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2022年8月23日の備忘録〜友人が業務ブラックな会社を辞めた日に観るギョーム・ブラック映画は一興


 傷病手当の申請や家事など家で身の回りのことを昼までしていた最中に、LINEにて大学の友人から勤めていた会社を辞めたとの連絡が。
 その友人は投資や転売で傷病手当と別に小遣い稼ぎをしているのを知っているからか、退職の連絡の追伸に「金の稼ぎ方を教えて欲しい」と書いてあって一瞬イラッときた。一人孤独に本を読んで去年の3月から勉強してきて、やっとそれなりに結果を出せるようになったのに、自分は苦労せずあやかろうとする友人の姿勢には憤るものがあった。また、「金の稼ぎ方教えろ」と言ってきた時には授業料を取ろう。10万円くらい。

 そんな底意地の悪いことを考えながら、セブンイレブンの銀座デリー監修カシミールカレーで昼食。痺れるような辛さと深みのあるコク。本場カシミールカレーの再現の高さに、美味しさともに舌を巻いた。このクオリティで550円は逆ボッタクリでは⁉︎。
 現在、デリー銀座店がビルの工事のために休業中なので、家でデリーのカレーが食べられるのは嬉しい。もちろん、デリー上野店へ行けばカシミールカレーは食べられるが、俺的には「デリーのカレーは銀座店で食べる」というジンクスがある。一日も早く営業再開して欲しいな銀座店。

 そして、美味しいカレーを食べた余韻に浸る暇もなくユーロスペースへ移動して、『遭難者』『女っ気なし』『みんなのヴァカンス』のギョーム・ブラックの初期作&最新作3本鑑賞。午前中に“業務ブラックな会社”を辞めた友人の知らせを聞いた直後に、ギョーム・ブラックの映画を観るのは、粋なのか悪い冗談なのかよく分からない。

 それは別として、“ポスト・エリック・ロメール”的な立ち位置でバカンス映画を定期的に撮り続けるブラックだが、個人的には作品の良し悪しが激しい印象の監督だったりする。『7月の物語』には深く感嘆した一方で、シネフィル間で神格化されていた『宝島』はそんなにノレず。悪い映画ではなし、一定の多幸感はあった。

 そんなこんなで初見だった初期作『遭難者』と『女っ気なし』は素晴らしかった。両作ともに案の定バカンス映画だったが、全編に渡るバカンス先のドンよりした曇り空と寒々しい海が突き刺さる。とくに、『女っ気なし』は、ハゲ男が歳の離れた女性に恋するダメ男映画で泣けた。やっとのことで女性と一夜を共にできたハゲ男が、翌朝バカンス先から去っていく女性を嘘寝で見送る姿が何とも切ないし、去った後に男が彼女が寝ていた枕に顔をうずめるシーンも痛々しいのに他人事とは思えなかった。いや〜傑作だった。

 そして、休憩時間20分も経たないうちに最新作『みんなのヴァカンス』。タイトルの通りまたしてもバカンス映画で、ちょうどいいバランスの多幸感を提供してくれる。ブラックは、映画を撮れば撮るほど、時間の省略表現とロケーション撮影に磨きがかかっていくのを感じる。冒頭のダンスシーンから一夜明けたあっけらかんとした編集なんかとくに顕著。そして、観客に旅情感を体感させるようなロケーションを全力で活した撮影、演者に自然な演技を要求する演出も合間って終始惹き込まれた。
 ただ、“ポスト・エリック・ロメール”と前述したように、ロメールやホン・サンスの映画を見ている時と同様に物足りなさは否めない。出涸らしの出涸らしで映画を撮っているというか、惰性で映画を撮ってるというか。やはり、バカンス映画の安定感を瞬間を打ち破る瞬間が見たい。同じバカンス映画である、ジャック・ロジェ作品や清水宏『簪』を愛してやまないのは、そういう瞬間があるからだ。

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