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天狗の台所

「あのね、うちは天狗の末裔なの」

リビングのソファーでスマホをいじっていた私は
その一言で一瞬にして注意をテレビに持っていかれた。

ん?どういうこと???

母が録画して見ていたそのドラマは「天狗の台所」というものらしかった。
「天狗の末裔」というパワーワードが気になりすぎてしまった。
天狗なんて聞いもんだから、てっきりミステリーかファンタジーのような物語が始まるのかと想像したが、全く違っていた。

NYで暮らす少年・オンはある日自分が天狗の末裔だと知らされる。
天狗の末裔は14歳の1年間、日本のある集落で隠遁生活を送るしきたりがあるという。
オンも14歳になるため隠遁生活をしなければならないという。
そして、そこで暮らす一度も会ったことのなかった兄・基(もとい)との慣れない田舎暮らしが始まる。

1話はそんな突拍子もない導入から始まるが、
そのあとは、ご近所さんにもらった梅で梅シロップを作り、ソーダ割りにして飲む。
次の日はハーブを使って料理。自宅で採れたバジルで作ったジェノベーゼを水餃子に掛けて食べ、レモンバームのハーブティーを飲む。

こうして1話は終わる。

どうやらミステリーでもファンタジーでもないらしい。
食と暮しをテーマに主人公・オンの1年間の成長を描くヒューマンドラマ。

そこから私はこのドラマが毎週の楽しみとなった。

夏の日差しや蝉の鳴き声
風にそよぐ稲の音や虫の音
皮を流れる水の音
映像の中から自然の匂いがしてきた。
日々の喧騒を忘れるようだった。

基の作る真似できそうで出来なさそうな絶品の手料理を見ればよだれが出るし、
それを幸せそうに食べるオンの表情に心が満たされた。

そして不器用な兄弟が食を通して少しずつ心を通わせてく様子、
14歳という岐路に立つオンの成長に
目が離せなくなった。

後になって知ったが、このドラマは漫画が原作となっているらしい。
ぜひ漫画も読んでみたい。

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