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スタージ・ウェーバー症候群とは

顔の赤いあざが特徴的なスタージ・ウェーバー症候群は、毛細血管の形成不全によるものと考えられています。

しかし、現段階では根本的な原因は解明されていないため、国の指定難病の1つとされています。

今回はスタージ・ウェーバーの診断と治療法について紹介していきます。

■スタージ・ウェーバーの症状

「スタージ・ウェーバー」とは、この症例を初めて報告したイギリスの神経科医William Allen Sturgeと、皮膚科医のFrederick Parkes Weberの名前を冠した病名とされています。

スタージ・ウェーバーの症状は、脳と皮膚、眼の3か所に現れるのが特徴です。3か所すべてに現れるとは限りません。脳と皮膚、皮膚と目の2か所、あるいは脳だけという場合もあります。

いずれも毛細血管の奇形など、生まれつきの血管構造の異常によって起きる症状とされていますが、なぜ血管の異常が生じるのか根本的な原因はわかっていません。

次にそれぞれの症状について見てみましょう。

▽脳に現れる症状

頭蓋内の軟膜(脳と脊髄を包む髄膜のうち最も内側にある膜) に血管腫ができます。血管が集まったり広がったりしてできる腫瘍で、ほとんどが良性です。

ただ、血液循環が悪くなるため、てんかんや片頭痛、運動まひなどを併発することがあります。

てんかんの症状は、手足がピクピクけいれんしたり、動作が停止して意識がボーっとしている程度のものが多く、見逃してしまうこともあります。

しかし、てんかんは一度起きると重症化しやすく、てんかんの重症度と血管腫の範囲に比例して「精神運動発達障害(知的障害、運動障害、自閉傾向)」をきたす確率が高くなります。それがこの疾患の最大の問題点です。

▽皮膚に現れる症状

乳幼児期に見られるあざには、一般に「いちごあざ」と呼ばれる「乳児血管腫」もあります。いちごあざの場合は、生後数日から数週間後に出現し、どんどん大きくなって1歳あたりをピークにして5~10歳ころまでには自然消滅していくのがふつうです。

これに対してスタージ・ウェーバーの場合は、出生時から顔面や頭部に平らな赤あざが見られます。ポートワイン斑と呼ばれる「単純性血管腫」で、自然に消えることはありません。成長するにつれてあざの面積も広がっていき、盛り上がっていくこともあります。

顔面にできた場合、あざがある側は血流が豊富になるため、あごの骨や軟部組織が肥厚しやすく、永久歯が通常より早く生えてきたり、異常な部位に歯が生えたりします。歯周にも悪影響が出て早く永久歯が抜けることがあります。

▽眼に現れる症状

軟膜血管腫と毛細血管の形成不全によって眼圧が上昇し、緑内障を発症しやすくなります。

視野が狭くなり、視力が低下し、失明に至ることもあり得ます。

スタージ・ウェーバーの場合は、眼球の大きさに左右差が生じることもあります。

■スタージ・ウェーバーの検査と治療法

スタージ・ウェーバーの患者さんは、顔のあざを消すために皮膚科を受診したところ、検査の結果この病気が発見されたというケースが多く見られます。

てんかんなどの症状が現れていなくてもあざがあったり、逆にあざはなくてもてんかん発作を起こすようなときは、スタージ・ウェーバーを疑って脳の検査を受ける必要があります。

▽軟膜血管腫とけいれん

まず、軟膜血管腫の有無を調べるために各種の画像検査が行われます。

・MRI検査(磁気共鳴断層撮影)
血管腫の有無、脳萎縮、病巣の腫大などを調べる

・CT検査(コンピュータ断層撮影)
脳内の石灰化を調べる

・SPECT検査(シンチグラフィー)
脳内の血流を調べる

さらに、てんかん焦点(発作の発生源)を診断するために脳波検査が行われます。脳波の測定と同時に発作症状などの映像も記録できるビデオ脳波検査は、より的確に判断することができます。

検査の結果、軟膜血管腫が発見された場合は、血管腫に対する根治的な治療法はないため、てんかんの治療が主体になります。抗てんかん薬の吸収性には個人差があり、効果が得られるのは50~60%といわれます。

効果がなく発作が抑制されない場合は、精神運動発達障害を防ぐ目的でてんかん手術が検討されます。

手術法には、てんかん焦点のある大脳皮質の一部を切除する「焦点切除術」と、切除するのではなく、大脳皮質に多数の溝を入れる「軟膜下多切術」があります。

そのほか、脳の血流が停滞して血栓ができるのを防ぐためにアスピリンを投与したり、脳の石灰化予防のためにカルシウム拮抗剤を使用することもあります。

▽顔のあざ

スタージ・ウェーバーによる単純性血管腫は、歯の成長に影響することがありますが、それ以外に健康上のリスクはとくにありません。しかし、美容上の観点からレーザー治療を受けるケースが多く見られます。

血管腫には色素レーザーが用いられます。これは血管内のヘモグロビン(血色素)を標的に照射することであざを消していくものです。だいたい3か月の間隔をあけながら5~15回にわたって治療していきます。血管腫のレーザー治療はシミ取りなどの美容整形とは異なるので保険が適用されます。

▽緑内障

視力検査、眼圧検査、視野検査が行われます。緑内障が認められる場合は、点眼薬を用いて眼圧を正常範囲内に下げることで視野欠損を最小限にとどめることを目的とします。点眼薬の効果がない場合は、失明を防ぐために手術が検討されます。

■スタージ・ウェーバーは指定難病の1つ

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スタージ・ウェーバーは「難病の患者に対する医療費等に関する法律(難病法)」で、「指定難病」の対象とされています。
「難病」と「指定難病」は次のような違いがあります。

▽難病と指定難病の違い

「難病」は次の4つの要件を満たすものと定義されています。

①発病の機構(メカニズム)が明らかでない
②治療法が確立していない
③希少な病気である
④長期の療養を必要とする

上の①~④に加えて以下の2つの要件も満たすものが「指定難病」と定義されています。

①患者数がわが国において人口の0.1%程度以下である
②客観的な診断基準が確立している

「指定難病」は重度の疾患として医療費助成の対象とされているのに対し、「難病」だけの場合は助成金を受けることはできませんので混同しないようにしましょう。

スタージ・ウェーバーの患者数は正確なところは不明ですが、日本では現在、0歳から成人まで含めておおよそ1,000人の患者さんがいると推定されます。

難治性のてんかんや精神運動発達障害を伴って長期治療を余儀なくされているケースや、軽度であっても高額治療を継続しなければならない人が少なくないので、患者全体の50~80%は医療費助成を必要としていると見られています。

▽医療費助成の内容

医療費の自己負担が2割になります。負担上限額も重症度や収入に応じて定められており、その額を超える分は負担する必要がありません。高額な治療が長く続く場合はさらに負担は軽くなります。

▽難病指定医の診断書が必要

医療費助成を受けるには、都道府県から指定を受けた「難病指定医」が記載した診断書が必要です。医療費の給付も「難病指定医療機関」で受けた治療に対して行われることになっています。

指定病院は「難病情報センター」で調べることができますが、大学病院や大きな病院であればどこでも該当します。

▽申請方法

申請に必要な書類は市区町村によって異なりますが、「診断書(臨床調査個人票)」「住民票」「世帯所得確認書類」「保険証の写し」「同意書」が一般的です。必要事項に記入して市区町村の窓口に提出します。

それを都道府県が審査し、認定基準に該当すれば「医療受給者証」が交付されます。申請から交付まで2~3か月かかります。

受給者証の有効期間は申請から1年ですので、交付までの間にかかった治療費は手続きをすれば還付してもらえます。そして、申請から1年後の月末までに更新手続きをする必要があります。

■まとめ

いかがでしたでしょうか。

スタージ・ウェーバー症候群は難病指定とされており、職場復帰には事業所を利用するのも検討したほうがよさそうです。

事業所に通うのは2年前後の長期にわたりますから、通いやすいところを選ぶことが第一です。

距離的な通いやすさだけでなく、利用目的に合った事業所であることが大切です。

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より豊かに、当たり前に人生を楽しめるように。
利用者様の一人ひとりの成長をサポートします。

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