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執筆の独り言

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取材や原稿執筆などなど、仕事にまつわるできごとで感じたことあれこれの覚え書き
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#出版

フリーランスで生き残るために、たぶん大切なこと

フリーランスのこれからに思いを馳せる 川上未映子さんの後輩作家を思いやるTweetをきっかけに、ラジオ番組「ACTION」(TBSラジオ)で武田砂鉄さん、宮藤官九郎さんの放送日に、ギャラ交渉や技術の向上など、フリーランスが抱える悩みを取り上げることが続いた。川上さんのTweetが私のタイムラインにも流れてきたあと、「ACTION」の放送も聴いていた私は、フリーランスのこれからに思いをめぐらせた。  私もフリーライター・エディターとして今は決して自慢できる状態ではなく、仕事は

ギャラの交渉は仕事を受ける前から始まる

金額と振込時期をまずは確認 フリーランスの一番の悩みはギャランティ(報酬)だろう。私もいまだにギャランティの話をするのは苦手だ。1回のやりとりで納得できる額だったら問題ないのだが、額の上乗せを交渉する、あるいは仕事のボリュームを減らす交渉となると、どう言えばスムーズに受け入れてもらえるか、切り出す前にあれこれシミュレーションしてしまう。  ギャランティに関する話は金額だけでなく、仕事の範囲、請求の仕方、支払時期、支払方法など多岐に渡る。一度に全部は触れられないので、まずは交

出版物の総額表示義務化と紙媒体の衰退で引き起こされること

1989年の消費税導入時は出版社1社平均3623万円の負担 そろそろ寝るか、と思ったら、TwitterでこんなTweetを見てしまい、「ああ、そうだった」とくらくらしているところである。出版社のなかの人間ではないので、消費税が上がる=表示問題の勃発をすっかり忘れていたのだけど、消費税改正のときのドタバタを思い出すことになった。89年はまだ出版界に入っていなかったので現場は知らないのだが、それ以降の改正では、雑誌が元気でまだなんとか出版社に余裕があったときでさえ、もれ聞くなかの

本は人、雑誌は世界。1冊の向こうに人がいる

思いがけず、「出版物の総額表示義務化と紙媒体の衰退で引き起こされること」を多くの方に読んでいただくことになりました。本当にありがとうございます。フォローもしていただいて恐縮しております。その後の経過やTweetなどを見ていて、本や雑誌を大事に思ってくださる方がたくさんいることをあらためて知ることになり、うれしくもなりました。その続きのようなものを今日は書いてみようと思います。  新型コロナウイルス感染症による自粛生活が明けた6月、初めて三省堂書店に行ったときのこと。自分の毛

“女性”ライターの生き残り戦略を考える

いくつかのタイプがあるライターの仕事 フェミ論争やジェンダー論争が熱くなっていて、70年代のウーマンリブ運動の末期のさらにシッポのほうをちらっとかすった年代としては、「うーん、なんか既視感」と思っている。らせん状に向上しているとは思うのだけど、相互理解を目指す活動は、先日、惜しまれながら亡くなった米最高裁のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が、「男性だけの判事を相手に、性差別をまるで『幼稚園の先生』のように説明しなければならなかった」と語ったように、なかなかスカッとは解決せず

あしなが育英会が編著の東日本大震災遺児作文集が出版されます

 今年は東日本大震災から10年ということもあり、震災をテーマにした仕事が例年以上に多いです。ですが、取材すればするほど、10年という月日が節目ではなく、これからもずっと続いく「震災後の日々」なのだと思い知らされます。  2月19日に発売予定の『お空から、ちゃんと見ててね。——作文集・東日本大震災遺児たちの10年』(あしなが育英会・編/朝日新聞出版)は、震災で家族を亡くした子どもたちの作文集です。  あしなが育英会は、遺児たちの学費支援だけでなく、心のケアにも力を入れて

『私の夢まで、会いに来てくれた』と『津波の霊たち』の不思議なご縁

 東日本大震災に関係する本は、震災直後から3年くらいまでの間にはかなりの冊数が出たけれど、その後はポチポチ。被災地以外の人々の興味が他に移るにつれて、新刊は復興やグリーフケアなどに関する専門書が中心になっていった。  そんななか、毎年、フィールドワークのレポートを書籍化していた金菱清先生から相談があり、縁あって私も関わりながら制作したのが、『私の夢まで、会いに来てくれた』だ。震災から時間が経ち、よりいっそう、被災した人たちへの心の寄り添い方がクローズアップされるようになって

『私の夢まで、会いに来てくれた』文庫判が2月5日に発売になります

 2018年に発行された『私の夢まで、会いに来てくれた 3.11 亡き人とのそれから』(金菱清ゼミナール編 東北学院大学震災の記録プロジェクト)が、震災から10年になる今年、文庫化されます。  発売日は2月5日。現在、予約受付中です。  この本の編者は、宮城県仙台市にある東北学院大学の金菱ゼミの学生さんたちです。災害社会学をテーマにする金菱清先生のもとで学ぶ、3年生のゼミ生と2年生が、東日本大震災で家族や友人を亡くした方たちに、どのような夢を見ているのか、聞き取り調査