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個人投資家・覆面座談会―IRnoteマガジン参加社から読み解いた3つのポイント

「IR情報開示」は企業が投資家に対して必要な情報を公開することですが、「IR情報発信」はさらに一歩踏み込んで、企業の魅力や将来性を伝え、投資家とのよりよい関係を築く活動ではないでしょうか。この機会に新たな視点で投資家と事業会社のより良い関係構築に役立てればと思い、個人投資家・覆面座談会を企画しました。

このnoteは、主に「IR noteマガジン参加企業の方々」と「これからIR noteマガジンを始めようと考えている企業の方」に向けて書いたものですが、IR業界に携わる全ての方々にとって有益な内容となってます。

はじめての試みなので、至らぬ点もあると思いますが、「よりよいIRの世界」を目指す想いから生まれた企画なので、温かい目で読んで頂けたら幸いです。皆さまと知見を共有できたら嬉しいです。5,000字超ですが最後までお付き合い頂ければ幸いです。


1:個人投資家・覆面座談会について

きっかけは、2月末に「情報開示と情報発信はちがう」noteを書いたことから始まりました。そもそも我々、株式会社 Figuroutは、企業価値に関わるデータを可視化するIRをDXするSaas「Hooolders Analytics」で、IR noteマガジンを応援しています。

「IR noteをやってる会社と、やってない会社」には差がありました。やってる会社の方が株価が高くなっていました。しかもその差が大きくなってます。※アウトパフォーム+4.9%から ⇒ +11.4%とさらに乖離は拡大

https://note.com/kntn123/n/nf45cc84a004f

そこで以前より気になっていたのは以下の2点でした。

①:個人投資家にとって、企業価値を理解し賢明な投資判断をするために、どのような「視点」でIR noteマガジン参加社のコンテンツを読んでいるのか?

②:IR開示情報とはちがう、IR情報発信に個人投資家が期待するコンテンツとは何か?

そこで、4大投資勉強会の一つである株式会社リンクスリサーチ(東京勉強会)小野社長と、参加されている個人投資家の皆さまにご協力いただき、株式会社Figurout 主催による覆面座談会を4月中旬に開催しました。


2:個人投資家からみた「noteIRマガジン各社の現状と課題」

そもそもですが、上場企業約4,000社は、IR活動の量と質に大きな差があります。CFOやIR担当者による熱心な情報発信が投資家の信頼を勝ち取り、企業価値の向上に寄与している一方で、IR開示情報の不透明性や、IR情報発信不足が課題となっている企業も少なくありません。

IRの近世史を振り返れば、20年前は機関投資家がメインであり、個人投資家への情報は、日経や専門誌に限られていて、わずかなものだったようです。現代からは信じられませんね。SNSの発展とともにIRにも変化があった事が伺えます。

様々な視点でのディスカッションが交わされましたが、まず掴みで要約すると以下の3つのポイントがあげられます。

1:IR noteマガジン参加社は増えてきており、新しい情報源となっている

2:投資家目線に立った(開示情報とはちがう)情報発信が求めれている

3:そもそも上場企業・経営者の「企業価値や株式市場を意識した経営」が「IR活動」以前に大事である


3:個人投資家からみた「効果的なIR活動とIR noteのあり方3つのポイント」

個人投資家は、機関投資家とは異なる視点で、限られた時間の中で得られる情報の内容に敏感です。SNS等の拡大による情報量が増大したことがその背景にあります。

ディスカッションを通じて分かったのは、それぞれの個人投資家のニーズを理解し、それぞれに応える情報発信が求められていることです。その理由として考えられるのは「色々なネットサービス利用の高まりとSNSの普及に伴う活用方法の内容が高まっている」ことが考えられます。

そこでは、JTCと呼ばれる古典的な日本企業にありがちなタテ社会の思考様式ではなく、オープンでフラットな企業風土が、投資家との信頼関係構築に不可欠であることが感じ取れました。

個人投資家の視点「IR noteのあり方」3つのポイント

1:業績の良し悪しに関わらず、IR活動のスタンスにブレがない事
※業績が良いときも悪い時も状況を受け止め、真正面から向き合う姿勢が感じられるコミュニケーションの方が良いのではないか

2:開示情報と情報発信は相互補完の関係にある
※事業環境の背景や経緯など、IR開示情報には書ききれない情報が、IR情報発信に入っているのが重要

3:情報発信としてのSNS利活用力
※IR noteとSNS等、各種プラットフォームを上手に使いこなしている

Figurout・四ッ谷サテライトオフィスにて


4:個人投資家と選んだ「推しIR note」5社

甲乙つけがたい各IR noteサイトだったのですが、あえて「推しIR noteサイト」を皆さんと一緒にディスカッションしながらピックアップしました。お話していくなかから、色々な視点や意見から、推しの5社を選出させて頂いたのですが、この推しとは「イイ!」と同時に「知り合いにも教えてあげたい」という意味が含まれています。決して安易にランキングしたいわけではないので、その点をご理解いただければ幸いです。

※4月中旬までのIRnoteマガジン参加社からの選出です。note株式会社のIR noteサイトは、notePROを販売する当該プラットフォーマーなので対象外としました。
※選出過程のディスカッションで得られた貴重な情報は、noteでは書ききれませんので、後日開催予定のイベントを楽しみにお待ち下さい。

◆推しIR note賞①:スパイダープラス

CFOの永山さんの情報発信蓄積力と共に、様々なプラットフォームやnoteも上手に使いこなしている情報発信力に注目が集まりました。IRの基本である「対話」にチカラを入れられている行動力がその背景と言えそうです。しかし属人性が高いので、もし永山さん居なくなったらどうするんだ?という意見もあったのですが、それだけ詳しく情報発信しているから「誰でも書ける情報なら意味がない。だから凄い。」という「推し」の意見が集まりました。


◆推しIR note賞②:アピリッツ

CFOの永山さんの情報発信蓄積力と共に、様々なプラットフォームやnoteも上手に使いこなしている情報発信力に注目が集まりました。IRの基本である「対話」にチカラを入れられている行動力がその背景と言えそうです。しかし属人性が高いので、もし永山さん居なくなったらどうするんだ?という意見もあったのですが、それだけ詳しく情報発信しているから「誰でも書ける情報なら意味がない。だから凄い。」という「推し」の意見が集まりました。



◆推しIR note賞③:ユナイテッドアローズ

紙の時代から考えるとコスト比はnoteが圧倒的にコスパが良いという特性を具体的な情報発信に生かされています。そもそも統合報告書の解説をしている企業がほとんど無いなかで、「時短」を意識し「小分けに読みやすくしたコンテンツ」にしている点など、他社にはない工夫に「推し」が集まりました。



◆推しIR note 特別賞:セレス

IR情報発信のバランスが良い。IR担当者の顔は見えないものの、決算説明の要点ポイントがわかりやすく説明されており、具体的な例として、湘南投資勉強会youtube「投資家向けオンライン会社説明会」での質疑応答の書き起こしされているなど、単なる書き起こしを転記しているのとは違う、わかりやすいnoteコンテンツ作りへの姿勢に、個人投資家の求める情報発信があると「推し」が集まりました。


◆推しIR note SNSネイティブ賞:タスキ

他のIR noteとは異なるコンテンツ編集をしているサイトです。IR担当者の高柴さんの個性と、SNS利活用力が突出している点に「推し」が集まりました。具体的な例をあげると、noteコンテンツの最後に「頂戴したご意見・ご質問は社長・部長とともに拝見しております。今後とも応援いただけますと幸いです」と細かく配慮が行き届いている点です。IRの基本である投資家との「対話」に繋がる部分は重要です。また、noteだけではなくSNS全般への理解度・活用力・情報発信力・蓄積力に「推し」が集まりました。


まとめ:「推し IR note」が優れている4つのポイント

まとめ:「推し IR note」が優れている4つのポイント

1:IR開示情報の背景や理由が、IR情報発信から理解できる。
※noteならではの使い方が大事。

2:IR情報発信者の顔が見える。
※名前・役職があると誰が情報発信しているかわかる。

3:SNSの情報発信の使い方を良く理解している。
※「情報発信」と「対話」の蓄積(積み重ね)が重要である。

4:本数を多く書いても内容が薄かったり的を得てなければ意味がない。
※読み手である、ターゲットの投資家の視点を理解していることが重要。

※選出過程のディスカッションで得られた貴重な情報は、noteでは書ききれませんので、後日開催予定のイベントを楽しみにお待ち下さい。


5:その情報は誰のため?

各IR noteサイトは甲乙つけがたく、スペースの関係でピックアップされなかったIR noteサイトが多くありました。しかし、まだこれからの発展途上のIR noteサイトが多数あったのも事実です。後日開催予定のイベントを楽しみにお待ち頂ければと思うのですが、簡単なフィードバックを以下の3つのポイントにまとめておきます。

フィードバック1:そもそも「編集」の概念が無い
※情報が整理されてないなど、読み手を意識したコンテンツになっておらず、誰に何を伝えたいのか不鮮明である。

フィードバック2:業務で致し方なく最小エネルギーでやっている
※読み手の解像度が低い。情報発信の量(蓄積)が少ない。

フィードバック3:そもそもnoteなどSNS情報発信に不慣れ
※読む(情報消費)と、書く(情報発信)では必要スキルがちがう。


・他社の優れた事例から学ぶことの重要性

やはりコンテンツ担当者の「スキ!」や「努力」の姿勢がコンテンツに透けて読み解けるのがnoteの特徴と言えるかもしれません。現在約80社参加しているIR noteマガジンですが、ますます増加が予想されます。今回はその全てのnoteサイトを拝読させて頂きました。
株式会社リンクスリサーチ(東京勉強会)小野社長と、参加して頂いた個人投資家の皆さまには、開催一ヶ月前から事前情報共有をすすめ、要約情報の共有などの工夫を重ねて事前準備をさせて頂きました。協力して頂いた方々の熱い気持ちとご協力に感謝してます。
これからも、IR現場の方々のための、良いコンテンツ発信に必要な「ノウハウ」や「現場の生の声」を、わかりやすい事例集としてアウトプットすることで貢献できれば幸いです。

今回を経て事例集の基礎となるデータが蓄積された一部です。


6:イベント開催について

この「IR noteマガジン―個人投資家・覆面座談会」は、Deepグループインタビューと言えるかもしれませんが、個人アンケートでは取れない知見がありました。その反面として、人数が多いので意見の強い人に流される傾向があるのも事実です。モデレーターである私が補正しながらディスカッションを進めさせて頂きました。

また、個人投資家といっても様々なタイプの方がいらっしゃいます。あくまでも今回は一つのケースにすぎません。それから投資家には、機関投資家の方々もいらっしゃいます。その存在は一般には知られることが少ないですし、別の視点が必要ですので、今回で活動を終わらせずに、情報共有が進むよう努力したいと思います。

「マネーゲーム」による資本主義経済という名前の「システムの奴隷」になるのではなく、資本主義経済の当事者意識をもつ者として、資本主義システムを上手に使いこなすことが重要だと感じた日でした。

振り返れば、過去には、損失補填・にぎり・飛ばし・インサイダー情報など、法令違反が日常茶飯事だった時代がありました。株主総会で総会屋が怒号をあげる時代は過去のものと言ってもいいのではないでしょうか。資本主義経済の豊かさは、我々の民度や成熟度で決まるものなのかもしれません。

ですので「株式発行している事業者」「機関投資家」「個人投資家」「金融機関」「IR支援企業」の方々が、フラットでオープンに出会え、満足を持ちかえれる「ミートアップ的なる新しいタイプのイベント」を、6月中旬~下旬を目指して準備中です。ご興味のある方、ご協力頂ける方は、XのDMなどでご連絡ください。皆さんと一緒に盛り上げていければと思います。

※イベント予告情報
株式会社Figuroutの
Xアカウント
フォロー&チェックよろしくおねがいします。