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【現役IR担当役員コラム : IR/SRの現場から】担当者としてできること



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※SRとは「Shareholder Relations」の略であり、IRが「投資家との関係性」を構築する活動であるのに対して、SRは「株主との関係性」を構築する活動です。

本記事は、過去のメルマガに掲載されたSさんのコラムを転載したものです。
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コラム:IR/SRの現場から

こんにちは!Figurout外部アドバイザー(東証プライム企業IR管掌役員)のSです。 前回に引き続き、「IR/SRの現場から」と題して寄稿させていただきます。

6月総会も終了し、一服つかれているIR/SRのご担当も多いかと思います。 今年も株主総会運営、お疲れさまでした。

今年の株主総会。
以前に増してアクティビストをはじめとする「物言う株主」からの株主提案が話題となったほか、株主総会当日の質問でも「PBR1倍割れ」のキーワードなど、個人株主からの質問も多く、事前の運営準備には相当なご苦労をされたことと思います。
日経新聞によれば、6月総会の株主提案数は330議案を超え、財務関連要求や企業統治関連の提案が多くを占めたようです。また、取締役選任議案においては賛成比率60%台の会社も複数みられ、まさに「波乱」の総会を乗り越えられた上場企業も多く存在しました。

こういった厳しい社会環境において、われわれIR/SR担当者は何ができるか? この点についていつも考えさせられます。

企業規模が大きくなればなるほど、担当者にとって自社内でできることは限定されてくるので、「資本効率を高める必要があるのは理解しているけど、自社の役員陣がそれを理解していない」といった声や、「ガバナンスの強化をはからなければならないけど、会社の組織をガラっと変えなくてはならないような大改革は担当者レベルでは権限がない」といった切実な声を聞くことも多くあります。

私もそんなIR/SR担当者として悩んでいるのは事実ですが、担当者としてできることは何か?を考える中で、少なくとも以下のことは心がけて日々業務に取り組んでいます。

①アクティビスト情報をはじめとする、最新の株式市場環境情報を経営陣にインプットする
②実質株主判明調査を定期的に行うとともに、アクティビストチェックを可能な限り行う
③年度計画や中期経営計画策定のタイミングにおいては、株式市場環境の変化をベースとした施策を計画に織り込むよう働きかける
④IRの観点、SRの観点の双方から日々の株価動向や出来高動向をチェックし、「異変」がないかをチェックする

①については、広範囲の経営情報に触れる必要性がある社長をはじめとする経営陣に、最新の株式市場環境情報を的確に収集し、それを自社の状況に応じた形でコンパクトにまとめ、報告するといった内容です。 一般論については経営陣も新聞などで把握しているものの、いざ自社に置き換えて考えると、「ウチの会社には関係ないと思っていた」などど言われるケースも多いかと思います。 私の会社では、アクティビストの「ツッコミどころ」を自社の財務指標やガバナンス指標から想定し、アクティビストに指摘されそうな箇所についてアラートを立てて経営陣に報告するようにしています(突っ込まれる前に是正の努力をするための情報提供です)。

②については、IR支援会社や信託銀行による実質株主判明調査を報告する際に、アクティビストが利用しそうなカストディアン口座から保有を推測することや、直接保有のアクティビストを発見し、その保有有無を確認するといったチェックを行っています。

③は、経営陣や経営企画といった計画策定の担い手に、昨今の株式市場情報に基づいたポイントをインプットし、それを踏まえた計画づくりを「誘導する」といった内容です。 社内的にハードな政治力が必要とされる業務ですが、経営の「結果」については変えることはできませんが、「計画」段階ではいくらでも変化を求めることは可能なので、私の会社ではIR/SR部署と経営企画が密接に連携し、計画策定において協働できるように日々働きかけています。

最後に④ですが、やはり基本的な株価チェックや出来高チェックから、「異変」を感じることが基本中の基本だと思っています。 特に決算発表直後やメディア露出直後以外での大きな株価や出来高の変動には、自分なりの仮説を構築し、それを検証する作業を行っています。 株式市場は思惑が交錯する場なので、なかなかその仮説検証は難しいということは間違いないのですが、基本的な日々チェックを継続していると、「違和感」を感じ、「異変」に気づくことができると思って日々取り組んでいます。

今のところアクティビストに保有された経験はありませんが、もし自社がアクティビストに保有された場合、自分自身が責任をもってアクティビストと対峙してゆく心構えも大切かと思っています。
アクティビストと対峙したことのあるIR/SR担当者の話を聞くと、アクティビストと呼ばれる投資家は極めて合理的で論理的な方々なようです。
自社が株式市場に上場している意義や、今後の方向性について、客観的な示唆を得たと回顧されていらっしゃる方もいました(対応は相当ハードだったようですが…)。
そう考えると、アクティビストは恐れる者というよりも、常に自社を客観的に把握し、事前に改善を促すための存在といえるかもしれません。
私自身、いつでもそういった事態がやってきても対応できるよう、日々緊張感をもって業務に取り組んでいる次第です。

以上、今回もIR/SRの現場から、ということでややSR的な話が多かったですが、現場の実態を踏まえて投稿させていただきました。
引き続き、現場目線でのコラム寄稿を続けてゆきたいと思っていますので、次回以降もどうぞ、よろしくお願いいたします。


まとめ

いかがでしたか?
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