Guilty Braves Truth1:荒廃の街フィオラ/行こう、誰もが幸せになれる土地へ【1−1】

一羽の鳥が飛んでいく。
 果てのない青に包まれて行く先に、雲が転々と浮かんでいる。遥か地には大地と海が、緩やかな弧を描いて広がっている。
 目指しているのか偶然なのか、何よりも澄んだ一本の美しい虹が鳥の頭上に伸びている。消えない不思議な七色の帯は何処までも果てまで、この世界を一直線に伸びている。
  遙か昔に人は、この世界に名を付けた。
 『フィルアース』。
 今から二年前、二つの国によって行われた大戦により多くの犠牲と悲劇を生み出したこの世界は、休戦した今なおも、癒えぬ苦痛を人々の心に与え続けている。
 そんな時代の最中、人々によって伝えられている、ある一つの噂があった。
 「空を覆う幾重の虹が一つに集まる場所に、誰もが幸せになれる土地があるらしい」 。
 人々はその場所を、多くは虚偽だと決め付け、一部は本気で信じて、こう呼んだ。
 ――「幸せの土地」と。

――あの日、手を繋いで走ったあの日。
 彼方此方で起こる爆音と悲鳴が、吹き飛ぶ建物と煙に混ざって、火と熱気を纏って襲いかかってきて。挫けそうになる度に繋がっている手の主は 「大丈夫、絶対に大丈夫」と、何度も何度も言って、私を励ましてくれた。
 あの日が終わって時が過ぎて、あの人はある場所を目指して旅に出た。私の元を去る時にもあの人は「大丈夫、絶対大丈夫」と、微笑みながら言ってくれたから……、
 私は待っている。世界が今でも非情でも、 世界が全てを忘れても、ずっとずっと此処で、
 あの日の約束を信じて、あの人を待ち続けている。 ――

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