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【現役IR担当役員コラム : IR/SRの現場から】IRミーティングの目的について考える


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本記事は、過去のメルマガに掲載されたSさんのコラムを転載したものです。
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コラム:IRミーティングの目的について考える

こんにちは!Figurout外部アドバイザー(東証プライム企業IR管掌役員)のSです。
前回に引き続き、「IR/SRの現場から」と題して寄稿させていただきます。

先日、私が在籍する会社も決算発表をさせていただき、数多くのセルサイド、バイサイドアナリストとのミーティング。
そして個人投資家からの問い合わせ対応をしてきました。
個々で思ったのは、改めて「IRミーティングの目的」ってなんだろう??
ということ。

コミュニケーションの基本は、相手の目的やほしい情報を的確にとらえ、そしてそれを効率的に伝えることだと思っています。
以前も主張させていただきましたが、「IRの目的」は株価を上げることではなく、株価を適正化することだと私は確信しています。

従って、どんなにIR活動を積極的に行っても、会社業績が芳しくなければ株価は上がりませんし、逆にIR活動に積極的ではなくても、会社業績が法定開示の範囲内でよく見えれば株価は上がります。

したがって、株価適正化がIRの目的であるならば、IR担当者はフェアに市場に対して適時適切に情報を伝えることがミッションとなります。
その情報伝達の場が、IRミーティングということになるのではないでしょうか?

では、自社の情報を適時適切に伝えるとはどういうことか?
それはアナリストと呼ばれる人たちが、発行体とのIRミーティングを通じて何をしているのか?を知ることで解決できると思っています。

アナリストにはいろいろな種類がいますが、基本的な彼らの仕事は、発行体の適正な企業価値を推定することだと思います。
手法はいろいろあるかもしれません。
セグメントごとの業績を推測し、その集合体である企業集団の利益水準をDCF法によって現在価値に割り引く方法。
もしくは、類似会社との比較で、いくつかの指標を発行体にあてはめ、その発行体の適正な価値を推定する方法。

よくIRミーティングで自社の個別性の高い情報を、感覚的な方法で数字の提示もなく延々とお話している社長さんやIR担当者をみます。
ただ、確かに個別性の高い情報からブレイクダウンして将来的な業績予想をつくる方法もあるかもしれませんが、より客観的な確実性の高い業績予測の方法としては、他社のKPIと比較して、自社のどこが優れていて、どこがあと一歩な状況なのか?
要は、客観的に横比較できる、定量的な指標でアナリストとお話することが重要だと思っています。

スモールキャップやミドルキャップの発行体だと、なかなか類似企業が市場に存在しない、個性の強い、ニッチなビジネスをされていることも多く、横比較できる定量的な指標といっても抽出しづらいかもしれません。

ただ、上記の理由から比較可能なKPIを明確化することは重要ですので、少なくとも横比較ができる水準まで自社と同業他社の最小公倍数を見つけ、定量的な自社のマイルストーンを明確化し、現実と理想のギャップについて数字を用いて説明することが重要だと思っています。

私自身が気を付けていることは、アナリストミーティングにおいて、特に顔見知りのアナリストであれば、彼らのバリュエーションのロジック構築のためのモデルを一緒に考えるといった方法で効率的にコミュニケーションをとるようにしています。

例えば、●●セグメントの次の四半期業績予想は、▲▲といったKPIが鈍化していることから、四半期比較で成長が鈍化することが想定される。
または、前年同四半期の■■セグメントの数字と比較して××というKPIは業界平均よりも上回って推移していることから、前年同四半期対比では成長が促進されることが想定される、など。

彼らが欲しい情報を淡々とこちらから提供するように心がければ、逆にアナリストから、業界のトレンド分析を聞くこともできますし、企業の垣根を超えたマクロな市場変化についての情報を得ることができ、情報を伝えることと、受け取ることが双方でき、まさにgive & takeが成立することになり、お互い有意義な時間を過ごすことができます。

セルサイドアナリストは自分の推奨でお客さんであるファンドが株式を売買してくれることで手数料を得ます(買い(ロング)だけでなく売り(ショート)でも手数料を得ます)。
バイサイドのアナリストは、セルサイドアナリストや発行体のIR担当者とのミーティングを通じて売買推奨を自社のファンドマネジャーに伝え、絶対的な収益を上げてもらうことで評価を高めます(同じく、買い(ロング)だけでなく、売り(ショート)も収益機会となります)。

従って、IRを行うことで株価を上げようと考えるIR担当者にとっては、IRミーティングは「お願いですからウチの株、買ってください!」という神頼みの場となりますが、IRは株価を適正化することだと割り切っているIR担当者は、フェアディスクロージャーで自社の情報を定量的に的確に開示することに徹しているわけなので、祈るような前者の立場とは打って変わって、淡々と合理的な説明に終始できるようになると思います。

とまぁ、そうはいっても、株価下がると「IRは何してるんだ!!」と社内から言われて不条理に感じることも多々あるのですが…(笑)
反対に株価上がっても「IRが素晴らしい!」とはなかなか言ってもらえない、理不尽な職種でもあります(笑)

なので淡々と、定量的に自社の情報を的確に伝えることに徹してゆきましょう。


まとめ

いかがでしたか?
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