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怖い顔『狂ったメス』

 わたしが子供の頃、テレビで観てしまって、その後ずいぶん長い間トラウマに苦しめられた作品が2本あります。1つ目はジョルジュ・フランジュ監督のフランス恐怖映画の傑作『顔のない眼』、もう1つがピーター・カッシング主演の『狂ったメス』です。

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 『顔のない眼』は映画史にその名を刻む傑作であり、詩情と恐怖が共存するモダンホラーでした。幼い頃はこの『眼』がないのか、『顔』がないのか、あいまいで『眼のない顔』だったような気もするし、という風に邦題があやふやな記憶でした。大人になってから克服しようとして再び鑑賞し、その絶妙な恐怖の醸成に唸るばかりでした。ジョルジュ・フランジュ監督作品は日本ではあまり公開されずに終わったのが残念です。この作品を始祖としてもっとフランス映画界にも恐怖映画が発展していたらよかったのに。『悪魔のような女』にしろ、フランス映画の冷たい怖さがわたしにはなんともたまらい魅力です。
 で、このモチーフ、「事故で美しい女性が顔に大けがをする」「その美しさを取り戻すために近親者の医師が皮膚移植手術を施す」「そのために次々とドナーとなる女性を殺害する」「しかしそのたびに移植は失敗し、また元の醜い顔に戻る」、これをもっとどぎつく、当時流行したサイケデリックな演出で包んだ作品が『狂ったメス』です。
 わたしはこのテーマは現代でも通じるものがあるし、ぜひ今の技術でリメイクやリブートして怖がらせてほしいと思うのですが、『顔のない眼』から『狂ったメス』へのバトンリレーは幼かったわたしにとって悪夢でしかありませんでした。それでいて大人になったわたしがこの作品を復刻して発売するというめぐり合わせは何なのでしょうか。



迫力満点の海外版ブルーレイのジャケット

 ところで、『狂ったメス』は2013年に先行して海外版でブルーレイが発売されていました。この迫力満点のジャケットはリリースにあたって書き下ろしたのでしょうか、初めて見るキーアートでした。これでもよかったのですが、やはりわたしは劇場公開時のデザインにこだわりたく、現在の日本版のキーアートを採用しました。国内の権利元がソニー・ピクチャーズで、契約継続中だったのも幸いし、スムーズに発売できたのも助かりました。同時期はホラー祭りのようなラインナップで『妖女ゴーゴン』『怪奇ミイラ男』と続きました。

 なんにせよこの時代のホラー映画は味わい深くて良いですね。わたしは決して熱心なホラーマニアではありませんが、今でもピーター・カッシングやクリストファー・リーの顔を見るとわくわくする感じがします。

 以下、無用のことながら。

 復刻シネマライブラリーでMGMと契約したこともあって、この時代のMGMのホラー映画の権利状況も調査しました。そんな中で『血の唇』を思い出し、これを復刻したいなと考えていました。この映画は美でレンタル時代に見た、ビデオのジャケットがものすごくインパクトがあったからです。

怖い顔

 『顔のない眼』『狂ったメス』『血の唇』・・・みんな顔が怖い。
 今のホラー映画で『テリファー』みたいな顔が怖い作品は多くありますが、この時代の「怖い顔」は心に深い傷を刻んでくれました。わたしのホラー映画の原点は「怖い顔」にありますから、これから先ももっと多くの怖い顔に出会いたいなと思います。

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