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【一人暮らしの徒然】朝から一品作ったよ

 作り置きのおかずが減ってきた。今朝はひじきを煮よう。そう決めて、結衣子は起きてから顔も洗う前に乾燥ひじきの封を切ってボウルにあけて、そこになみなみ水を汲んだ。
 ひじきが膨らむまでの時間、中学英語のテキストを解いて過ごす。どうもこの頃がつがつ勉強ができないなあ、と結衣子は首を回した。最低限のことだけやると集中が切れてしまう。でも、全くやらないよりはマシなのだと甘めの及第点をつけてノートを閉じた。
 ひじきの準備は整った。にんじん、れんこんを冷蔵庫から出してきて、皮を剥いて一口サイズに切る。計量カップに調味料を入れて煮汁を作っておく。フライパンをごま油で温めて、まず鶏ひきを炒めた。小さめの固まりができるくらいの加減で木べらでほぐしておく。その方が美味しい。にんじんとれんこんとひじきも投入し、油が回った頃に煮汁を投入。水分が減ってちりちりと音がするまで煮る。
 その間に、丸二日部屋干ししていた洗濯物を畳んだ。土日に出た洗濯物が乾くのに今日までかかったのだなあ、と冬物の乾きにくさを実感する。水曜(今日だ)も洗濯の日だけれど、平日は主に職場の制服、夜はパジャマを着て過ごすので、洗うのは下着類くらいだ。帰ってきたら忘れずに洗濯、と脳内にリマインドして、ハンガーをまとめて洗濯ピンチや物干しを畳んだ。
 台所に戻ってきて、調理で出た洗い物を洗ってしまった頃にひじきが煮上がる。味見。よし。まずお弁当用に一週間分ほど小分けして、あとはまとめてタッパーに入れた。蓋をせずに粗熱を取る間に、ゆうべの残り物を温めて朝食を取る。
 朝ごはんを食べながら、今日の夜は何を作ろうかな、と思いはせる。冷蔵庫の在庫を思い返して、あれをこうしてこれをああして。じゃあ、今日は買い出ししなくていいか。
 食べ終わって、水筒に入れるお茶のためのお湯を沸かす間に食器を洗う。今日のお弁当と水筒の用意を整えた頃、ひじきはすっかり粗熱が取れた。タッパーにきちんと蓋をして、ほんのりとあたたかいそれを手で包む。よしよし、これでしばらくのおかずができた。ストックができると少しほっとする。朝から一品作った自分がちょっとだけ誇らしくもある。実家暮らしの頃は考えられない。
 実家では、母は毎朝台所に立って、何品も作っていたな。できたてのあたたかい料理は、まさしく家族の体を作る滋養だった。そしていま私は、自分のために自分で料理をする。作る量といい頻度といい、積み上げた年数は母に遠く及ばないけれど、確かに同じことをしているのだ。

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