさに思いがけない再会だったことでしょう」
マスターはそこまで言うと、傍らに置いてあったグラスでウイスキーを飲んだ。
「今週の『3分名馬』はコントレイル。言うまでもなく飛行機を暗示しています。『ウマのそら』菊花賞編の3つの坂。飛行機の乗客という目線で見てみると、上り坂は離陸、下り坂は着陸と言っていいでしょう。そして3つ目の坂が・・・」
そこまでマスターが言ったところで、タコ社長が続きを言った。
「まさかという坂、飛行機事故だな・・・」
■ シャンパンカラー
マスターが披露した日航機墜落事故にまつわる考察は、まだ序章に過ぎなかった。次にマスターが提示したのは、今年のNHKマイルCだった。
「日本で最後に制定された祝日『山の日』は、12日案が却下されて、11日案が採用されました」
2023 NHKマイルC
6-11 シャンパンカラー 1着
6-12 クルゼイロドスル【取消】
「12番が取り消しで、同枠の11番が優勝。つまり、12日案が却下されて、11日案が採用されたわけです」
マスターの説明に、ギョニ子が両腕をさすりながら言った。
「すごい!なんだか鳥肌が立ってきたわ!」
「驚くのはまだ早いですよ。シャンパンカラーの馬主の名前をみてください」
シャンパンカラー(青山洋一)
「平成」になってからできた祝日2つ
海の日、山の日
山 ≒山の日
洋 ≒海の日
「今年、『ウマのそら』山崎まさよし編で、皐月賞と菊花賞以外はずっとジュエラーの桜花賞が使われていました。馬主はシャンパンカラーと同じ青山洋一氏。その理由が海の日と山の日という、平成を象徴する祝日を示唆するからだったと思います。シャンパンカラーの内田博幸騎手。同騎手が主戦騎手を務めたのがヴィルシーナ。先週、府中牝馬ステークスを勝ったディヴィーナの母です」
10/14(土)府中牝馬ステークス
5-07 ディヴィーナ 1着
(母ヴィルシーナ→内田博幸)
2012 秋華賞
1着:7-14 ジェンティルドンナ
2着:1-01 ヴィルシーナ(内田博幸)
3着:1-02 アロマティコ
4着:2-03 ブリッジクライム
2~4着の馬番「123」
→墜落した日航ジャンボ機 JAL【123】便
マスターの説明に、店内は静まり返った。今年のNHKマイルCに、日航機墜落事故につながるそんな仕掛けがあろうとは、誰が想像しただろうか。マスターはなおも続けた。
「シャンパンカラーが勝ったNHKマイルCですが、馬番で11番→3番という決着でした。11月3日、文化の日。明治天皇の誕生日でもあります。NHKマイルCの前日、メイジという馬がケンタッキーダービーを勝っているのです」
■ 機上の人
2023/5/6(土)
チャーチルダウンズ競馬場(アメリカ)
1着:8番 メイジ
6着:【17番】デルマソトガケ【ルメール】
取消:20番 コンティノアール【坂井瑠星】
「明治天皇を示唆する11番→3番のNHKマイルCの前日、時差があったため、日本時間ではNHKマイルC当日に、メイジという馬がケンタッキーダービーを勝利。ルメールのデルマソトガケはドゥレッツァと同じ『17番』でした。そしてこれが大事なのですが・・・」
マスターはそう言ってみんなの顔を見渡した。
「NHKマイルCを日航機墜落事故と仮定すると、ルメール騎手と坂井瑠星騎手、奇しくも日本のダービーではともに正逆17番に入り災難にあった騎手たちですが、結果的にNHKマイルCという飛行機には騎乗しなかった・・・漢字を変えると『機上』しなかったというわけです」
「するってえと・・・」
タコ社長があとを引き継いだ。
「墜落した飛行機に乗らなかったために、難を逃れた幸運な者ということだな?・・・機上して幸運にも生存した4名とは別に、記録に残らない生存者だ・・・」
「そういうことです」
マスターは頷いた。
「あるネット記事の記録によると、この123便に乗ろうとしたが、満席だったために乗らなかった著名人には、故ジャニー喜多川氏や少年隊の3名らがいるそうです」
![](https://assets.st-note.com/img/1697940484839-Mz7Yi1S1Qu.png?width=1200)
「なんとまあ!」
驚いた声を挙げたのはギョニ子だった。
「こういうタラればは不謹慎だけど、もしあの123便にジャニーさんが乗っていたら、最近世間を騒がせている性加害報道は、一生闇に葬られたままになったかもね・・・」
■ 38年振りの日本一へ
「私の考察が的を射ているのであればですが、JRAがこの日航機墜落事故を取り上げた理由がもうひとつあります。阪神タイガースの優勝です」
マスターがそこまで言うと、何を言おうとしているか察したタコ社長が頷いた。
「日航機墜落事故があった1985年。阪神タイガースが日本一に輝いています。今日、日本シリーズ進出を決めましたが、実に38年振りの日本一になる可能性があります」
「そして・・・」
マスターがそこまで言うと、タコ社長が続きを言った。
「日航機墜落事故の被害者の中には、当時の阪神タイガース球団社長も乗っていた・・・だな?」
マスターが深く頷いて言った。
「14番に入ったソールオリエンス。勝負服は虎柄の社台ファーム。そして14番というゲートは昨年の菊花賞馬であり、夏に熱中症で死亡したアスクビクターモアのゲートです。ふたつの意味で追悼。この馬にも、当然役割があるでしょうね」
■ 上を向いて歩こう
「そうなるとですが・・・」
10分ほどの休憩後、真一郎が口を開いた。
「本命は17番のドゥレッツァ。対抗は元阪神球団社長とアスクビクターモア。ふたつの追悼の役割がある14番ソールオリエンスでいいでしょうか?」
「でもさあ、『山の日』がテーマなら日付の8月11日・・・8番と11番がいる4枠と6枠。このふたつの枠も無視できないんじゃない?」
そういうギョニ子に賛同したのは麗子ママだった。
「私も今日子ちゃんと同じ考えだわ。4枠と6枠には人気馬が揃ったし、8番のサヴォーナは池添謙一騎手。今週話題に上がったブラストワンピースの8番でもあるわ」
麗子ママの説明に、タコ社長が頷いて言った。
「まあ無理に枠の7-8一本に絞らなくても、8枠から4枠、6枠、7枠でいいんじゃないかなあ。おっと!これを忘れてたぜ。Facebookのマヤノトップガンの記事。菊花賞の紹介で終わらず、その年の有馬記念までふれていたのが気になったぜ」
1995/12/24
第40回 有馬記念
1着:7-10 マヤノトップガン
2着:2-02 タイキブリザード(坂本勝美)
「黒の2枠に坂本・・・あの日航機墜落事故には、九ちゃんこと坂本九さんも乗ってたんだよなあ」
タコ社長はそうしんみりと言うと、麗子ママに頼んで『上を向いて歩こう』をカラオケに入れてもらった。坂本九の大ヒットナンバーだ。テレビ画面に曲名と作詞家、作曲家のテロップが映し出され、タコ社長が歌い出そうとしたそのときだった。マスターがカラオケのリモコンを操作し、曲をストップした。
「な、なにしやがんでい!マスターでもやっていいことと悪いことがあるぜ!」
カンカンになって怒るタコ社長に、マスターが深くお辞儀をして詫びながら言った。
「今、テレビ画面に答えが映っていましたよ。作詞家と作曲家の名前です!」
上を向いて歩こう
作詞家:永 六輔
作曲家:中村 八大
「永六輔、中村八大!六と八か!!しかも中村八大の八大は、藤井聡太八冠にもつながるじゃあねえか!!」
![](https://assets.st-note.com/img/1697940795019-OK4zfUB47t.png)
怒り顔から柔和な笑顔になり、タコ社長が叫んだ。みんなはおお!ブラボーと歓声をあげ、スナック忘れな草の菊花賞勝負馬券が決まった。
スナック忘れな草
菊花賞 勝負馬券
◎17番ドゥレッツァ
〇6枠
▲7枠
単勝:17番
枠連:8-6.7
3連単:17→11.14→11.14
■ 編集後記
最後までお読みいただき、ありがとうございました。かなりのボリュームとなりましたが、これでも削ったネタがたくさんあります。一部はツイッターでつぶやいていますので、お時間と興味がある方は、私の今週のツイートをみてみてください。
アプリリリース記念と、パドック画像間違いのネタを披露してくれたくろたん。くろたんのツイートにはまだまだドゥレッツァに関するネタで、小説内では紹介していないものがあります。私の引き出しにはないものをお持ちのくろたんのツイートも、是非チェックして見てください。
リバティアイランドとイクイノックス
この2頭の対決が、どうやらジャパンカップでみられそうです。今秋のGⅠシリーズで最大の見どころとなるかもしれません。
リバティアイランド=アメリカの象徴
イクイノックス =日米の悲劇の象徴
リバティアイランドがアメリカの象徴なのは言うまでもないですが、イクイノックスが日米の悲劇の象徴とはどういうことか。イクイノックスの馬名意味「昼と夜が同じ」は、今回の小説のテーマである「祝日」、春分の日と秋分の日ですね。
このふたつの祝日がある月、3月には「3.11東日本大震災」があり、9月には「9.11同時多発テロ」があります。春分の日と秋分の日が半年間のスパンを開けているように、このふたつの忌まわしい天災とテロもまた、半年間というスパンを開けています。
原爆という観点では、被害国と加害国という関係にある日米ですが、イクイノックスと馬を通すと、大きな悲劇に遭遇した被害国という共通点があります。
平成生まれの馬がおらず、初めて令和生まれだけの馬によるダービーがあった今年のクラシック。暦の上ではなく、競馬番組表的に平成の終わりの2023年。
イクイノックスの主戦騎手ルメールが、「平成の日」を暗示する「17番」を背負ってゲートインするラストクラウン菊花賞。3分間のドラマをしっかりと目に焼き付けたいと思います。
馬券がもし外れても、さあ、上を向いて歩こう!
上を向いて歩こう 坂本九
https://www.youtube.com/watch?v=N4hh28_hdD8
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