【観劇】文豪ストレイドックス 黒の時代編

2018-10-23 ブログ再録

▪️文豪ストレイドックス 黒の時代編 @サンシャインシアター

原作「文豪ストレイドックス」のファンで、アニメも全て見ています。
この舞台化については、初回は見ておらずですが、大好きな「黒の時代編」、どうしても見たい!!ということで行ってまいりました。

文豪をモチーフとした今作は、横浜を舞台とした異能バトルものです。
異能力を持った「異能探偵社」の登場人物たちが横浜で起きた様々な事件を解決するのが大筋ですが、
今回の「黒の時代編」は本編の過去ストーリー。
主人公の中島敦は出てこず、2番手の太宰治の過去の物語で、所属団体も横浜で暗躍するマフィア「ポートマフィア」が中心です。

主人公は、「人を殺さないマフィア」である織田作之助。
ポートマフィアで情報員を勤めていた坂口安吾と、現在は異能探偵社に所属している、元ポートマフィアの幹部である太宰治。
立場も役職も違うが、たまにバーで酒を酌み交わす仲であるこの3名に起きる物語です。

原作は漫画ですが、この物語は小説版でしか出ていないので、サイドストーリーといった形でしょうか。
アニメで黒の時代編が始まったときは「なんだこのオシャレな物語は!」と大興奮して
いまだに繰り返し見てます。
アニメの演出がいいんですよ〜〜


以下、あらすじです。(HPより転載)

常人ならざる「異能」の力を持ち
ヨコハマの裏社会に巣食う悪虐の徒、
その名は「ポートマフィア」。

最年少幹部・太宰治、
下級構成員・織田作之助、
秘密情報員・坂口安吾。

階級を重んじる組織にありながら
立場を越えて交わる3人は、
仄暗いバーのカウンターに肩を並べ
今夜もグラスを傾ける。

あの日、ひとりが消息を絶つまでは……。

男は何を求めてマフィアとなり、
何を失い訣別したのか?

胸襟を開かぬ彼らに代わり
一葉の写真が物語る。
黒の時代、闇の中に光る“何か”を。

これは、まだ太宰治が「武装探偵社」に
入社する前の話である——。


さて、中屋敷さんが脚本・演出ということで、なかなかしっかりとしたストレートプレイ。
八百屋舞台にアンサンブルの人が動き回り状況をイメージさせる、かなり演劇的な作品でした。
照明と音楽は派手目でしたけど、戦闘シーンも多かったので違和感なく、やはり全体的にハードボイルドな雰囲気の作風でした。

あんまり派手にもできないんで中盤の会話劇シーンはちょっとしんどかったんですが
さすがに最後、織田作之助が戦いに向かうあたりからは、周辺もすすり泣きが嗚咽に変わるくらい泣いていまして
私も胸をぐっと掴まれるシーンばかり。

織田作之助役の谷口さん、大人の色気がムンムン!
ゴーゴーファイブのブルー!笑
太宰治役の多和田さんは、まだ若いのに織田作の色気にもまけず、しっかり友人をやっていました。
坂口安吾役の荒木さんは、さすがのスタイルと細かな演技。
でも今回の話だけだと、坂口安吾の闇まで全部描ききれないかなぁ〜

多和田さん、スタイルの良さと顔の小ささが太宰治として百点満点すぎて、うっかりポストカードとか買いそうになったんですけど
最後のコート姿が本当に素敵でした。


ストーリーとしては、原作・アニメを見ていないと、ちょっと敵団体「ミミック」について理解が深くならないのでは?というところが気になりました。
原作知ってるからかなぁ...
戦いの中でしか生きることを知らない捕虜たちが、戦いを求めて日本にやってくるのですが
なぜ織田作とそこまで戦いたいのか、殺されるときに「これで救われる」というのか、
アニメだと幻想的なところが、舞台だと少し即物的になってしまった気がします。
アニメ見てたときより、舞台の方が「こいつら相当自分勝手じゃね?」という感想が強く...
いや、落ち着いて考えたらかなり自分勝手なのは間違いないんですけど。

敵組織の今回の暴動についても、実はポートマフィアが仕組んだことだったりして
安吾はそこに絡んでいるわけですが、ここらへんも事前知識が必要だったかもしれないですね。


だっておじさんたち、寡黙すぎて言葉足らずなんですもん。
ハードボイルドなのはいいけど、言葉にしないかっこよさ、で突き通せるほど、
文豪異能力バトルアニメは設定が優しくない!笑
異能特務課の存在がなかなか見えにくいですよね〜
おじさんたちのキャラクターとしては満点だったんですけどね。


アニメを見ていた感想としては、舞台の太宰治のほうが織田作のことが好きなのではと。
多和田くんの可愛さと若さのせいなのか、織田作を慕い、懐いている感が強くみえました。
また、織田作が「太宰は泣いているただの子供だ」という言葉も、友人というより保護者というか、大切に思っている人の言葉で...
太宰がただの子供、という表現、すごいしっくりきたなぁ。
最後のシーンも、アニメでは切ないだけのセリフが、舞台だと悲しさとか寂しさとか、もっと感情的な要素が詰まっているように思えて、沁みました。しみしみ。

アニメだと、この一件を受けて太宰がポートマフィアを抜け、探偵社に入るというところがあんまり掴みきれず、
飄々とした太宰のことだからきっと考えがあるんだろうな、くらいに感じていたのですが
舞台を見ると「いや、これはポートマフィア抜けるわ。探偵社に入って人を救うわ。」と納得。
太宰にとって、織田作がどれほど大事な友人で、織田作が太宰のことを理解してくれていたことが本当に嬉しくて、嬉しいからこそ寂しいんだなというのが伝わって来ました。


原作が文豪をモチーフにしているので、端々に出てくる日本語のパワーが本当に強い。
そして、多少文脈的に唐突でも、その日本語のパワーだけで押し切られてしまう、少し抽象的な心情描写が
舞台になることで立体的になった気がして、より文ストの世界を理解することができた気がします。
過去も寂しさも全部背負って、太宰は人を救う側につく、その流れが伝わってくる舞台でした。


アニメといえば、2.5次元舞台は基本的に原作を元にして作られることが多いので
今回は「舞台の原作がアニメ『文豪ストレイドックス』」という表記だったのが驚きでした。
劇中歌やOP曲も使ってました。
あのOP曲の使い方はずるいなぁ...
あれは泣くわ...

情報量が多くてなかなか大変だなーとは思ってましたけど、原作好きとしても、舞台好きとしても大満足でした。
うーん、今回は物語重視の作品でしたけど、
探偵社たちが入ってドタバタコメディ&戦闘シーン重視の舞台をやるとすると、ちょっと技量が大変かもしれないなぁ。
次を観に行くかどうするか...は悩みます。
2.5次元舞台の完成度って、何で測るのか難しいなと思う日々です。