Valkan Raven #1-0
「人間の世界は、幾つもの群れで構成された部屋の集まりのような物だ」と、ある日彼は私に言った。
その例えには納得が出来たし、心から救ってくれる物だと思った。今まで持っていた世間への価値観が全て私の勝手な決めつけでしか無かった事を、この言葉を言われてから頻繁に意識する事が出来るようになった。
それでも人間の作っている部屋の数は、余りに膨大過ぎる。一生の間に何個かの部屋を出入り禁止になる事はあっても、全ての部屋を回り尽くして全ての部屋で認められる人間なんて、絶対に存在しないだろう。
あいつがこの部屋の中でどう思いながら生きてたとかは、今もこれからも私にはずっと分からないけど、
嫌いじゃなかったよ。
この『排他された数字の世界』の事も、彼の事も、この世界で関われた人達の事も、あいつの事も……
私の事も。私の事を、
私は本当は、嫌いじゃなかったんだ。