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第二の仕事人生の始まり『激しい季節』①

2015年頃から『復刻シネマライブラリー』というオンデマンド方式でDVDを発売するという仕事に携わりはじめました。このサービスのことは後々に詳しくご紹介するとして(現在はサービス終了)、このような仕事に就くとどうしても薄っぺらい自分の知識の中で復刻する作品を選ぼうとしてしまいます。この当時に作ったカタログチラシを見ると選んでいる作品は「俺たちが愛したコメディ特集」とまとめられて、『ハドソン河のモスコー』(84)『愛しのロクサーヌ』(87)のウェルダンな作品が表紙。内側にはジョン・ハートの好助演が光る『パートナーズ』(82)やウディ・アレンの『ボギー!俺も男だ』(72)、ジャック・レモンとウォルター・マッソー、黄金コンビの『おかしな二人』(67)、ホントにクレージーな『チーチ&チョン スモーキング作戦』(78)、わたしのお気に入り『ピーウィ・ハーマンの空飛ぶ大サーカス』(88)など、本当に売りたい作品もありましたが、売れ行きはいまひとつ。
 2015年は試行錯誤しながらDVD未発売の作品の中で、わたしの知識の中で「これは売れるんじゃないかな」と思うものから発売を進めていました。
 転機が訪れたのはある方の紹介を通じて西部劇愛好会「ウエスタン・ユニオン」の会合にお招きいただいたこと。ここからわたしの西部劇好きは開眼し、次々と未発売の西部劇の復刻につながっていくのですが、それはまた別の機会に書くとして、もう一つ(わたしにとって)重要なターニングポイントが今年86歳になる父との会話でした。
 わたしは映画好きの父を1人の顧客サンプルとして買いたい、欲しい映画は何かインタビューしてみることにしました。当時まだ70代でしたが父は昭和11年生まれ。どっぷり映画にはまった世代です。おそらく1000枚は超すであろうDVDコレクションを持ち、LDもVHSも大事に残していました。
 「お父さんが今でも欲しい一番の映画は何ですか」
 「『激しい季節』が観たい」
『激しい季節』(59)のことは知っていました。VHSは東芝映像さんが発売、その後配給会社のデラさんがリバイバル公開をされました。『激しい季節』で検索すると豊川悦司さん主演の邦画が出てきますが、こちらはイタリア映画です。
 その後改めていろいろ詳しく調べると、だんだんと「これはものすごくファンの多い作品に違いない」という思いが強くなってきました。そして「このような作品を復刻することこそわれわれのやるべき仕事ではないか」という気持ちになってきました。
 マーケティング用語で「プロダクト・アウト」「マーケット・イン」という考え方があります。わたしは最初「プロダクト・アウト」、つまり供給側が「これがいいだろう」というものを提供する罠に陥っていました。しかし、父のリクエストを叶えようと思った時から「マーケット・イン」、需要側が求めるプロダクツを提供するという考え方に切り替わったのです。
 『激しい季節』をどうしてもリリースしたい。いや、しなくてはならない。そこから権利元探しが始まりました。

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