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開幕~交流戦前レビュー【F】

 開幕から早2か月、ファイターズは貯金7、勝率.581の2位。
 貯金を持って交流戦に突入するのは2019年(貯金3、勝率.529)以来、2016年以降の9年間で交流戦前の勝率が最も高い。
 そんなファイターズのここまでの強みと弱み、そして交流戦以降の展望を見ていこう。

1 チーム成績

 大まかに振り返ると、3,4月は投手力で、5月は打力で着実に貯金を増やしてきたといったところ。
 チームの打撃成績のうち、K%、BB%、Chase%の3つの指標がリーグ最下位なのはチームとしての若さを感じるが、総合的な得点能力を示すwOBAではホークスに次ぐリーグ2位の.296を記録しており、確かに実力をつけてきている。
 投手陣は、伊藤、北山が5月に入り調子を落としたことで、少々苦しい状況。

2 野手成績

(試合数×2.1)打席以上の打者 打撃成績(5/27終了時)

 マルティネス、田宮、万波の3選手がコア。現在は2番から6番まで、松本剛、郡司、マルティネス、田宮、万波の並びが多いが、コア3選手は固めて上位で起用し、打席を多く回したい。
 ただし、田宮は守備の負担が大きい捕手である上に一軍でレギュラーとして出続けるのが1年目であることから、打線の組み方や出場頻度を慎重に見極めて起用したい。

 さて、上で書いた4選手に加えて、水野も長所を活かす打撃を見せており、松本剛が調子を上げることで打線の厚みが一気に増すことは明らかだろう。本来であれば、田宮が果たしている役割は松本剛に期待していたはずだ。

 空振りがリーグで最も少なく、三振も非常に少ない松本剛だが、成績はリーグ平均をやや下回っている。
 一見いい当たりが外野手の正面を突き不運な印象を受ける松本剛だが、そういった打球は、左中間寄りのレフト、右中間寄りのセンター、ライト前方へのものが多く、一昨年から蓄積したデータに基づくシフティングによりヒットゾーンをカバーされているのかもしれない。昨季から苦悩が続いているが、なんとかコアに戻ってきてほしい。

(試合数×1.1)打席以上の打者 打撃成績(5/27終了時)

 熾烈だったセカンド争いは上川畑と石井の2選手の争いに収束しつつある。同じ左打者だが、三振が少なく出塁率の高い上川畑とハードヒットの多い石井で特徴は異なる。もちろんこのままの成績を維持するとは限らないが、石井にもう少し打席を与えてもよかったような気もする。

 レイエスや野村、清宮がなかなか結果を残せなかったがゆえに、一般的に打力のある選手を置くことができるDHとLFの打撃成績が芳しくない。
 なお、新外国人のうちレイエスとスティーブンソンのどちらに打席を与えるべきかは、
①DHに空きがあること
②スティーブンソンは結局レフトしか守れないこと
③スティーブンソンの方がレイエスよりも三振が多いにもかかわらず、スティーブンソンは四球や長打による付加価値がほとんど期待できないこと
の3点から明らかだろう。

 交流戦のうちビジター9試合でDHなしで戦うことは、C、2B、3B、SS、CFといった守備力が求められるポジションに打力が壊滅的なポジションがなく、反対にDHを活かしきれていないファイターズにとって追い風といえるだろう。

【用語説明】

3 投手成績

(試合数×1.25)対戦打者以上の投手 投球成績(5/27終了時)

 現状投球回数がワンツーの山﨑福也、加藤貴が四球数を抑え打者を打ち取っていくスタイルな上に、投球回数3位の伊藤も好調な3,4月から一転5月に入り奪三振、ひいては空振りが減少しているゆえに、投手陣全体として守備力や運に依存する要素が強くなっている。

 伊藤は昨季まで主に左打者に対するマネーピッチとして機能していたスプリットで空振りが取れていない。
 北山や伊藤が本来の姿を取り戻し、K%の高い支配的な先発投手が1人、2人と出てくることに期待したい。
 ここまで圧倒的なスタッツを残している河野と田中正義に僅差のゲームの負担が集中しているのが懸念される。特に田中正義は昨年夏場以降ストレートの出力が落ち、打たれるシーンも散見されたため、何とかここの負担を分散したい。
 マーフィーをこのまま中途半端なリリーバーで終わらせるのはあまりにももったいない。上原やバーヘイゲンの調子が上がらず、福島や柳川は隔週でしか登板できない現状では、先発に戻すというのも一つの選択肢になるだろう。

 昇格後目覚ましい活躍を見せる矢澤も、ポテンシャルの高い選手であり便利屋のように扱うのは望ましくないため、リリーフで起用するのであれば金村のように勝ちパターンに固定したいところ。
 開幕から一軍に帯同している杉浦は現状安定した成績を残しているため、もう少し序列を上げて、河野や田中正義の連投が増えてきた際には思い切って僅差リードの8,9回に登板させるのもアリだろう。

4 今後の展望

 交流戦以降は、6連戦が多く、先発投手陣を6人以上そろえる必要がある。
 現状安定して回ってくれそうなのは、山﨑福也、加藤貴、金村、伊藤の4選手であり、福島、柳川(畔柳や細野なども含めて)ら若手の投手が1枠を埋めていくとしても、もう一人は中6日で回れる投手がどうしてもほしい。
 パフォーマンスの天井の高さでいえば北山だが、中6日で回るとどうしてもパフォーマンスが落ちてくる様子であり、使い方が難しい。上原やバーヘイゲン、田中瑛など正念場を迎える選手たちの奮起に期待したい。いずれにせよ、5番手、6番手の先発投手をどうやりくりしていくのかは注目すべき点の一つだろう。
 野手では、松本剛に注目したい。
 松本剛は既に述べた通りだが、野球というスポーツにおいて単打を量産することに特化してバリューを出すことがいかに難しいかを感じさせられる。ひっくり返せば、特に昨今の打低に更に拍車のかかる今季のパリーグで、3割以上の打率を残し、三振の少ない打者は稀有である。一昨年の水準とまではいかずとも松本剛にしかできないことを見せてほしい。

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