戯曲ディスカッションツアー〜カミと蒟蒻〜

2016-12-12 ブログ再録

戯曲ディスは、公開審査の審査方法と同じ手順を踏んで進行していったのですが、第一回目投票で戯曲ディスと公開審査で全く同じ結果になったのが印象的でした。

第2次世界大戦で日本軍が行った「風船爆弾の製造」を題材にした作品。
戸納が百年記念誌を作るために、風船爆弾を実際に製造していた幸子にインタビューにやってきて、そこから過去回想に入るという、これだけ聞くとよくあるパターンのお話。
ただ、4人の役者が交代に演じ、過去と現在で大きく離れた年齢を演じるというところではかなりハードルが高い。
鈴木さんは「これを上演することができたら、俳優はかなり鍛えられる、その時点でこの戯曲には価値がある」とおっしゃっていました。


戯曲ディスでは、最後に痴呆症に陥っていたのは幸子でなく慎次郎であった、という急展開に疑問の声があがりました。
「結局、これまでの流れは何だったのか?」と、みんなが最初を確認したそうです。
あまりにも急転直下なので、「失策では?」という声も。
ただ、慎次郎が痴呆症であることが現実ならば、これまでの全ては慎次郎の妄想や想像の世界であるのでは、という意見はかなり納得で、途中で現代に大津が登場するファンタジーな部分もかなり腑に落ちました。
果たして果たして。

公開審査では、「名作になる可能性を秘めている」「今後ブラッシュアップし続けてほしい」と今後に期待する声がとても多かったのが印象的でした。
その代わり、まだ現状では満足いかないと。

鴻上さんは「この題材はみんなが興味を持ってしらべた。実際に戦果もあがっている出来事であり、上手いことやらないと素材がおもしろい分難しい。」、逆手さんは「出来事に負けている。説明を台詞に溶け込ませないと、史実を述べているだけの部分がある」とのこと。
また、人物が類型的で、個々人の特徴という感じがしないということでした。
戯曲ディスではさらに、痴呆症や軍国乙女というモチーフもかなり素材として大きくて、全部の材料を調理しきれてなかったのではという意見もありました。

その他にも、土田さんは戸納のモチベーションや行き着く先が不明瞭であること、語り部として役に立っていないと指摘。
マキノさんは、ご自身が過去の作品を作ることもあってか、戦時中の言葉遣いなどリアリティが必要なところで調べが足りないのでは、と。
これに対しては、川村さんより慎次郎の想像や回想であるから、そこをあえてぼやかせているのでは?という意見もありましたが、それにしてもちょっと足りない、とのことでした。


第一回目の投票では、戯曲ディスでも公開審査でも0票。
ただ、一番「今後に期待」という声が大きかった気がします。
「もものみ。」に改善点も期待も声があがらなかったので、悔しいなぁと思いながら…


私は読んでいて、史実っぽさ、小説っぽさから「永遠の0を読んでるみたい」という感想。
もちろん、最終選考まであがっているので面白い作品であることは大前提ですが、オーソドックスな構成、第2次世界大戦という場面設定から、「新人戯曲賞」に置いてはそこの挑戦心はあんまり重要じゃないのかな?と思いました。
個人的には、最後の終わり方にほんのりあたたかさを感じたのですが、そういや終わり方に言及なかったですね。