【読書】伊坂幸太郎「夜の国のクーパー」、中村航「僕の好きな人が、よく眠れますように」

2015-06-28 ブログ再録

ストレス発散に本を大人買いしました。
睡眠時間削って本を読んでいます(笑)


①伊坂幸太郎「夜の国のクーパー」

荒れ地の真ん中で目を覚ますと、目の前には一匹の猫がいた。
名前はトムという、と、トムは当たり前のように人間の言葉を話し始める。
ある国が戦争に負け、鉄国が侵略しにきたこと、そしてその国を救ってくれるかもしれない兵士、クーパーの話を。


なんでこれ買ったんやっけ、と考えたら
「これから電車に乗るというのに、携帯の充電が切れて、リュックの中に本が一冊もなかったから」
とかいう理由でした(笑)
伊坂幸太郎は読書しそうにない子も好きだったりして、個人的には最も読者の多い作家さんの1人という印象。
そして、いわさきはそこまで読んでいないという作家さんです。

目が覚めたら猫が荒れ地話しかけてきた、という1ページ目の文章を読んでから、夢中で読みました。
鉄国というのは「敵国」のことだと思うんですけど、敵国が攻めてきた、優しい王様だった冠人も殺されてしまった、これから敵国の兵士が家に突然やってきて人をさらっていくぞ...
そんな不安にかられながら、国民たちは右往左往します。

そして、それをじっと見ているのは猫たち。
「人間たちってふしぎだね」みたいな顔をしながら、様子を見守ります。
人間以外のいきものの視点から人間を描くのが、伊坂さんはとても上手だなと思います。
「死神の精度」もこういうふうに、死神から観た人間の摩訶不思議な様子を皮肉って書いていて、
でも全然嫌な感じがしないのが不思議。

主人公は猫から伝えきく話をただ聴いているだけなんですけど、主人公は主人公で妻と離婚の危機だったりして。
国同士の戦争、命のやりとりと、ある夫婦の離婚の危機が対比的にかかれていて、
どちらも当事者にとったら一大事なんよなぁ...

それと同時に進んでいく「クーパーの兵士」の話もすごく素敵でした。
全体的にファンタジーなんですけど、最後に主人公とそのファンタジーあふれる猫の国、クーパーの兵士が一同に会した時は、すごく不思議な気持ちになりました。
ここは夢なのか現実なのか、どこ??という感じで。

ぜひぜひ、読んでみてください。
今は伊坂幸太郎のPKを読んでいるところです。


②中村航「僕の好きな人が、よく眠れますように」

完全に表紙買い。この表紙すごい綺麗〜
中村さんは「どこかで見たことあるな〜」ってくらいで購入したんですけど、そういや最近デビクロくんを読んだんでした。
そやそや。


大学の研究室にやってきた、斉藤恵、通称めぐにあっという間に恋に落ちた理系大学院生。
でも彼女とは絶対に付き合えないことをすぐに知る。
それでも、2人は転がるように恋に落ちていく。


先ほどの夜の国のクーパーだったり、刑事小説だったり、ライトノベルだったり、
基本的には起承転結があり、何か事件が起きて解決し、その中で人が成長していく、という本をよく読むのですが
(ってかそういう話が圧倒的に多いし、ドラマ化されているのもこういう類な気がする)
一番好きなのは、こういう、どこにでもいるような人の、どこにでもあるような日常を切り取って
そんななんてことない思い出をキラキラ輝かせて描いている作品がとても好きなんです。

まぁ「ゲロ甘恋愛小説」とかレビューに書いてしまう人の気持ちはわかるし、
「オチがイマイチ」という人の気持ちもわかります。
でも、一つ一つのエピソードだったり、2人の会話だったり、歌うように恋をしている2人の様子がとても可愛くて素敵で、ほわほわとした気持ちになりました。
うん、歌うようにっていうのはしっくりきます。
歌うように、流れるように、なんてことない日々を楽しんでいる感じ。


ただ、「僕の好きな人が、よく眠れますように」という言葉がとても綺麗で手にとったので、もっと効果的な使い方をしてほしかったかなぁ。でも、十分でした。

好きで好きでたまらなくて、2人で「いつから好きなんだと思う?」「前世かな」「来世もね」なんて話すシーンが大好きです。
少しでも離れてしまうとダメになっていく2人の様子は、まぁ、恋愛ごときで鬱モードに入るのはいいけど人に迷惑かけんなよ、という感じではありましたけどね( ̄ー ̄)


映画の「ハルフウェイ」に似ているのかな。
もうある程度未来が見えてしまっている2人ですからね。
最後は大晦日の紅白歌合戦に自分の背中を押させようとしているあたりが、可愛いなぁなんて。

べた褒めしてますけど、心のサプリメントって感じで、「名作!」と思っているわけではないです。
ただ、中途半端に起承転結や話の展開を作ろうとしていたデビクロくんより、
一つ一つのシーンが丁寧に書かれているような気がして好きでした。