非日常がつくった日常

小さいころから密かにアニメが好きだった。それも女の子たちが一度しかない時間をかけがえのない仲間たちと過ごしているような。そこが共通だったらジャンルにこだわりはなかった。敵を命がけで倒すもよし、学校を廃校にさせまいと必死に努力するでもよし。彼女たちの透き通った美しい姿は、番組が終わって画面から消えたあとも私の心の中からは消えることはなかった。

理想の対義語は現実である。現実において、思うように事が運ぶことは少ない。まして、他人が関わるとその未来はもっと予想できないものになる。そんな不確定要素満載のワールドで穴に落ちてしまった。彼女たちは這い上がってきたけれど、現実には規制線なんてないだだっ広い暗闇が広がっているだけだ。歩いても歩いても出口が見つからない。そんな日々を繰り返した結果絶望が心を占めるようになっていた。

ある日のこと。今日はかねてより目をつけていたアニメの初回放送日だった。とある事件で記憶を失い人を信用できなくなった少女が周囲と関わっていくうちに回復していくというストーリーだった。最近は需要と供給のバランスからかどうしてもマンネリ感のある青春アニメは数が減っていた。ゆえにこういったアニメは最近ではまれであった。

それは第一話の終わりかけだった。素直に好意を受け取ることのできない少女は未熟な自分に対しての戸惑いと同時にそんな自分は消えてしまったほうがいいのではないかと考えていた。そんなときそれに気付いた人から少女にこんな言葉が向けられた。

「昨日より今日、今日より明日、というように少しずつよくしていけばいいよ。」

少女が泣き出した。そして、胸にストンとおさまるように入ったその言葉を味わううち、CMに入ったテレビ画面が見えないくらい視界が霞んでいた。いつの間にか出口にたどり着きたいという気持ちだけになっていた。道筋を考えることができなくなっていた。ただの暗闇に見えるその場所には様々な道具が捨てられていた。しかし、それには目もくれず差し込んでいる光だけを求めていた。天井を調べることなんて考えることもなかった。

私を照らした行灯は私を再び地上へと戻してくれた。なかなか天井が壊れることはなかったし色んな道具を使ったけれども最後は這い上がることができた。そうして見た久しぶりの青空は眩しすぎたけれどもとても幸せだった。



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