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甘酸っぱい青春なんか無かったから苦すぎる思い出話をしよう

初めての彼氏は転校生の男の子だった。

私は休み時間中ずっと本を読んでいるような地味で友達の少ない女の子で、傍目からどう見えていたかはわからないけど、和気藹々としているクラスメイトを羨ましく思っていた。

小学校からほとんどメンバーが変わらない田舎の中学校で"転校生"は貴重な娯楽で、みんなが転校生に注目し一挙手一投足を見つめ、品定めしている気がした。 

ノリが合いそうか?自分より格上か?格下か?

彼は人見知りで大人しく、相手の顔色を伺うような視線の動かし方をする子で、すぐに"前の学校で虐められていた"という噂が流れたけど真偽のほどはわからない。

ただ、彼はクラスメイトの多くに格下と判断されたのだと思う。
私はその居心地悪そうな様子を隣の席で毎日見ることになった。 


放っておくと誰にも話しかけずただただ1人で困っているので、教科書もってる?とか次は教室移動だよ、とか様子を見て声をかけるようにしていた。 
情けない奴だな、と感じる気持ちもあったけど、それ以上にカースト下位同士の親近感みたいなものがあった。

そうしてお節介みたいなことを続けているうち、少しずつ話しかけてくれるようになった。私に特別心を開いてくれているようで、可愛く思っていた。

二人で出かけたのは1度きりだ。
彼が飲み干したペットボトルを川に投げ入れたのを見たときに、あっさりと冷めた。


結局のところ、自分を必要としてくれるから好きだっただけで、相手のことなんて全く見ていなかった。

初めて見たときから、この子に優しくしたら好いてもらえるとわかっていてそうしたのだ。

相手の弱さにつけ込んで自分を満たしていた。
私の方がよっぽど、惨めで情けない人間だった。


お別れのメールを送って2つ折りのケータイを閉じ、うつ伏せに寝転がって、少し泣いた。

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