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戦力分析と来季に向けて 右翼手編【F】

 2020年シーズンポジション別レビュー企画、今回はライト編。

1. 総評

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 ライトは大田泰示が不動のレギュラー。特筆すべきは守備力の高さ。今季は前半戦不振に喘いだが、それでも守備で大きな貢献を続け、中盤以降は打撃面とともに十分な活躍を見せた。

2. 変化を続けた大田泰示

 まず、こちらの表をご覧いただきたい。

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 大田の打撃の調子の推移を得点能力ベースで可視化したものだ。6,7月は不調を極めマイナスを垂れ流したものの、8月・9月に一気に調子を上げ、打率も3割に到達。しかし、10月に入ると再度不調に陥り、成績を落としてシーズンを終えた。このように大田の最大の課題は調子の波の大きさだろう。

 一括りに7月までと10月以降が不調、8月と9月が好調と言っても、それぞれ内容が異なるのも興味深い。

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 初球からどんどんスイングをかけるイメージの強い大田だが、8月まではややその積極性を抑えていた。その結果開幕から7月までは、なかなか自分のリズムを掴めず追い込まれてから当てに行きゴロアウトが多くなっていた。
 しかし、8月に入り0ストライクや1ストライクから狙った球を捉える割合が高まったことで、一気に成績が向上。8月が最も思考とパフォーマンスが一致した月だったと言えるだろう。
 9月に入ると、高打率を維持したものの、21試合連続安打中の30安打のうち長打は6本、本塁打は1本のみとやや長打力に陰りが見えた。データを見てみると、Swing%が他の月に比べて圧倒的に高く、それまでとは異なり、とにかく打てる球には手を出していくようなスタイルに変わった結果、狙い球を絞り強振して仕留めるような形にはならなかったようだ。
 このスタイルを10月以降も継続していたが、10月以降は、空振りが増加し、捉える割合も低下。コロナ禍での過密日程でレギュラーとして出続けていたことによる疲労が見えていたように思える。 

 理想的だったのは8月なのは言うまでもないだろう。この8月の状態で臨める試合数をできるだけ増やすことが、調子の波を小さくすることに繋がるだろう。この状態を維持するためには、1ストライクまでの狙い球を確実に仕留めることが重要だ。特に大田のように2ストライクで大きく数字が落ちる選手はなおさらだろう。

3. 大田への期待

 今季は最終的には打率.275、本塁打数も二桁に到達しノルマには到達したのかもしれない。

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 怪我もなく、全試合に近い試合に出られる中で4年間このように安定した成績を残せることは非常に価値があると言えるだろう。しかしながら、OPSで言うと移籍後最も低い初年度の.719とほぼ変わらない.721。長打率に関しては.407で移籍後ワーストとなっている。大田は勝負が早く四球を多く稼げるタイプではない。そんな大田に求められるのはやはり長打の魅力だろう。今季の9月に21試合連続安打を記録したが、その結果長打を打つ形を崩してしまっていた。本人も中田から四番を奪いたいと宣言するほど長打へのこだわりを持っているはずだ。
 初めから内野の間や内外野の間を狙うのではなく、追い込まれるまでは狙い球を絞り強振をし、追い込まれてから、今季の9月のような柔軟な対応を見せられれば最も理想的な形となるだろう。

4. 来季に向けて

 来季も大田はライトを務めるかはともかくチームの中心として全試合に近い試合数に出場することにはなるだろう。西川の去就の影響を受けるポジションの一つだ。大田の打順についても、昨季まで定位置だった2番から今季移動した6番などどこに配置されるのかは興味があるところだ。西川が退団することになれば、6番と同様にケースバッティングに縛られず、積極的なスタイルで切り込むスプリンガー(前HOU)のようなイメージの1番もあり得るだろう。タイプ的に被る新外国人選手のR・ロドリゲスの打順に、大田の打順も影響を受けるかもしれない。来季は、チームにおいて中田に次ぐポイントゲッターとしての存在感を一層強めるシーズンにしてほしい。

トップ写真 大田泰示(北海道日本ハム)©日刊スポーツ新聞社

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